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【撫でたいと撫でられたい】

定時で帰るつもりがまた遅くなって。
最寄り駅についたときにはどしゃ降りの強風。ああ・・・。
バスもすでに長い列で乗れそうにない。家まで歩きだと30分。折り畳み、持つかなあ。
でも彼が待ってる家に早く帰りいし。

・・・よし。もー傘は仕方ないや。
あきらめて歩きだしたとき、駅から家路に急ぐ人の流れに逆らいながら歩いてくる彼の姿が見えた。

女物の赤い傘さしてあの姿だからすごく目立つな。
でもよく見ると黒いフードつきのパーカーが濡れてる。彼自身も。

「・・・おかえり」

「迎えにきてくれたの?まさか歩いて?」

「Suicaがなかったからまあいいかと思って」

「ええ、迎えに来たほうがびしょ濡れって・・・」

彼は、軽く笑って右手で濡れた前髪を掻きあげる。

うわ・・・つい見とれてしまう。

「カッコいい・・・」

「うん、知ってる。散々言われてるから」
そう言ってニヤリとする彼。

悔しいけど、まあ否定しない。これは反則すぎだ。
でもホントに風邪引くな。
私は慌ててタオルハンカチを出して背伸びして彼の頭を拭こうとして。避けられた。

「もう頭撫でられるのも飽きた」

の、割には少し照れてるのはなんでかな?ふふ。

「ほら、早く帰るぞ?今日は"シーフードシチュー"ってのにしてみた。アサリが旬だしな」

ほんとに主夫だな(笑)
可笑しくて笑う私の頭に大きな手が、載せられて。
軽くよしよしされる。

「今日もお疲れさま」

ーfin

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