これは、推し香水に偏見を持っていた一人のオタクが、突如6000円払って推し香水を買い、「推し香水……めっちゃ良くない？」と言い始めた理由を記した記録である。

「推し香水」というアニメグッズをご存知だろうか。
LIBERTA PERFUMEという香水ブランドのＨＰでは、こんなふうに紹介されている。

「推し香水」と呼ばれるものがあります。これは主に作品に登場するキャラクターをイメージした香水を指していますが、それ以外にも作中で推しキャラが使用していた香水や、「使っているだろう/使っていて欲しい」という想像に基づいて選ばれた香水のことも推し香水と言っていいでしょう。

https://liberta-perfume.com/shop/information/journal_howto_2021-02-02-oshi-fragrance

一番よく見かける「推し香水」は、アニメやゲームのキャラクターをイメージした香水、というものだ。アニメイトでも売っている。
たとえば、私と同年代のオタクの必修科目ともいえる「ヘタリア」でも、各キャラをイメージした香水がたくさん発売されている。

https://images.app.goo.gl/a37RJwpcnrpt5qUy7

私も年季の入ったオタクである。そういうグッズがあることは、もう何年も前から知っていた。
でも、欲しいとは思わなかった。

たとえばキャラをイメージした「ネックレス」や「くまのぬいぐるみ」なら、メンバーカラーを使っているとか、服装をモチーフにしているとか、わかりやすい要素が入っている。

でも、香水。「キャラをイメージした香り」って、なに？　こじつけじゃない？　誰かが勝手に考えて作っただけで、キャラとなんの関係もなくない？
つまり、私には一生縁のない代物だと思っていた。

https://www.otomart.jp/SHOP/GOODS-0918.html

はい。買いました推し香水。価格は5500円。送料込みで6105円也。

私の推しは、以前別のnoteでも書いたが、笠間淳という男性声優である。

彼が声優の梶原岳人と一緒にやっている「ふらスタ」というラジオのグッズとして、今年9月に発売されたのがこの香水である。

推し香水に興味のなかった私が、なぜこれを買ったのか。
それは、この香水が他の「推し香水」と一線を画しているからである。

これは、推し本人が「この香りをつけている女性がいたら好きになってしまう」というテーマで調香した香水である。

「キャラをイメージ」なんてふわふわした曖昧なグッズではない。推しが好きな香り、推しが女性につけてほしいと思う、まさにその香りが買えるのだ。6000円がなんだ。実質無料じゃないか。私は推しのラジオを聴きながら急いでポチった。

届いたのは10月だ。ややアダルティなパッケージが怪しげだが、「推しの好きな香りが手元にある、いつでも嗅ぐことができる」というだけで私は満たされた。
どんな香りなのか気になったけれど、すぐに開けてしまうのはもったいない気がして、しばらくしまっておいた。これはいつか、すごくメンタルが死んでつらいときとかに開けよう。そう思って。

そして、今日初めて開けた。理由は特にないような、一応あるような。
部屋の片づけで疲れ、ゲームも読書もしたくなかったから。
noteで「買ってよかったもの」を募集するタグを見つけ、今年買った中で一番面白みがあるのはこの香水じゃないかと思ったから。そんなところだ。

箱を開け、ビニールを開けると、瓶が現れた。プッシュを阻む謎の金具を外し、左手首の内側に数度、噴霧してみた。
花ともフルーツともつかない、甘くて華やかな香りが広がった。なんだかわからないけど好きな匂いだ、と思った。

アロマに疎い上に鼻が悪いので、これがなんの香りなのか調べた。
初めに香るトップノートが、柑橘類やチェリーなどのフルーツで、そのあと香るミドルノートがバラやミュゲなどの花らしい。花だかフルーツだかわからんと思ったのは、あながち間違いではなかったようだ。よかったよかった。

香りは人によって好き嫌いがある。私は花やフルーツなど甘い香りが好きで、ウッディなものやハーブ系はあまり得意ではない。
なので、この推し香水は好みにぴったりだったのである。推しと好きな香りが同じというのは、とても嬉しい。

私はこれから、いつでも推しの好きな香りをまとうことができる。

推しの出演する舞台にも、ライブにもつけていこう。ラジオを聴きながら嗅ぐのもいいかもしれない。五感をフルに使って、推しを感じることができる。
友達と出かけるときにつけていって、「それいい匂いだね」なんて言われたらすごく嬉しいだろう。学校とか仕事とか、楽しくない用事のときにつけていけば、推しに力をもらえるに違いない。

つまり私はこれから、推しと生活することができるのだ。

ブロマイドやアクスタを持ち歩くことはできても、人目のないところで取り出して見ない限り、推しを感じることはできない。
それが、香水ならひと吹きするだけで、四六時中推しを感じられる。これはとても幸せなことではないだろうか。

香水は、開けてから一年くらいで使い切る方がよいものであるらしい。だから、どんどんつけて、使っていきたいと思っている。

推し香水のある生活。
私は今日始めたばかりですが、かなり幸せです。
あなたもおひとつ、いかがですか？