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    「SHINPA」がおくる映画にまつわるジャンクなラウンジスペース

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『SHINPA the Satellite Series #2 在宅映画制作』リレー公開を完走して。

皆さん、こんばんは。映画上映企画 SHINPA の二宮です。今夜『SHINPA the Satellite Series #2 在宅映画制作』で制作された24本の映画のリレー公開を無事完走することが出来ました。参加してくださった監督の皆さんには、感謝の気持ちでいっぱいです。とても意義深いプロジェクトになったと思います。完走した今、感じていることをここで綴らせてください。少々、長文になってしまいましたが、最後までお付き合い頂けると嬉しいです。 たった約3ヶ月前の2月のこと。映

    • 『brother』渡辺大知監督【在宅映画制作 LINER NOTES #24】

      ピザとコーヒーと缶ビール、そして2つのリズムのベーシック・トラックが織りなす、翻訳小説のような味わい深い一品。在宅映画制作に参加した監督たちは皆、自宅で自問自答をする日々だっただろう。自分自身を営んだこの場所から、一体何を表現することが出来るのだろうか?その自分との対話の作業は、どこが自分を冷静に客観視することに近かったのかもしれない。渡辺大知監督の在宅制作映画『brother』は、そんな監督たちの特異な経験を、代弁するかのように鮮やかに描き出し、軽妙に掬い取る気持ちの良い作

      • 『move / 2020』深田晃司監督 【在宅映画制作 LINER NOTES #23】

        主体( i )を剥奪されたとしても、映画(movie)は、それでもなお静物であることから抗うだろう。 深田晃司監督の在宅制作映画は、壁の前に佇むひとりの女性のいくつかの姿を切り取る『move / 2020』だ。何かを語り掛けるわけでもなく、フレームの中で動きを抑制されたかに見える被写体であるが、外の音は動き、陽は動き、女性の中では感情が動いていることが感じられる。この女性は一体何を思っているのだろうか。その眼差しから、私たちは何を受け取るべきなのだろうか。彼女が向かった先に想

        • 『怪物的未来』 安川有果 監督 【 在宅映画制作LINER NOTES #22 】

          ガール/デタッチメント/メタモルフォーゼ少女たちの些細な交流も、コロナ禍で一寸先は闇だ。安川監督が、在宅制作映画で、十八番とも言える不穏なガールズワールドを新たなフェーズで作り上げた。在宅制作という制約が、新たな角度で、より今日的に、少女たちの世界を再構築することを実現している。安川監督は、少女にとって日常と闇は表裏一体で、危ういものであることを、度々私たちに訴えかける。一度、無垢な少女が好奇心を持ってしまえば、そこで少女を思う少年はいつだって無力だ。少女が、外からの攻撃でど

        『SHINPA the Satellite Series #2 在宅映画制作』リレー公開を完走して。

        • 『brother』渡辺大知監督【在宅映画制作 LINER NOTES #24】

        • 『move / 2020』深田晃司監督 【在宅映画制作 LINER NOTES #23】

        • 『怪物的未来』 安川有果 監督 【 在宅映画制作LINER NOTES #22 】

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          13本

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          『To whom it may concern,』古畑新之監督【在宅映画制作 LINER NOTES #21】

          微かに動く表情に、漏れ聞こえるつぶやきに。イギリスからの手紙に目を凝らし、耳をすましている。本企画で唯一海外から監督として参加した古畑新之監督。イギリスで俳優として活躍する古畑監督は、今回映画作りに初挑戦した。監督自身が演じる青年の夜のひと時。私たちはただ佇む彼の姿を追うことになる。ふと漏れて聞こえてくる隣人の声。青年は聞こえて来る言葉をそっと反復しながら、そこに座っている。古畑の純粋な眼差しに、訳もなく胸が締め付けられ、世界中が、今それぞれの祈りを真摯に唱えていることを実感

          『To whom it may concern,』古畑新之監督【在宅映画制作 LINER NOTES #21】

          『HOME』 森ガキ侑大監督【在宅映画制作 LINER NOTES #20】

          半径数mの擬人化の果てに立ち上がるホームドラマは、転じて自己内省の憂いを帯びるか?親しみやすい映像に、CMディレクターとしての出自がキラリと光る、森ガキ侑大監督のシャープな在宅制作映画の登場だ。私たちは、家の中で所有者について感情を抱くのは、おもちゃだけだと思い込んでいたが(名付けてトイストーリーシンドローム)、森ガキ監督が描く世界は、家具にも、靴にも、壁の壁画にも、それぞれ彼らなりの思いがたっぷりある。外出自粛期間という急な日常の変更により、彼らの憎悪はたっぷり溜まっている

          『HOME』 森ガキ侑大監督【在宅映画制作 LINER NOTES #20】

          『のぞく』 嶺豪一監督 【在宅映画制作 LINER NOTES #19】

          コロナ禍のスライス・オブ・ライフ。この一瞬も、等しく未来へと続いている。嶺監督は、在宅制作という環境からとんでもないアッパーカットを繰り出してきた。多くの者が目の前の現状に注力するこのご時世、彼はそこから地続きのこれからに目を向け、この外出自粛期間を、ひとりのカメラマンの黎明期に例えた。この期間、私たちはある不可抗力の如く、自問自答を強いられ、ミニマムな自己探求の旅に出た。嶺豪一はその旅路を”のぞく”。日常を切り取るイメージの鮮烈は、次第にマジックリアリズムの気配を帯びながら

          『のぞく』 嶺豪一監督 【在宅映画制作 LINER NOTES #19】

          『はじめてのお仕事』 前野朋哉監督【在宅映画制作 LINER NOTES #18】

          前野朋哉とは、良心の呵責を顔の面にたたえ、手紙を書きつむぐ動体である。前野朋哉という男は、どこまでピュアで、優しくて、真っすぐで、親しみやすく、可愛いのだろうか。しかし、その監督作をつぶさに見れば、目立った症状ではないのだが、心のどこかに何やら危うさを抱えているであろうことも、想像に難しくない。(しっかりと診断するには、相当高度な技術の精密検査が必要かもしれない!)今回の前野監督の在宅制作映画でも、その兆候はしっかりと確認できる。どこまでを自覚しているのだろうか。しかし、毎度

          『はじめてのお仕事』 前野朋哉監督【在宅映画制作 LINER NOTES #18】

          『LOVE依存症』 篠原悠伸監督【在宅映画制作 LINER NOTES #17】

          ワンルームにフロアが出現したら、きみのイマジネーションは踊り出す!まさかのタバコたちの知られざる心の声を教えてくれるPOPチューン『LOVE依存症』。ふざけてるのか、本人なりの真面目なのか、全く分からないが、そんな詮索は無用。クセになるビートに身を委ねて、タバコたちのキューティーで意外と切実な思いに、束の間耳を傾けてみよう。俳優、ミュージシャン、監督とマルチに活躍する篠原悠伸。自分の世界観を着実に構築し、一度その存在に触れると頭から離れない。新たなダークホースの侵略は既に始ま

          『LOVE依存症』 篠原悠伸監督【在宅映画制作 LINER NOTES #17】

          『Amazon』 柄本佑監督【在宅映画制作 LINER NOTES #16】

          反復と叙情、家は境界に囲まれて、そのなかで僕たちは繰り返し、繰り返す。何気ない日常を切り取っているが、それは、実際に濃厚接触者となった柄本監督のその瞬間の眼差しだ。温かい家族の団欒の残り香と、それでも否応なく続いているひとりの男の日常とのコントラストが、私たちに想像の余白を駆り立てている。外出自粛要請により、はじめての経験をした私たちには、この期間固有のそれぞれの記憶と感情が立ち上がっている。その中の一つとして、じっとりと染み込む、とある日の柄本監督の食卓。そして、最後の瞬間

          『Amazon』 柄本佑監督【在宅映画制作 LINER NOTES #16】

          『リモートフィクションガール』 アベラヒデノブ監督【在宅映画制作 LINER NOTES #15】

          男女の会話は二転三転、なにを信じていいのか判らない不穏な世界へ突入する・・・数年前、モテない男の雄叫びがジャパニーズカルチャーを牽引した瞬間があった。そんな倒錯した花吹雪の中で、自己肯定感を満たしてしまい、その後、そんなことが嘘だったみたいに進化し続ける世界のOS(オペレーティングシステム)の変化に戸惑い、困惑する永遠の少年(つまりおじさん)がいる。彼の名は、アベラヒデノブだ。そんな彼の(時を経て新たに諦念の要素がブレンドされた)心象風景を、最先端のOSとも言えるビデオ通話で

          『リモートフィクションガール』 アベラヒデノブ監督【在宅映画制作 LINER NOTES #15】

          『Pana』 小村昌士監督【在宅映画制作 LINER NOTES #14】

          「記憶にとどめるほどではないが、よくよく考えるとおかしな人物」リスト、1名追加!?小村昌士の作る世界には、常に不遇な人しかいない。不遇の中で、耐えしのぐことで理性を保とうとする者が、不遇の中で、相手に迷惑をかけることで理性を保っている者に出会ってしまう。その不遇と不遇の邂逅から、我々が導ける教訓などまったくなく、変わらず一方は耐えしのぎ、一方は迷惑を与え続ける。そんな底なし沼を私たちは今作でも垣間見てしまう、『Pana』の正体を知ったときに…。 Postscript #14

          『Pana』 小村昌士監督【在宅映画制作 LINER NOTES #14】

          『第七銀河交流』 岩切一空監督【在宅映画制作 LINER NOTES #13】

          突き動かされる衝動も、口に出る諦観も。すべては君と映画が撮りたい理由。イソラコスモス(岩切一空の秩序によって、調和がとれた宇宙)が、新たな刺客を、私たちの世界に送り込んできた。イソラコスモスに、コロナウイルスは存在しなかった。この作品は、想定されなかったバグが引き起こした超立方体のようなものだ。コロナ後の世界における正しさも議論も、イソラコスモスの素粒子の中には窺い知れない。だから、イソラコスモスは新天地を探す。それは、第七銀河にあるらしい。だから岩切監督は「第七銀河で会いま

          『第七銀河交流』 岩切一空監督【在宅映画制作 LINER NOTES #13】

          『人形』大野キャンディス真奈監督【在宅映画制作 LINER NOTES #12】

          オーバーリアクションと平静の狭間で、虚構と虚構のかけ算は新たな時代のfactとなるのか?度重なる水爆実験によって生まれたのがゴジラなら、メディアと映像の急速な多様化(もしくは歓迎され始めたぶっ飛び自己表現)によって誕生したのが、大野キャンディス真奈監督かもしれない。オーバーリアクションと平静の狭間…無知と熟知の重ね合わせ…惰性的なようで精力的なようで…(あれ、意味不明だな。もしかして大野監督を表す言葉はまだ発明されていないのか…)まずは、この在宅制作映画を観てみよう。彼女が、

          『人形』大野キャンディス真奈監督【在宅映画制作 LINER NOTES #12】

          『おとといの昼間』 野崎浩貴監督在宅映画制作 LINER NOTES #11】

          遊戯は伝播し、話者は移ろいゆく。その眼差しは、とても優しい。稀代の動物園フリークとして名を馳せる野崎監督。午前中:動物園、午後:映画館というルーティンの双極を自粛せざるを得ない状況下での在宅映画制作であるが、普段動物にとても会いに行っていた野崎くんの元には、動物のほうから来訪がある。ささやかな昼下がりの戯れは、しかし、したたかなフレームで切り取られていく。これも、動物の気持ち、動きを熟知した野崎くんの成せる技であろう。小さな空間に向けられる日常を捉えた眼差しには、アジアの映画

          『おとといの昼間』 野崎浩貴監督在宅映画制作 LINER NOTES #11】

          『シナモンガール~なんだコレ?~』中村祐太郎監督【在宅映画制作 LINER NOTES #10】

          息を吸うように映画は撮れなくとも、息を吸った時間すべてを映画と名付けたい。「息を吸うように映画を撮る」とゴダールがフィリップ・ガレルを語ったように、映画制作が日常と分かち難く結びついている監督の流れがある。 ところ変わって、中村祐太郎は20代最後の映画で『シナモンガール』と連呼した。シナモンのような女の子と出会い、シナモンガールを具現化したい。奇想天外な願望を本気で唱え、人々を巻き込み、自身の浪漫を分け与えていく。それが中村監督の世界であり、生活なのだ。シナモンガールとの旅路

          『シナモンガール~なんだコレ?~』中村祐太郎監督【在宅映画制作 LINER NOTES #10】