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生命の力

午後から新しい仕事の打ち合わせ。

一つの学校だったり、一つのスラムだったり、自分が与えられた小さなローカルに愛情を注ぎ、そこにある課題を根気よく解決していく。
20代、30代で、そういったことに人生を投じている友人が何人かいる。

ある意味で、そうした等身大の挑戦からのみ、常にこの世界は変わっていくのかもしれない。

森岡正博氏の『無痛文明論』のなかに、われわれが注意しなければならない発想を、端的に2つ挙げた箇所がある。

人間と自然が一体であったころに戻れとか、昔のような暖かな人間関係を回復せよと提唱する。(中略)古き良き時代を取り戻したいという発想は、現代社会の姿を憂う誠実な思索が陥りやすい最大の罠のひとつである。その罠に落ちないための知がどうしても必要だ。
もうひとつの発想は、良い社会を作り出すためには、いまのわれわれの外部の大きな勢力を打倒しなければならないというものだ。(中略)外部の強大な勢力に神経を集中するあまり、その強大な勢力が自分自身の内側にも存在していて、外部と通底しているという事実を見落としてはならない。

この本は2003年に初版が出たものだが、16年を経た今のほうが、さらに身に迫ってくるものがある。
書かれているように「現代社会の姿を憂う誠実な思索」が、このような罠に陥りやすいという指摘は重要である。

「生命の力」は、先の見えない人生を、予測不可能な方向へ、他者のいる方向へ、自己をたえず変容させる方向へと開いてゆき、この世に受けた生を悔いなく生き切ろうとする原動力としてはたらく。(『無痛文明論』森岡正博)


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