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"写真展"という名の、待ち合わせ場所。

2022年。
毎年、年末になると一年を振り返りながら今の自分の思いや記憶を文章に残しておくのが自分の中の決まりとなって久しいのですが、例に漏れず今年もそんな年の瀬がやってまいりまして。

毎年、「さあ、何を書こう?」と頭を悩ませるところから始まるのですが、こと2022年に関しては全く迷う余地がなく、すぐに決まりました。
今年は、これからの自分にとって間違いなく大きな心の指標となった2つの写真展について、振り返りと今の自分の思いをまとめようと思います。
展示に来てくれた人も、そうでない人も、今年私と関わってくれた全ての方へ。

個展「偶像憧憬」

1つ目の展示は、10月末から11月頭にかけて開催した初めての個展「偶像憧憬」
2020年より師事していた写真家の青山裕企さんの元から独立することとなり、そのタイミングで師匠のギャラリーを借りて展示をさせてもらうこととなりました。(アシスタント最終日のnote↓)

自分で言うのも恥ずかしいですが、この展示は「空間丸ごと使って”森川亮太”を表現する」を目指して、今年の1月から構想を練り始めた、今の自分の持てるもの全てを出し切ったものでした。

ギャラリーの様子
偶像憧憬 ステートメント

人物写真を生業とする人間が、展示空間の中に1枚も人物写真を入れず、”額”と”写真集”をひと組とすることで初めて成立する作品群。
空画を”心象風景”と定義することによって、自分が見た景色を鑑賞者に問いかける空間を作りました。

展示の後書きにも書かせてもらいましたが、この個展は私が写真表現の世界に足を踏み入れるきっかけとなった”アイドル”という存在を、その概念から考え、分解し、写真と空間に再定義する試み。

偶像憧憬 あとがき

ただ人を撮るのではなく、自分が何を見て、何を感じ、何を残したいと思うのか。
漠然とした自らの感情と向き合い、作品として昇華させるのは本当に大変で。

無駄のない、シンプルなものに惹かれる私。
好きなものを語るときは詰め込みすぎてしまう私。
見たものに、意味や物語を持たせたくなる私。
人と意見を通わせることに喜びを感じる私。

ありとあらゆる”私”を詰め込んだ結果、来てくれた友人の多くから「どこを見ても”森川”を感じる」という、嬉しすぎる褒め言葉も貰いました。

(この展示のためだけに、友人に曲を書き下ろしてもらいました。)

この個展は、今まで行ってきた写真表現の中で、最も自分の心を色濃く反映させることができたと自負しています。
これからの写真人生において、間違いなく原点と呼べる作品たちを残せたのではないかと、そう言い切れる空間を作ることができました。

漫画脳展 年末拡大号

そしてもう1つの展示がこの「漫画脳展 年末拡大号」
※漫画脳展についての詳しい解説は、同じ運営メンバーとしてこの展示を駆け抜けてくれたみぞ氏が僕よりもはるかにわかりやすい文章でまとめてくれているので、よかったら読んでみてください笑

この展示には企画・運営の1人として携わらせてもらったのですが、これがまあしんどくて…
「自分の人生の糧になっている漫画のセリフと共に作品を展示する」というコンセプトのせい(おかげ)で、生半可な気持ちで作品に向き合うことが許されないんですよ。

中途半端な熱量で向き合うということは、写真だけでなく自分が好きな漫画に対しての熱量もその程度かと、見てくれた人や出展者の仲間に申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまうわけで。

ただ、11月まで前述していた個展にかかりきりだった私にとって、新しく作品を撮り下ろすというのはスケジュール的にも気力的にも本当にギリギリで。
一瞬「個展の時の作品を出し直すのもアリなのでは…?」と、楽な道がよぎりました。

モデルを務めてくれた蜜柑ちゃんと

短い制作期間の中、私が選んだのは「自分が今まで選ばなかったものを集めた、始まりの1枚。」というテーマ。
個展がこれまでの自分を形にしたものだとするなら、この漫画脳展で展示した作品は、これから歩いていく道の一歩目、始まりを忘れないための写真。

好きな色を探して現像ソフトをこねくり回していた自分。
ロケ撮の自然光の恩恵を頭で理解せず、感覚だけで享受していた自分。
1枚、1つの構図を決めて追い込むことが苦手な自分。

自分が苦手だったこと、やってこなかったことと向き合い、見た時に自分の現在地やその時の気持ちを思い出せるような。
未来の自分と、写ってくれたモデルのための1枚を目指しました。

最強で最高な運営メンバー

全力の作品をぶつけてくれた出展者の皆さんにも、こんなカオスな空間を楽しんでくれた来場者の皆さんにも感謝しかないのですが、何よりかにより1年間この「漫画脳展」という企画を共に戦ってくれた運営の4人(ここにはいないけど最強のデザイナー ブンちゃんもいます)は、これから先もずっと戦友なんだろうなと。
そう感じることができる人たちに出会えたのが、何より嬉しかった。

心の寄す処(よすが)

この1年を通して、私にとって写真展という空間は、待ち合わせ場所のようなものでした。
大切にしたい人と思いを共有する場所。
そして、この時に自分が何を思い、何を形にしたかったのかを残しておける、過去の自分との交差点。

漫画脳展の会期中、出展者でもあった写真家の福島裕二さんとお話しする機会があったのですが、
今自分が抱えている悩みや写真との向き合い方を聞いてくださった後に
「自分が心震えた瞬間の光を、もっと鮮明に説明できるようになるといいね。」
「未熟でも、自分が良いと言えるものがあるのなら、今の君にとって大切な作品だよ。」
と、これからの自分の指標になる言葉を頂きました。

表現と向き合うという行為は、突き詰めていくとやっぱり孤独なもので。
自分自身が納得できる答えが出るまで、1人で潜り続けなければいけない時間が大半です。

でも、ふと顔を上げて周りを見た時に、手を差し伸べてくれる友人や、自分に足りないものを補ってくれる仲間、より険しい道を歩いている先人や戦友の存在を感じる瞬間がある。

2022年は特に、そんな存在をより強く感じることのできた1年だったように思います。

いつもの言葉になってはしまうのですが、この一年、私と関わってくれた全ての人に、心からの感謝を。
”与えた恩は水に流せ、受けた恩は岩に刻め。”
私の大事にしている言葉の1つです。

2023年、頂いた恩を少しでも返せるように頑張ります。
来年もどうぞ、よろしくお願いいたします!

サポート代は全額写真の勉強代に当てさせてもらいます…!