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#みの編マフィア小説 【第19夜】男は愛狂 女は怒狂

「…ついでくれるの?ありがとう。」

差し出されたボトルに、グラスを傾ける。

傍から見れば、紛れもなく、紳士と淑女のディナーのひと幕だった。

(貴方は今…何を考えているの…?)
百戦錬磨、数えきれない修羅場を軽やかに飛び回ってきたリリーも、人の子だった。
恋というのは、ここまで自分の瞳を曇らせるものなのか。

完全に自分のものにしたと思っていた力。
磨き上げてきたはずの審美眼、洞察力。

たったひとりの想い人の前では、なんの意味もなさなかった。

ーーー

(リリー…?ほんとうに…リリーなのか……??)

片やマッツも、確証の持てない相手への想いと、抗いきれない衝動と闘っていた。

(リリー…裂きたい…大好きだ…食べてしまいたい…ダメだ…飲み込め…私…)

彼の中で何かが弾けてしまえば、右手のそばにあるナイフで、そのまま彼女の喉笛を掻き切ってしまいそうな。

震える右手を必死で抑えながら彼は声を絞り出した…

「リリー…僕の…視界から…早く消えろ…」

「…マッツ!?貴方、やっぱりマッツなのね!!!あぁ…どんなに貴方に会いたかったか…」

「早く…早く…!!!今の俺は…君を…傷つけることしかできない…!」

「…いいわ。貴方に裂かれるのなら。私は喜んで受け入れる。」

「…リリー…?」

「私は私に正直でありたい。愛は、自分で選ぶものよ。」

リリーは静かに目を閉じた。 来るであろう刃を、受け入れるために。

「ウホオオオオオオオオ!!!!」

静かだった会合場所に、突如怒号が響き渡る。

「マッツ…貴様、俺のリリーに何しようとしてるウホ…!!?」

憤怒の形相に顔を歪めたブタゴリラが、テーブルを叩き割った。

「人の惚れた女に手ぇ出そうってんだ…覚悟は出来てんだろうな…」

…グシャッ!!!!

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