親が本を読めば子どもが本を読むとは限らない

親が本を読めば子どもも読むようになる、という人がいるけど、必ずしもそんなことはない。私の両親は本を読んでいたけど、私は中学三年生になるまで読まなかった。マンガばかり。
他方、親が全然本を読まないのに読書家の友人もいる。親が本を読めば子どもも本を読むなんてのは幻想だと思う。

なぜ私が本を読まなかったかというと。「本を読むといい」と親が勧めるから。もし本を読んで面白くても「ほら、面白かったろう」と親に偉そうに言われるのがシャク。面白くなかったらもっと腹立つ。で、私は親が勧めれば勧めるほど頑なに読もうとしなかった。

他方、親が本を読まず、家には本が一冊もなかったという知人はなぜ本を読むようになったかというと。子どもが本を読むのを見て、親が驚いていたかららしい。「もうそんな本を読んでるの?!」親が驚いてるのが嬉しいし、実際本が面白いしで、どんどん本を読むように。

考えてみれば、私が本を読もうとしなくなったのは、親が本を読む人たちだったからだと思う。もし私が本を読んでいても、自分が読書家だから驚かないし、何なら読んだ本の解説まで始める。これでは嫌気が差してしまう。というわけで、私は中学三年生になるまで頑なに本を読もうとしなかった。

もし子どもに本を読んでもらいたいなら、子どもが本を読もうとする能動性を見せた時に驚き、本のどこが面白かったかを楽しそうに語ってくれるその能動性に驚き。そうして、子どもが親の想定の外に出ることができた、親を驚かすことができた、と感じられるようにすることだと思う。

その仮説に従い、二人の子どもたちに接したところ、二人とも読書好き。「よくもまあそんな本をお前の年で読むなあ」と驚いたり感心したりしてたら、どんどん読むようになった。
ただし、私も失敗したことがある。

息子は名探偵コナンが好きなんだけど、それで三国志が出てきたらしく、「三国志を読んでみたい」と言い出した。三国志好きの私はつい嬉しくなって、三国志について熱く語った。結果はご想像の通り。息子は三国志に興味を失い、祖父母から送られてくるマンガの三國志を読もうとしない。

たとえ三國志を読んだとしても親が驚かないどころか、親が得得と語るだろうことを予想して、興味が失せたのだろう。
他方、そんな話を聞いてない娘は何度も三国志のマンガを読んでる。うちの子どもはアマノジャクだから親の手のひらで踊らされるのが大嫌い。親を驚かすのか大好き。

というわけで、親が読書家なら子どもも読書するとは限らない。むしろ親が読書家だから本を読まない、ということが起こり得る。もし親が読書家であることを自慢するけぶりがあったら、子どもは反発して本を読まなくなる可能性が高くなる。

逆に、親が本を読まず、読まないからこそ、子供が嬉々として読む様子を見て驚く親だと、子どもはますます本を読むようになるらしい。
子どもは基本、アマノジャクだと考えてよいように思う。親が期待する逆のことをやりたがり、それによって親を驚かせたがる。

ならば、親は変に子どもに期待せず、なるようにしかならないと腹をくくり、子どもが思わぬ能動性を見せた時に驚くようにだけしていたらよいのだと思う。子どもは、親の想定の外に出て、驚かせるのが大好きな生き物なのだから。

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