子どもが本や図鑑を読む条件

子どもに本や図鑑を読んでほしいのにうまくいかない、と悩みを相談されたことが何度か。
次のような注意点があるように思う。
・(日常の)発見に驚く。
・本や図鑑のある環境は用意しても、それらを読むのを勧めない。
・マンガやアニメ、ゲームと同列に考える。
・知識を披露しない。

本や図鑑を勧める人は、日常の現象よりも本の知識の方が高尚だと考えているフシがある。このため子どもが日常の中で何か発見しても「それはあの図鑑に載ってるよ、読むともっと詳しいこと書いてるよ」「この本にはこないだの発見に関係したことが書いてあるよ」などとつい勧めてしまうらしい。

しかし、子どもからしたら、発見で親を驚かせたかったのに、発見と驚きを台無しにした憎き相手になる。本や図鑑が。しかも親は本や図鑑の内容に詳しいらしい。それを読んで知識を増やしても、親は驚いてくれないし、むしろ解説までしてきそう。ウザい。余計に読みたくなくなる。

子どもは、自分が発見したことで、親を驚かせたい。なら、親は驚けばよいのだと思う。本や図鑑に書いてあるなどと先回りせずに、子どもが自分の力でそれに気がついた奇跡に驚けば。すると子どもは、その発見のことを忘れなくなる。忘れられない発見を本の中で再発見したとき、嬉しくなる。

「この本に書いてあったよ!」と、子どもは親に驚いてもらおうとするだろう。その時、「よく見つけたね」と驚いてみせれば、子どもは得意気になってその本に書いてある解説を読み上げてくれるだろう。親をますます驚かせたくて。親は、そうして能動的に学ぶ子どもの姿に驚いていればよいと思う。

しかしもし本や図鑑を勧めてしまうと、子どもは親がその本や図鑑の知識を備えていることに気がつく。親の前のめりな姿勢から、本の知識を披露しても親は「私がその本を勧めたからだ」と恩着せがましい態度を取るだろうことが予想できる。親を驚かせたいのに、これではつまらない。

だから、本や図鑑を与えるのは構わないけど、「面白いよ」とか「ぜひ読むといい」などと勧めないほうがよい。大人でも知り合いから勧められた本は読まない可能性が高い。なんとなく「ほら、面白かったでしょ!」と得意げな顔、なんとなく恩着せがましさを感じる気持ちになるだろうことを察するから。

読むか読まないかは本人に任せて、「中身は知らんけど、好きかもしれないと思って」と渡して、あとは知らんぷりくらいがどうもよいらしい。

あと、マンガやアニメ、ゲームよりも本や図鑑を高尚だと考える親が少なくないようだけど、その価値観がかえって本や図鑑から子どもを遠ざける原因になっている気がする。
私はマンガからもアニメからもゲームからも学べると思っている。本や図鑑と同列に考えて構わないと考えている。

もしマンガなどを下位に置き、本や図鑑を高尚として高く評価する序列をつけると、自分の大好きなものを貶める本や図鑑を憎む気持ちが生まれかねない。それはかえって本や図鑑を「敬遠」することにつながりかねない。

私もYouMeさんも、マンガやアニメ、ゲームなどと、本との間に序列を設けていない。どれもエンターテイメント。本も楽しむために読むものだし、マンガやアニメなどもそう。マンガやアニメから学ぶこともある。序列を設ける意味がわからない。

幸い、マンガやアニメなどで発見したことは、本や図鑑にさらに詳しく紹介されていたりする。自分が楽しんだ、好きになったものがより詳しく書いてある本や図鑑が楽しくないはずはない。マンガもアニメもゲームも本も図鑑も、同じ地平にあるものとして考えたらよいのだと思う。

そして、それらから子どもが学んだもの、発見したもの、工夫したもの、挑戦したものがあれば驚く。日常に起きた発見も含めて、特に区別することなく。すると子どもはどんどん発見しようとする。知識を身に着けようとする。その楽しみの中に、自然と本や図鑑が選択肢に入ってくるもののように思う。

最後に大切なのは、親が知識を披露しないこと。親が知ってることに気がつくと、実にものの見事に解説するのを聞くと、子どもはもうその分野に関しては親に勝てず、親を驚かすことができないことに気がつき、ウンザリして、興味を失ってしまう。

知識を変に披露せず、変に子どもに教えようとしないこと。すると子どもは、親から教えられずに自分で発見せざるを得なくなる。子どもが親の力を借りずに発見したことだから、親も素直に驚ける。よく自力で気がついたなあ!と。よく自分で発見しようとしたなあ、と、その能動性に驚くことになる。

子どもが本や図鑑で仕入れた知識を披露してくれたとき、親はそれに驚けばよいと思う。子どもはますます熱心に読み込み、得た知識を披露してくれるだろう。よくぞ自分で。進んで読み込んだものだ、と、その奇跡に驚けばよい。すると子どもはますます知識に貪欲になるように思う。

子どもが本を読むようになるには、冒頭のような注意点に気をつければよいように思う。あとは自然に本を読むようになるのではなかろうか。子どもは親を驚かすのが大好きなのだから。

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