見出し画像

性別の違和感と恋愛と性。私の性別って何?

昔から、女の子らしく振る舞いという行為が苦手であった。
兄弟は弟、いとこは男、近所の幼馴染も男という環境で、一緒に野球をしたりして遊んでた影響もあるし、父親やいとこの漫画を読むふけってた影響もあるだろう。一緒に遊ぶ女の子がいなく、一人でお人形遊びをしてはいたが、最終的にキン肉マン人形とプロレズごっこ遊びをしだすという、リカちゃんマニアや、バービーファンからすれば冒涜的な遊び方をしていた。

小学校低学年に近くに住む女の子と遊ぶ機会があったのだが、当時引っ込み思案で自分の意見をはっきり言えない性格だったので、結構からかわれたりして、あまりいい思い出が無かったのも大きく影響してると思う。

小学校高学年の頃、とある男子と口喧嘩になったのがきっかけで、ほとんどの男子から「ばい菌扱いされる」といういじめを受けたのも大きいと思う。
そしてそれをかばってくれる女の子の友達もいなかったのが辛かった。
公立の高校時代までそのいじめは続き、中学、高校の部活の仲間は仲良くしてくれてたが、部活を引退してからは、男子とも女子とも喋らない無口なキャラになってしまった。現実から逃れるように、本を読み、絵を描いて日々を過ごしていた。

恋愛をするという行為に苦手意識は無かったので、恋に落ちることはあったが、「ばい菌扱いされている」という事実の前では、そんなもの無に等しかった。そんな環境で10代のほとんどを過ごしたものだから、私の男に対する意識、また一緒になっていじめてきた女子への不快感から来る「女の子って嫌」という感覚が、私の恋愛感覚や、性別の感覚を歪ませてしまったのかもしれない。

大学に入って環境が変わってからは、いじめもなく、女友達に恵まれ、またバイト先の男性と接し、恋に落ちることで、恋愛っていいじゃん、とやっと素直に思えた。しかし「女の子らしく振舞う」という行為には抵抗があった。

小学校から高校までは、学校生活が1日の半分を占め、それが全てとも思い込んでいたが、いざ大学に進み、バイトを始めると、結局は狭い世界でしかなかったんだな、と気づかされた。

では、大学に入ってから無事、恋愛出来るようになったかと言えばそんなことはなく、「女の子らしく振舞う」のは苦手なくせに「若さゆえの性欲だけはあった」ので、バイト先の男性に片思いをしながら、セフレを3人作るというあり得ない状況を作ってしまった。セフレは良いよ、後腐れないし、その時だけ女の子らしく振舞っておけば快楽は得られるし、本性なんて知ったこっちゃないし、今は若いしどうせなら堕ちるところまで堕ちちゃえ、というどうしようもない若者になってしまった。

3人のセフレを辞めたきっかけは、3年間片思いした男性が大学卒業でバイトを辞めた時。片思いして速攻告白して玉砕したものの、バイト先の仲間意識や、友達としてならいいよ、という相手の懐の深さもあり、楽しく過ごしていた時間もこれで終わりだな、と思った時に、その男性から贈り物をもらった。小さなサボテンの鉢植えだったかな。詳細は忘れたが、「これからも頑張ってね」という言葉とともに贈られた、ささやかで素敵な贈り物。
それまで男性からいじめの対象や、性欲処理でしかなかった私に、理性と優しさで接してくれた初めての男性のその贈り物に心が洗われ、私は泣いた。
もうやめよう、男を雑に扱う行為は。そして自分を雑に扱う行為は。そう決心したのである。

しかし、一度得た快楽を忘れることは出来ず、大学を卒業してからも、ヤリモクでナンパした男とは簡単にヤッたし、しばらくの間、歪んだ根本は治ることはなかった。


歪んだ根本が治ったのは20代後半。新しく勤めた職場に慣れず、仕事を覚えるのが精一杯、不器用な質問ややらかしをしては上司に怒られる日々の中で、恋愛なんてする余裕は全くなかった。そして、とりあえず職場恋愛は止めよう、絶対仕事に支障が出ると自分を律して、仕事に励んだ。

その間もずっと付きまとっていたのは、女の子らしく振舞う事への苦手意識。どういう訳かこれだけはいつまでたっても無くならなかった。

複合施設だった職場が閉館し、しばらく派遣バイトをしながら、新しい職場でうつを発症して10数年。とりあえず生きるのに精一杯な私は、性欲どころか、恋愛感情も湧かなくなり、男性を意識することも、自分が女性であるということもあまり意識しなくなるようになった。

がさつで、男っぽくて、口も悪く、フリルやレース、リボンのついた洋服より、メンズライクなファッションが好きな私。少女漫画より少年漫画の方が好きな私。爪を伸ばすのが嫌いでネイルアートにちっとも興味を持てない私。もう男とか女とか性別面倒くさい、そんなん関係なく楽しくしようぜ、な開き直った感覚が徐々に表に出るようになった。
もう自分が女だからって、男に取り繕うのやーめた、てか病気でそれどころじゃないし、で働きだした就労継続支援A型では、社会的には常識の範囲内で女性らしく振舞うものの、それ以外はどうでいいいや、な限りなくおっさんに近いおばさんという物体になってしまったのだが、これが意外に功を奏した。

なにせ男を男として意識しないから、相手がどれだけイケメンでも心がなびくことはなく、人間的にこいつ面白いなと思った人には声をかけ、徐々に仲良くなっていった。向こうも向こうで私を女として意識しなかったから、ただ純粋に音楽の話や、ファッションの話で盛り上がった。

これやったんや、私がやりたかったことって。

性別関係なく、人としての礼儀を持ちながら、好きな音楽やファッション、漫画を語り、一緒になって馬鹿笑いする。決して職場の外で会うことはなく、あくまで職場内で楽しんだ。相手のプライベートにはお互い干渉せず、連絡先も交換しなかった。常に一定の距離を保ちながら、会話して、笑いあう。すごく楽しかった。時には下ネタで盛り上がり、ジョジョ立ちしながら挨拶したり、中指立てて意味の無い牽制をしあったり。馬鹿だったな、私も相手も。でもお互いが相手の事を必要最低限に大切に思ってなければ出来なかった。そうさせてくれた男性に心から感謝した。ありがとう。おかげで自分が自分らしくいられたよ。

昨年夏に、ストレスと薬の副作用が原因で急激に体調が悪くなり、2が月休職した後、退職することになった。その男性とは休職して以降、一切会わなかった。勤務時間後、利用者が帰ってから、退職手続きをした。お世話になったし、メモ紙にでもお礼の言葉でも伝えようかな、と思ったが、止めた。人づきあいが上手く、自分なりの処世術を身に着け、常に飄々とした態度で、利用者の皆から好かれていた彼のことだ。きっとこれからも何一つ変わることなく職場に来て、いつもの日常を過ごすのだろう。そんな彼に、別れの手紙なんて、なんだか野暮ったい。その程度の関係性だった。でも彼と過ごした時間が楽しかったのは紛れもない事実だ。それだけで十分だった。


これから先、あんな風に馬鹿笑いしながら接してくれる男性に出会うことはまずないだろう。ただ、私はあの頃楽しく過ごしてた、自分らしくいられた自分のまま、これから先を生きていこうと思う。


後になって知ったのだが、私の性自認はXジェンダーで、中性、もしくは両性であることが分かった。若い頃は不定性だったが、今現在は、ほぼ両性よりの中性である。(無性ではないことだけははっきり分かる)婦人科で「あなた男性ホルモンが多いですね」と言われたのも関係あるのかも知れないなあ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?