お好み焼き

昔々。

父親に連れられて新宿に映画を観に行ってた頃、映画を観終わると帰りは紀伊國屋(新宿通り)の地下にあるお好み焼き屋さんに立ち寄って、晩ご飯を食べてから家路に着いていた。

あの頃の父はいくつだったのだろう?今の私よりも若かったのは間違いない。

「ここのはうまいんだ」と行く度に父は言ってた。「何回も聞いたよ」と言わない程度の優しさは私にもある。

狭くて、小汚い店でね。でも抜群にうまかった。

それがある時新装して何もかもキレイになっていて、そしたら別の店かと思うほど味も全く変わってしまっていた。実際、別の店だったのかもしれない。それ以来、立ち寄らなくなった。私も大人になって、父と映画に行くこともなくなった。

おいしかったなあ。

父は今年、91になる。


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