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高知県の須崎までスーパーカブでカツオのたたきを食べに行った話(後半)


前回の記事の続きです。遅くなってしまいましたが行ったのは5月です。





平日の昼間だが、道の駅は観光客で賑わっていた。じわりと汗ばむ日差しから逃れるようにして店内に入った。

入道雲と青空がめちゃくちゃ夏っぽくていい感じ。


もっとこじんまりとした道の駅を想像していたが、かなり大きな建物だ。中にはいくつかの異なる店がエリア分けされており、同じ階の商品でもエリアによって別会計となっているようだった。
道の駅でこういうスタイルは珍しい。気がする。

土産物も、ほかではあまり見ないようなユニークなものが多くあった。雑貨屋さんのようで、歩いているだけで楽しい。

多田水産は、道の駅の最奥部にあった。奥と言っても吹き抜けに近い構造なので、明るい雰囲気だ。

たたきガンダム!労働中。

ひとしきり店内を回ってから、お腹も空いてきたのでたたきを注文することにした。
多田水産では、藁焼き体験やたたきの全国配送のほか、その場でできたてのたたきを食べる事ができる(500円)。

お金を渡すと、奥で早速カツオが解体されていく。店員さんがこういう現場でしかまず見ないような長い包丁を器用に扱い、あっという間に捌いてしまった。

器にもどことなく高級感がある。


店内のテーブル席に座るよう促され、10分ほど待っているとお盆が運ばれてきた。なんと刺身だれまでボトルで貸してくれた。

カツオは鮮烈な赤い身をしており、周りの部分に炙った焦げ目がある。ネギ、玉ねぎ、ニンニクなどの薬味がどっさりと乗っている。

驚くべきは、その薬味の量だった。刺身が薬味で覆い隠されてしまうほどである。とりわけ、生ニンニクのスライスは1かけ分ほど乗っている。
「こんなにニンニク食って大丈夫なのか…?」と一抹の不安がよぎったが、「郷に入っては郷に従え」と言うものだし、須崎流の食べ方に従うことにした。

刺身を薬味の山から掘り出し、たれにつけて、薬味を乗せて口に運ぶ。瞬間、カツオの濃厚な旨みが口に拡がった。
美味い。これ本当に美味い。
今まで食べてきたあらゆる刺身の中でもトップレベルで美味い。
さらに、たたきだけでなく薬味のレベルも高い。特ににんにくは、シャキっとしていて、噛むといい辛味がする。

夢中で口に運ぶうちに、いつのまにか皿は空になっていた。味わって食べたつもりだったが、あっという間になくなってしまった。

一抹の寂しさを感じたが、「絶対にまた来よう」と心に誓って多田水産を後にした。



そして、さすがにたたきだけでは腹を満たすのに足りないので、道の駅2階の食堂で昼食をとることにした。

メニューにはかなりバリエーションがあるようだ。


多くのメニューがあり少々悩んだが、「ウツボ丼」に決めた。ウツボの揚げ卵とじ丼と、汁物のセットだ。

隣の家族が鍋焼きうどんを食べていて少し羨ましかった。

ウツボは黒潮のよく当たる岩礁地帯に生息するが、真水を嫌うため私が住んでいる瀬戸内海近辺にはあまりいない。ウツボ食文化は高知県ならではのものだろう。

早速食べてみると、濃厚な白身魚の味がする。ほんの少しクセがあるが、多くの人は問題なく食べられるであろうレベルだった。ウツボ特有のこのクセをなくすためにわざわざ「揚げ物」調理をしているそうだ。

そういえば、昔無人島の生き残り企画でよゐこがウツボを海で捕ってきて、丸ごと鍋にぶち込んで揚げていたのを思い出した。
私が小学生の頃は、この番組の海に潜って銛で魚を捕らえて食べるという企画に心を躍らせて、夢中でテレビにかじりついて見ていた。最近はそういうのも見ないが、コンプライアンスが厳しくなったせいなのだろうか。

カツオとウツボで腹も満たされたところで、銭湯に入ることにした。お昼すぎで、まだまだ日が沈むには時間がある。何より、思ったより暑くて汗をかいてしまったのでシャワーを浴びたい。

須崎から30キロほど原付を走らせ、土佐市までやってきた。「土佐ぽかぽか温泉」という所だ。Googleマップで検索したところ、ここが1番私に合っていそうだった。

汗でじんわりと濡れた上着を脱いで、シャワーを浴びる。まだ明るい時間だが、銭湯にはかなり人がたくさんいた。

中の温泉もさることながら、露天風呂がかなり広かった。なんと、屋外なのにちょっとしたヒサシの下にテレビが備え付けられていた。気持ちいい夕暮れの風に吹かれながらのぼせた体を冷やしつつ通販番組をぼんやり眺める。すごくいい。通販に興味はないが、目の前でただ通過していく情報を眺めているだけで楽しいのだ。

他にも、五右衛門風呂のようなたらいの掛け流し温泉(1人用がふたつあった)などもあり、屋外設備がかなり充実した銭湯だった。個人的にはかなり当たりの銭湯だ。

風呂上がりには牛乳が飲みたくなる。

食堂なども併設されており、ご当地メニューもちらほらあったがさすがにお腹いっぱいなので眺めるだけにとどめておく。
風呂上がりに、牛乳を買い適当な椅子に座ってTwitterを眺めながらゆっくり飲んだ。この時間のために風呂に入りに来ていると言っても過言ではないくらい好きな時間だ。

また、漫画のコーナーに「からくりサーカス」や「葬送のフリーレン」など、私好みの漫画がやたらに置いてあり、勝手に「ここの管理をしている人とは気が合いそうだな」などと考えたりしていた。

その後は、キャンプ場まで原付で移動した。本日泊まらせていただくのは「種崎千松公園キャンプ場」である。浦戸大橋のたもとにあり、太い松の木がまばらに生えている。

後ろにある浦戸大橋は交通量が多く50ccで渡るのにはなかなか勇気がいるタイプの橋だった。


夕暮れで交通量もまあまあ増えてきたタイミングだったので移動にはそれなりに気を遣ったが、なんとか無事に到着することができた。

謎のモニュメント。私にはどデカい斧に見える。

キャンプ場となっているのは松林の中で、外側は砂浜となっているようだ。かなり綺麗に整備された公園だったので、夏場は海水浴客が多いのではないだろうか。

そこまで広い砂浜ではなく、いい感じに裏ぶれている。


しばらく公園の中をうろうろと徘徊してみる。
なかなか面白い所だ。

御神木として崇められていても不思議でない程に大きなクスノキ。


公演をかるく一周して、大体の目処がついたのでテントを立てることにした。前回苦労したので長期戦を覚悟していたが、あっさりと立てることができてしまった。
おそらく、この公園の条件自体がかなりキャンプに向いているのだろう。地面が柔らかく、風も地形の関係であまり吹かないあたりとても設営がしやすかった。

ホームセンターで新調したペグでしっかり固定ができたので、テントがズレるなどのトラブルもなかった。買っといてよかった。

設営があっさり終わってしまったので、やや手持ち無沙汰である。もう一度砂浜に出てみると、先程はいなかった男子高校生のような3人組がいた。遠目にチラチラと見ていると、1人はどうやら膝を抱え、海の方を向いてたそがれていた。残りの2人もその子を慰めるために海へ来たようだ。うずくまる子の肩に手を回し、何やら語りかけている。

夕暮れの砂浜で思いがけず青春の1ページを目撃してしまった。私にはあのような青春はほとんど存在しなかったので羨ましく思う。


常夜灯のようなもの。菓子パンが供えられていた。

常夜灯の右側は水深が深くなっており、堤防沿いから釣りをしている人が何人かいた。夕まづめ狙いだろうか。

夕暮れ。足元の水面で小魚がパシャパシャやっていた。

日も暮れてきたので、夜ご飯を作ることにする。須崎で買ったそら豆とおむすび、ダイソーで買ったカップ麺が今晩のメニューだ。

人気のないベンチで調理をすることにした。


料理をしていると野良猫が寄ってきた。何かもらえると思っているのだろうか(猫に餌はあげられないのだ、ごめんね)


そら豆をゆでる。あとから思ったが、ベンチの上で火を使うのはマナー違反なので地面でやるべきだった。反省。

茹でそら豆はかなり美味かった。カップ麺はまあ…カップ麺の味だった(笑)


とっぷりと日が暮れたあと、やっと茹で上がったそら豆とカップ麺を食べていると何やらぬめっとした気配を感じた。足元に目をやると、なんとナメクジが這っている。さっきまでそら豆を茹でていたクッカーやどんぶりにも、ナメクジが這った跡がテラテラと光っていた。

私はそれを見て、すぐに調理器具を片付け始めた。しかし、既に手遅れのようで、ガスバーナー以外の器具はほとんどナメクジに這われてしまった後だった。

さらに最悪なことに、愛用のカバンにまで這い痕が……。
ナメクジたちはどうやら日が暮れて暗くなってきたので活動を始めたようだ。

カバンから剥がした。

あまりの憎らしさに、バーナーで火炙りにしてやろうかと思ったがさすがに思いとどまった。
虫の類は見る分、触る分にはべつに苦手ではないが、こいつらのようにパーソナルスペースを侵してくるタイプの虫は嫌いだ。

テントに引っ込んだ後、慌てて撤収したのでおにぎりを食べ忘れていたことを思い出した。テントの中でランタンをつけて、今度こそゆっくりと食べる。

寝床に侵入されたら本当にたまらないので、結局その夜はテントのチャックを念入りにぴっちりと閉めて寝た。



翌朝。前回と比べてもかなりよく眠れたため、前日の疲れもほとんどない。空は清々しく晴れ渡り、理想的な朝だ。

近くのコンビニまで歩いていき、朝ごはんとアイスを買う。朝からアイスを食べるというのは最高の道楽だ。今日は平日なので、先に就職した後輩に写真を送って優越感を味わう。後輩からは怨嗟のLINEが届き、私のアイスが倍美味しくなった。

甘酸っぱいラムネが美味しかった。

なんとなくアイスを食べ、なんとなく朝9時までのオンライン課題を提出し、なんとなく片付けをする。7時には目覚めたが、結局キャンプ場を出たのは9時半すぎだった。

11時半頃に道の駅633美の里にて昼食。今回は唐揚げ定食だ。

うどんに出汁が効いてて美味かった。刺身こんにゃくは不思議な味だった。

633美の里には、結構な人がおり、食堂も知らないおばさんと相席だった。前回2月に訪れた時はガラガラだったので、シーズンインした時の本来の姿ということだろう。コロナも明けてきたことだし、これから旅行業界もさらに活発になるのだろうか。

633美の里周辺はツーリングコースとしても有名なようで、イケイケなバイクの集団がいくつも原付を追い越していった。私もいつかはあんなバイクに乗ってみたい、と夢想する。


山を降り終え、平地に差しかかる頃に疲労が溜まってきたのを感じたので、再び道の駅で休憩をとることにした。

こちらには人があまりいなかった。

「道の駅今治湯ノ浦温泉」だ。しまなみ海道を前面に押し出した道の駅で、それぞれの島についての説明が書かれたボードなどが置いてあった。
よく眠って完全回復したつもりでいたが、やはり慣れないキャンプでは疲労が取り切れなかったらしい。中のベンチで1時間ほど仮眠をとってから再出発した。

そして、途中に一福百果でいつものみかん大福を買った他は特に寄り道もせず、家まで真っ直ぐ帰った。もう満足だったのだ。疲れ果てていたせいもあるだろう。どこかに寄っていこうという気持ちが湧かなかった。

ジューシーで美味かった。毎日でも食べたい。






感想のようなもの

行ったのは5月なのに、随分と投稿が遅くなってしまったのが申し訳ない。当時は梅雨入りする前なので、爽やかな気候で正直キャンプツーリングをするには1番いい時期だったのではないだろうか。今の気候(7月中盤)は昼間、原付に乗るのはなかなか厳しい季節だ。今回いい時期に行っておくことができてよかった。

高知県は前回の旅から冬のどこか寂しい街という印象が強かったが、今回の旅で初夏の活気ある場所という印象が強くなった。
道中、道路沿いの仁淀川でもカラフルな浮き輪やゴムボートで遊ぶ家族連れがチラチラと見えていた。行楽シーズンには香川や愛媛、時には大阪などからも観光客が来るのだろう。県外ナンバーがかなり目立つように見受けられた。

キャンプは私史上2回目なので、特に料理については勝手が分からずだいぶ見苦しいことになってしまった。デイキャンプなどで練習を重ねておこうと思う。

また、キャンプ場では仕事をやめてバイクで日本中を旅しているというおじさんに会った。
自分が広島に住んでいることを話すと、おじさんは今回、本当は広島に行きたいと思っていたが「広島サミット」の交通規制があるから目的地を変更したと話してくれた。

自分は広島の観光名所についていくつか話したあと、「広島もいいところですから、落ち着いた頃にぜひ来てください」と伝えた。おじさんはあれから広島を訪れてくれただろうか。楽しんでくれると幸いである。
もう会うこともないだろうが、こうした旅の中だけの出会いもいいものだな、としみじみ思う。


次の旅ではどんな出会いがあるのだろうか。

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