見出し画像

僕と怖いおじさん(芋けんぴ達の独り言) 第43話 怖い顔のおじさんと女子大生(4)

#創作大賞2023
#お仕事小説部門#お仕事 #移動販売・対面販売 #ラブコメ・恋愛 #おじさん #駄菓子・豆菓子・珍味・ドライフルーツ #未亡人・JK少女 #女子大生 #人妻

第43話 怖い顔のおじさんと女子大生(4)

「今日は買わんでもえぇからぁっ! この【紫芋けんぴ】を試食するだけでえぇからぁっ! こっちへ来い。こっちへぇっ!」とね。

 だからお客様達が皆ではないにしても高確率で。

「あっ、ははは」

「はっ、ははは」

「うっ、ふふふ」

「ふっ、ふふふ」と。

 家の怖い顔のおじさんへと微笑みながら。

「本当に仕方がないの、おじさんは」

「おじさんはいつも本当に強引だな」

「もう、おじさんは、本当に致し方がない御方」

「もう、おじさんはいつも本当に強引なのだから。(プンプン)」と。

 お客様達は、家の怖い顔のおじさんへと不満を漏らしつつも。

 俺【紫芋けんぴ】の試食を取りにくる。

 でっ、取りにくれば。

 家の怖い顔のおじさんから俺【紫芋けんぴ】を食品トング越しに手渡され、受け取ると。

 俺【紫芋けんぴ】の、この美しい容姿をじっくり、マジマジと見詰めながら。

 お客様達は、にへらと笑いつつ。

「……ん? 何だ? これ、おじさん?」

「なんかおじさん。これ、変な色をしているけれど大丈夫なの? 美味しいの?」

「何か不味そうだな」

「色が紫色しているから気持ち悪いなぁ。あっ、ははは」」と。

 俺【紫芋けんぴ】に対して中傷、悪態をついてくる。

「まあ、えぇから食べてみぃ。この【紫芋けんぴ】の容姿は、余り良くはないが。味の方はえぇから食べてみぃ。身体にもほんまにえぇから。ほら、ほら」と。

 家の怖い顔のおじさんは俺【紫芋けんぴ】のことを中傷、侮っているのか、褒め称えているのか。

 どちらなのかは俺【紫芋けんぴ】にも分かり難いけれど。

 家の怖い顔のおじさんの強引とも言える急かしに対して、お客様達は。

「う~ん、仕方がないなぁ」

「仕方がないね」と。

 各自各々が言葉を漏らしつつ。

「本当に大丈夫なの、おじさん?」

「本当に美味いのかな、おじさん?」

「本当に美容や身体に良いの?」と。

 先程家の怖い顔のおじさんの、俺【紫芋けんぴ】の商品説明を聞いたお客様達は。

 各自各々が自身の首を傾げながら、半信半疑で。

 家の怖い顔のおじさんへと問う。

 でも家の怖い顔のおじさんは老若男女問わず。

 俺【紫芋けんぴ】の事を何度怪訝な表情で問われても。

「えぇ、から、それ食ってみぃ。マジで美味けぇ」と。

 家の怖い顔のおじさんのはブルドッグ顔で、容姿端麗とは言えれない不細工な顔をしてはいるけれど。

 お客様達が大変に好感が持てる満身の笑みを浮かべる事が可能な、商売人だから。

 家の怖い顔のおじさんからの強引とも言える、俺【紫芋けんぴ】の試食に関しても。

 この満身の笑みを見らされ、急かされると。

 お客様達も致し方がないと諦め。

 俺【紫芋けんぴ】を自身の口へと入れ──。

〈ガブリ!〉だ。

 そして〈ムシャ、ムシャ〉だ。

 俺【紫芋けんぴ】を自身の口へと入れ。

 お客様達、各自各々は、自身の口から食音立てつつ俺を食らうから。

「うぎゃっ! うぎゃっ! 痛い! 痛いぞ! マジで痛いじゃないか! お客様達よぉ」と。

 今度は俺【紫芋けんぴ】の口から絶叫だ!

 不満だ!

 頼むから俺【紫芋けんぴ】の肢体をガジガジと齧りつかないでくれと。

 俺【紫芋けんぴ】が、自身の顔を歪めながらお客様達へと不満と嘆願を漏らし始める。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?