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爆死するパート6

パート6ですわ。こんなしょうもないことよくここまで続けられますね、と自分に言います。

別れてから3ヶ月ほど。この間に何度かお会いしましたが、絶対に私の名前を呼んでくれませんでした。
え、名前忘れたんですか?と思うぐらいに、名前を呼んでくれないのです。
明らかに呼ばないようにしているのがわかるのです。いや、呼びたくないのがわかるのです。
私はそれが毎度辛くてですね。LINEですら名前を呼んでもらえないもので。
「前はあんなに呼んでくれたのになー。また呼んでもらえなかったー」と。

奴隷にすらしてもらえなかったので、私言いました。
「もう1回、名前を呼んでくれたもう」

「え?」
なんで?というような顔をしてました。いや、わかるやーん。

「私の名前を呼んでください」

少し困った顔で私の名前を呼んでくれました。3回も呼んでくれました。
あの頃の声で。困った顔こそしていたものの、あの頃の目で。1回目は「?」が付いた呼び方で。2回目、3回目は呼び掛けるように。

耳にこびりついてらぁ。

「あのとき、最後に言ったし、手紙にも書いたけど、気持ちは今も変わっていないぬら。大好き。これからもずっと大好き。一生愛してる」

返事に困っておりましたわ。私にはそう見えましたわ。

もう1回。
「ずっと大好き。一生愛してるよ」

「ほんとに一生愛してそうだな」とおっしゃってました。嫌そ~。

あなたは3ヶ月かからずに、私のことを忘れましたけどね。あなたにとっての一生は3ヶ月なのですか?いや、違う。
私が一生を3ヶ月に短縮させてしまったのです。

「ほんとに好き。大好き。一生愛してる」

「ちょっと怖いな」とおっしゃられました。続けてこうおっしゃいました。
「包丁持って現れないでね」
え?……ええええ!?
「そんなことすると?」
「やりそう」

ですってよ!ですってよ!

前はね、「うん。一生大好き」ってあちらもおっしゃってくれていたのですよ?それが今や「包丁持って現れないでね」だってさ!おったまげよ。

そういえば、こんなこともおっしゃっとりました。
「あのときはおかしいぐらい好きだったからな」
って。

「あのときは」「おかしいぐらい」「好きだったからな」
ねぇ?あのときは&おかしいぐらい&好きだったからな、ですよ。なんか、この、なんというか、わかります?
あのときが間違ってたみたいな言い方というか、今考えれば変だったなみたいな?正常な判断ができてませんでしたみたいな?なんせ、なんせ今となっては全否定みたいな感じ。
意味わかっておっしゃっているのかな?全ての言葉、それらの意味を、それらの言葉が持つ意味を理解した上でおっしゃっているのかな?おっしゃっているのですよね、きっと。

しかしね、やっぱり優しい!と思いました。
あたしね、エアハグをしたんですよ。あたしとしては、「ハグしよ」っていう意味じゃなくて、抱きつくことができないから、エアハグをしたんですよ。エアで我慢しようと思って。
エアハグをしたらね、次の瞬間ハグしてくれたんです。あちらから抱きついてきてくれたのです。
あたし、そのとき、カッパを着て、カバンを持っていたのです。
「ちょ、ちょ、ちょっとお待ちなすって!」
あたし、慌ててカッパを脱ぎましてね。急いでカバンも下ろしまして。
「そこまでしなくてもいいよ」と。
「いやいや、ちゃんとしたい」とあたし。
「今日、お風呂入ってないから臭いよ?」
あなたが臭かったことなど1度もないのです。今までに嗅いだことのない香り、いつもいい香りがして、安心できる香り。あなたの体温を感じて、息遣いを耳元で感じて、回された腕は力強く、それでいて優しくて。安心や落ち着きを取り戻せる。何よりも癒してくれるのです。あなたに包み込まれることが。

ギュッと。あのときみたいに。嫌がりもせずに。嬉しかった。ああ、このまま。このまま。どうかこのまま。
あのときみたいに。おかしいぐらいに好きだったあのときみたいに。

「懐かしい香りがしたわ」

そうおっしゃられました。あたしの香りが大好きだったのです。今は大嫌いに変わっているのでしょう。

では、さようなら。
「先に帰って」とおっしゃられました。
あたしが帰るところを確認してからじゃないも帰ることができなかったのでしょう。
恐らく、あとを付いてこられると思ったのではないでしょうか。
あたしはすでに恐怖の対象になっているのですよ?包丁持ってくるかも、そう思われているのですよ。後ろから来られると怖いですものね。
ははは。

帰りました。泣きながら。吐いて。体を震わせながら。帰りました。

さぞ哀れに見えたでしょう。惨めで気持ち悪くて、見れたものではなかったでしょう。前なら、そんなあたしの姿を見れば、あちらも泣いてくれていたのに。優しさの塊のような表情をして、涙を拭ってくれたのに。
不思議な生物を見る目であたしのことを見ていたなー。きっと、永遠に、あの方はあたしのことを理解できないのでしょう。
あたしがあの方のことを理解できていないように。

愛を抱え込んだまま、吐き散らす。
忘れることのない数十分の会話。
あの方はすでに忘れているのでしょう。はは。

爆死する。

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