コスプレをする生活。③

※注:ここでいう「コスプレ」はアニメキャラを筆頭としたキャラクターになりきるものではありません。ちなみに筆者はその定義のコスプレをしたことはありません。

こんばんは、焼却炉です。書き始めると文字数多くなりがち添削できない人間なのがバレてしまうなとぼんやり思う日々です。

話を本題に戻します。


あいまいな境界線。


「もういいんじゃない?」
最初にそう言ったのは家族だった。確か20kgくらい体重を落として、70kgをもうそろそろ切るところだったと思う。

「もうそれ以上痩せなくていいんじゃない?」

何を言ってるのか分からなかった。標準と比べて体重はまだまだ重いし、別に不健康な痩せ方もしていない。何でそんなことを言うのか分からなかった。

「また服買ってきたのか?」
「そんなに化粧品増やしてどうする?」
「また出かけるのか?」

働き始めて生活費を入れた上で、自分のお金を使っているだけなのにそう言われるようになった。

「痩せたらどうだ?」
「たまには女の子らしい格好をしたら?」
「そろそろちゃんと化粧くらい覚えないと」
「たまには家から出なさい」

そういっていたはずの家族は、言う通りにした途端に真逆のことを言うようになった。何が正解なのか分からなかった。

体重を43kg落としてからは、より言われるようになった。心配してくれているのだとは思う。でも、余計なお世話だった。全く食べなくなったわけではないし、むしろ朝ごはんは人の二倍くらいの量を食べている気がする。運動だって継続しているし、体の調子も良い。いくらそう訴えても、「骨と皮だけになりそう」、そう言われている。

その点、理解のある友達と一緒に居るのは良かった。私の話を聞いてくれて、頑張ろうと思ったと言ってくれた。一緒に服を選べるのが嬉しいと、嫌な顔ひとつせずに買い物に付き合ってくれた。化粧を頑張ってする度に一つ一つ褒めてくれた。そういう友達だけが、私の女としての形を具体的なものにしてくれている。

でも、その一方で、今度はジーンズやパンツ等を履くことに怖さを感じるようになった。もちろん仕事では動きやすさ重視だし、自分の性別なんぞ関係ないのでパンツスタイルだが、休日、友人と出かける時、1人でカフェに行く時、そういう時にパンツスタイルだと、なんだか自分が前の自分に戻ってしまうのではないかと、謎の恐怖が付きまとうようになった。

それでもちょっと気分を変えたかったし、ずっと可愛い服を着続けるのも意外と疲れるものだから、とある友人と会う時にジーンズを履いていった。

「やっぱりそっちの方が(本名)らしいよ!」

私らしいとはなんだろう。いや、もちろん昔からの友人だから、ジーンズばかり履いていたイメージがあったんだと思う。それでも色んな服が着れるようになったことを、化粧を楽しいと思えるようになったことを、話していた友人にそう言われてしまうと、寂しい気持ちになってしまうのだ。

可愛い服も着たい。かっこいい服も着たい。

でもかっこいい服を着た瞬間に私の今作りあげている形みたいなものが崩れてしまうんじゃないかと。そんなことばかり思っている。その一方で、ジーンズやスラックスを履く度に、いつも通りの自分だと、らしいと言われる自分だと、ぼんやり思ってしまうのが、そう思う度に可愛い服を着る私がまるでコスプレをしているかのように感じてしまうのが、苦々しくてしょうがない。

続きはまた明日。


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