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「小説」 ひと夏の恋

12年前の夏の終わり
海に佇む鳥居が有名な場所で
仕事の研修会があった
研修会の後、
バーベキューで親睦を深める交流会があり

その人に声をかけられた

「可愛いね、この後一緒に飲まない?」

初めて会う人。

「あなたの職場の◯◯さん、あの人にお世話になってて」
〇〇さんは、部署は違うけどたまに一緒に仕事をする人。その人の知り合いだと言う。

関係性はなんとなく理解したから、OKして。


会が終了して、バーに行くも、あいにくclose。

急遽、居酒屋に変更。


身長は170cmいくかいかないかくらい。

目が細くて眼鏡をかけてて。

聞いたら歳は7つ上。

元々年上好き。

お兄ちゃんが欲しかった私(現実は2つ下の弟が1人)

恋愛経験の少ない私。

声をかけられただけでもドキドキで。

見た目もわりとタイプ。


居酒屋へ移動中、もう手を繋いできた。

人目につかない階段の踊り場で

いきなりキスを迫られ

突然のことに、一瞬拒否。

え? と戸惑うも

咄嗟に

「結婚してるんですか?」と問う。

「結婚してるよ」と、その人が応える。

帰るところがあるんだ と思って

キスを受け入れた。

何かあっても、これ以上は続かないから。

キスで私の緊張が緩んだことに気づき

その人はフッと笑った。


居酒屋で暫く過ごした後

「お手洗い、行っておかなくていい?」と促され

お手洗いから帰ってきたら

すでにお会計が済んでいた。

スマートな対応。


散歩をしようと言われ、外に出た。

お酒にも酔い、この状況にも酔い

指を絡めて歩く。

この駐車場に車を停めてる と言われて

駐車場に入った途端

キスの嵐

もう私の方が夢中

夜中だからトラックが何台も通っている。

けれど、そんなことも気にならない。

「トラックの運転手が見てるよ、そろそろ…」
と、その人に言われても終わりたくない。

2人の世界に浸る

ひとしきりキスを楽しみ

その人の車の所へ

トヨタの86

車の中には入らなかったけど。


研修会のあったホテルへ戻った。

けれど、まだ部屋に戻りたくない。

ソファが置いてあるラウンジで

またずっとキスをして

唇がなくなってしまうんじゃないかと思うくらい


気づいたら3時

明日もあるし、帰らなきゃね と言って

お互い、それぞれの部屋へ。


次の日も、朝から研修会。

その人は講師として、講義を始めた。

昨日(さっきまで)のことがなかったみたいに

しっかり話をしていて

私は尊敬の眼差しで見つめる。


研修会はその日のお昼まで。

午後は新幹線に乗って帰らないといけない。

離れるのが辛くて、泣いているのが恥ずかしくて

窓ガラスに顔を向けて泣いた。


家に帰っても、また会いたくて

連絡した。

楽しかったです。
良かったら、またお会いできると嬉しいです。
と。

また会えることになった。


その人は島根の人で、遠く離れているから

中間地点の下関で待ち合わせ。

角島大橋を渡って、綺麗な海を見て

ランチは海鮮を食べて

百貨店に行ってウインドウショッピングをして

夕方、また別れるのが辛かった。


新幹線に乗って帰って

家で、暫く考えた。


私はフリー。

でも、その人は結婚している。

私、とっても好きになってる。

だめだ 

好きになっちゃいけない

もう、終わりにしなきゃと思って

その人に連絡をして、私の恋は終わった




トップの写真は、chape187さんの角島大橋の写真を使用させていただきました。
ありがとうございます。




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