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【おとなりさんちの話】外あそびの会@みやき町

「遊ぶ」ということに、どういったことを思い浮かべるでしょうか。私たち大人はきっと、小さい頃から遊びを通して成長をしてきた。では、今のこどもたちは?「遊ぶ」ことには、どのような意味があるのだろう。今回は、こどもたちが遊ぶことをまんなかに置いて活動をしている居場所の話をしたいと思います。

佐賀県のみやき町で月に1回、こどもが外で遊ぶ環境をつくるために場を開いている「おとなりさん」がいる。時間になると、一面が土でできた広場に大人もこどもも集まってきて、キャンプで使うようなコンパクトなテントと机を広げる。ちなみに、この日は雨予報だったのだが、関係なく雨天決行。(中止するのは雷の時だけらしい。)あいにくの雨に、冷たい風が吹いていた寒い日だったが、こどもたちは「さむい〜」と言いながら、どこか嬉しそう。外遊びの会では、敢えてこどもたちの「遊ぶ」ことを大事にしているという。

少し、遊びについて考えてみる。
私たちは「遊び」というと、例えば、ドッジボールとか、テレビゲームとか、パズルとか。そんな名前のついたものを思い浮かべる人が多いと思う。こどもたちを遊ばせようとすると「〇〇やらない?」とよく声掛けするものだ。しかし、本来、「遊び」はこどもたち自身が主導し、組み立てていく活動やプロセスのことを指し、機会があればいつでも、どこでも行なわれるものだという。つまり、「遊ぶこと」の根底にあるのは、「やりたい!」と思ったことをすること*。(*引用:一般社団法人TOKYO PLAY)確かに、遊具の無い広場や自然の中でも、こどもたちの遊びは繰り広げられる。土に何かを描いてみたり、川をのぞいて何かを探してみたり。実は、記憶をさかのぼると私たちにも、そのような経験があるのでは無いだろうか。そのように五感を使い、自分の意思で外の世界に「どうなるだろう」と働きかけをしていく「遊び」によって、実は知恵や体力や想像力が鍛えられ、自分で決めていく力が養われていくらしい。

だから、ここでは敢えて大人たちは何も言わず、ぐっと言葉を飲み込んで、こどもたちが探求している遊びに口を出さないように心がけているという。
「服が汚れたりしそうになると、つい、止めそうになってしまうんだけどね〜そこを、ぐっと我慢しています。自分のこどもじゃないから、笑って見守れるところも大きいかな。」と代表の鶴田さんは話す。

ある雨の日は、こんな感じで地面にべったり体をつけて楽しんでいたらしい。

この日は、寒空の下で「鬼ごっこしようよ〜」と大きな声で呼びかけるこどももいれば、黙々とテントの下で糸かけをして遊んでいるこどもも。もちろん時間とともに、そんな遊びも徐々に変化していく。

大人は寒くて走る元気は無かったけれど、こどもたちは元気。
糸掛けをしながらテントの下で、みんなと話をして盛り上がっている女子たち。

おとなりさんは、そんな様子をそっと見守りながら自分自身も一緒に遊んだり、話に入って楽しんでいたりする。親戚の人みたいに「〇〇さん」と名前で呼び合える関係性が素敵だ。

集まった材料でお菓子を作るカードゲーム。一緒に遊んでいると、こそっと「私ね、お菓子をつくるのが得意なの。」と教えてくれた。大好きで、お菓子を作ってお母さんと一緒にSNSにアップしているらしい。「こんなのも作れるんだよ」と写真も見せてくれた。

いつの間にか、部屋の中に糸をかけて、またいで遊んだりもしていた。

あまりの寒さに、体が悲鳴をあげそうになってきた大人たち。すると、「スープをつくろう」と大きなお鍋が出てきた。中身は家の残り物野菜たち。水とコンソメを入れて、ぐつぐつ煮込んでいけば特性スープの完成だ。「冬の時期になると、こうやって持ち寄りで作るんです。こどもたちも、この味が大好きみたいで。家に帰っても時々、あのスープが飲みたい、と言うんですよ。」と大人のみなさんが教えてくれた。

最初は「野菜は嫌だ〜」「熱い!」と叫んでいたものの、時間が経てばお鍋はあっという間に空っぽになった。

「寒い〜」「あつい〜」「やってみたい!」「鬼になって」「これで遊ぼう」そこにいるだけで、こどもたちの様々な声が聞こえてくる。遊んでいるこどもたちは、感情が溢れていて、大人でも想像できないことを、やっていることもあるという。

例えば、砂場では砂を使って何かを作るのではなく、自分が埋まって遊んでいたことがあったそう。「自分が埋まる発想は大人にはなかったです。確かに、これは海に行かないとできないですよね。あとは、一人ではできないですし。」と思い出して笑う、おとなりさんたち。

夏にはビニールシートを引いて、そこに水を入れ、お互いに掛け合っていたりするそう。よく見ると、体はびっしょり濡れてしまっているが、そんなことはお構いなしなようだ。気がつくと、こどもたちが自分で考えてやってみていることが多いんだとか。

元は、みやき町で子育てをし始めたお母さん同士が、こどもたちにとって思いきり遊べる場所を作っていきたいという思いでスタートした、この活動。
1人で公園に連れて行くのはちょっとしんどい。虫が苦手。汚れるのは洗濯物が増えるから大変…。つい「あぶない!」「ダメ!」と口を出してしまう。それなら、時々集まって一緒に遊んだら、いつもより心に余裕をもって子どもたちを見守れるんじゃない?と始まったのが外あそびの会だった。

想像するとこどもたちを取り巻く環境や私たちの意識は昔に比べて変わってきた。遊んではいけない場所が増えて、誰かに許可を取らないといけないことが増えた。お父さん、お母さんも働いているから、習い事や塾に行って、隙間を見つけてゲームをすることが当たり前になってきた。

だからこそ、こどもたちが本来持っている「やりたい!」を守るためにこういった場所で「おとなりさん」として見守り続ける必要性を感じているのかでしょう。目の前のこどもたちの「やりたい!」を守れているのか、私たちも今一度考えたいですね。

右から鶴田さん、高津さん、井元さん夫婦

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外あそびの会
おとなりさん:鶴田さん、高津さん、井元さん
おとなりさんち:みやき町ボランティアセンター
毎月1回(第3土曜日)13:30~14:45
無料
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Instagramでは写真を、noteでは文字を中心とした読みもので「こどもたちのおとなりさん」を発信していきます。
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こどもをまんなかに、ほっとできる瞬間がそばにある社会を皆んなで緩やかにつくっていきませんか。

編集・書き手・写真 : 草田彩夏(佐賀県こども家庭課 地域おこし協力隊)

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