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【おとなりさんちの話】子どもの居場所『じゃんぷ』@唐津市

唐津市の西側に位置する、西唐津エリア。「唐津」と聞くと、福岡県にも近く、どことなく県外からの人も多い印象を受けるが、ここは新興住宅街というよりも、元より住み続けている人が多い地域だという。こどもたちの暮らしぶりも、いわゆる都会的なこどもたちの様子とは少し離れているようだ。
今回は、そんな地区の公民館で開かれているこどもの居場所の様子をお伝えします。

到着すると、こどもたちが既に沢山集まっていた。この日は、冬の寒空だったにもかかわらず、外に駆け出していく低学年のこどもたち。

「何をしにいくの〜」「お宝探しだよ!」近くの神社まで行くらしく、あっという間に駆けていった。

公民館の中に入ると、こどもたちの年齢があまりにも広くて驚いた。先ほどいた子たちが小学校1・2年生くらいだったが、こちらでは中学生の男の子が既に何人か集まって問題集を広げていた。どうやら明日から試験で、勉強をしなくてはいけないらしい。一方で、高学年の女子たちはお菓子を前に女子会をしている。スピードにはまっているらしく、ものすごい速さで何回も繰り返す。

「社会なんて80個以上暗記しなくちゃいけないんすよ〜、本当にムリ。」と愚痴を言ってくれる中学生男子たち。遠い記憶だけれど、気持ちは分かる。
何回も繰り返して遊ぶ高学年の女子たち。

久しぶりにふらりとやって来たり、時には、これまで見たことがない子も来ていたりするよう。こどもたちにとって、第二の家のような場所なのかもしれない。スタッフであり、代表を務める田中雅美さん(以下、田中さん)は2020年からこの場所を開けている。元々は、放課後児童支援員をしていたが、学校に行くことができなかったり、何かしらの家庭の事情を抱えているこどもを個別にみている内に、徐々にこどもたちの居場所の必要性を感じていったらしい。また、放課後児童クラブでは、安全管理を中心に守らなくてはいけない規定が多く、こどもが伸び伸びと過ごせないと感じたことも背景にあったようだ。

まる4年間、ずっと続けてきているから。どんな学年のこどもであってもほとんどの顔を知っていて、まるで地域のお母さんのように「久しぶりじゃん」「え!今日は寄っていかないの?」なんて話しかけてくれる。ある子には「え、今日は学校行ったと?すごかやん。」と、なんでもお見通しだ。

久しぶりに来たこどもに「え、イケメンになっとる!」と満面の笑みで話しかけるスタッフの田中さんと牧山さん。

動画を見ながら、一人で黙々と勉強をしている男の子。ひと昔前は勉強を全くせずに、嫌っていたという。高学年になって、自然とやる気になったのか、やらざるを得なくなったのか、大きな変化があったんだとか。

「本当に変わったよね」と横で本人が勉強する姿を見守る田中さん。

多世代で、多様なこどもたちがいる場所。確かにこどもたちと話をしてみると、その多様さがわかる気もする瞬間があった。しかし、こどもたち同士は大人が考えているほど、その「多様」さを区別していなくて同じ友だちとして一緒に楽しく自分なりの関わり方をしている。「大人が管理をしすぎているが故に、区別をすることがあるけれど、こどもの世界にはそんな線引きは無いんですよね。」と田中さんも話す。

みんなでゲームを貸し借りしながら遊んでいた。「僕は、カセット持ってないから貸して」
続けて「絵を描くのが得意なんだよ」と伝えてくれた男の子たち。「すぐ近くだから」と、なんと一度家に取りに帰り、見せてくれた。

こどもたちの世界は至ってシンプルで、仲良くなるかならないかに、敢えて言葉にするような理由なんてないのかもしれない。

「またね〜気をつけてね」と見送る田中さん
「さようなら〜」と帰ったと思ったが、玄関を出るとまだ遊び続けていたこどもたち。
「気持ちは分かるんだけどね〜ほどほどにして帰るんだよ〜」

こどもたちが自分たちの世界を作ることができるのはやっぱり「こどもたちのおとなりさん」がいるからだ。

「学校でも家庭でも、今は誰かに管理されるような感じがするでしょ。自分らしくいられないのかなと思うんです。誰かに合わせて自分をつくっていくことが多いというか。だから、ここでは、ありのままの自分でいてほしいですね。」スタッフの皆さんは、こどもたちに向けて、このようにメッセージを送る。「ありのまま」とは、どんな自分を指すのだろう。居心地がいい、という状態は、その時の自分自身が好き、ということと近しいのかもしれない。

左からさるわたりさん、まきやまさん、たなかさん

子どもの居場所『じゃんぷ』は西唐津以外にも、鏡地区(唐津市鏡山添1682  山添公民館)、鬼塚地区(唐津市養母田鬼塚2-23 鬼塚区公民館)でも開いており、それぞれの居場所でお惣菜を販売して運営費用にする工夫をしています。※お迎えに来たお母さん、お父さんとの会話のきっかけにもなっているようです。

※子どもの居場所『じゃんぷ』は西唐津は2021年度より日本財団の助成を受けていましたが、2024年度からは助成期間を終え、自立して運営できる状態を目指しています。

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子どもの居場所『じゃんぷ』
おとなりさん:たなかさん、さるわたりさん、まきやまさん
おとなりさんち:佐賀県唐津市二タ子1丁目9 二タ子公民館
週3回(月曜日・木曜日・土曜日(不定期)) 13:00~19:00
▶︎フェイスブックページはこちら https://www.facebook.com/karatsuibasho
▶︎日本財団第3の居場所ページhttps://saga-mirai.jp/2022/11/01/jump-nishikaratsu/

Instagramでは写真を、noteでは文字を中心とした読みもので「こどもたちのおとなりさん」を発信していきます。
▶︎アカウントはこちら https://www.instagram.com/kodomo.otonarisan/

こどもをまんなかに、ほっとできる瞬間がそばにある社会を皆んなで緩やかにつくっていきませんか。

編集・書き手・写真 : 草田彩夏(佐賀県こども家庭課 地域おこし協力隊)

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