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【おとなりさんちの話】なべしまこども食堂@佐賀市

佐賀市の鍋島(なべしま)地域で、約1年前に児童発達支援*の事業所が開所した。(*児童発達支援とは、障害のある未就学のこどもを対象とした児童福祉法に基づく通所支援のひとつ)

>障害者支援をする事業所が、こどもの居場所として開いている例は以前にもご紹介をしています。興味のある方はどうぞ。

通常の事業所であれば、通所するこどものみが利用する場になっているが、ここは異なっている。「障害があっても、なくても、同じこどもだから。こども同士が交わる場になってほしい」と、こどもの居場所としても地域に開いている。入り口の看板にも「児童発達支援・こどもの居場所」と並列して書かれてあるくらいだ。こどもの居場所として具体的には、月に1回のこども食堂を実施し、誰もが来られるきっかけづくりをしている。

「普段は特定のこどもを支援をしている場所なのに、”誰もが”来やすい場所って?相反するのでは?どのように作っているのだろう。」そんな疑問を持たれた方は、ぜひ読み進めてみてください。

土曜日のお昼前、平日ではないにもかかわらず、既にこどもたちの賑やかな声が聞こえてくる。この日は、12月だったので入り口には、こどもの背丈をゆうに越えるクリスマスツリーが飾ってあって、大人でも思わず心が踊ってしまう。もちろん、こども食堂なので、作られた食事(お弁当)が来た人たちに渡されているようなのだが、それで「さようなら」ではなく、「ゆっくりしていく」場になっているのが印象的だ。

お弁当はSNSから予約をする仕組みとしている。

普段から発達支援を通してこども達と関わり、喜びそうなものや、興味関心を示しそうなものを知っているから。ここでは、季節に合わせて、こどもたちの心を掴むようなものを用意する。

この日は、近くの公園で拾ってきた枝を土台にして糸を巻きつけるとツリーになる、工作を用意。
うまくできない時には、隣にいて、スタッフの皆さんが手伝ったり声かけしたりする。

未就学のこどもだけではなく、時には来ている保護者が「かわいい」と言って楽しそうに取り組んでいたり、中学生も「やってみよう」と手に取ってみたりしていた。完成した時には、みんなとても嬉しそうで「できた!みてみて!」とか「玄関に飾ったらかわいいわよね。」と見せてくれる。満足するものができた時の喜びは、周りの人と一緒に、その気持ちを共有したくなるものだ。

「みてみて!」

ご覧の通り、椅子も机も全てこどもサイズ。だから、こどもの目線になった時に、居心地が良いのだ。トランポリンがあったり、遊具があったりするので、こどもたちは走り回ったり、飛び跳ねたり、ここで自由に遊べる。まるで公園の光景を見ているみたいだ。

また、居心地が良い理由には、子育て中の保護者や若い世代のスタッフ(=おとなりさん)が多く、こどもの目線を自然と尊重していることもあるように感じる。

ボランティアとして、この日手伝いに来ていた大学生。いつもは、近くの小学校で高学年のこどもたちとバスケをすることがあるという。ここに来るこどもたちは低学年や未就学が多い。「いつもと違う年齢のこどもたちと接すると、かかわり方が変わるなと感じます。楽しいです。」と率直な思いを伝えてくれた。こどもたちも、「お兄さん」の感覚で気軽に話しかけられる。

その場のこども達の声に耳を傾けて手伝いをしていく大学生。

スタッフの池田さんは自身のこどもも未就学で一緒に遊んでいた。だから、周りから見ても「少し話を聞いて」と言いやすいのだ。やはり同世代と話しをすると「分かってもらえる」感覚になるのだろうし、子育てをする同じ仲間意識を持って安心できるのかもしれない。

スタッフの池田さん(右)と話を弾ませる保護者

こどもたちの工作がひと段落して、保護者の方と話をするスタッフの福市さん。明るい表情で、耳を傾けていく。

保護者と話をする福市さん

どのスタッフの皆さんも、こどもや保護者との距離がとっても近い。ボールが飛んできたら拾って一緒に遊びに溶け込んだり、こどものリアクションに「いいね」と笑顔で微笑みかけたり。保護者の方とも既にご紹介した通り、同じ目線で話をしていく。こどもにも、大人にも積極的にそこにいることを「肯定していく」ような力があるように感じる。「来てくれて、居てくれて、ありがとう」と。そうやって生まれた温かい場によって、来た人たちは、ほくほくした気持ちになりながら帰っていくのだと思う。

「さようなら」と元気に帰っていく親子

毎回こども食堂を実施することをSNSで発信すると反響が大きいようで、定員はすぐに埋まってしまうという。スタッフの池田さんや福市さんは「本当はもっと多くの人に届けたいな、と思ってしまうのですが。(私たちに)できることを、ですね。」と優しく微笑んでコメントする。

「こどもたちには、ただいま〜!おかえり〜!と家族のように、ここは自分の居場所なんだ、いていいんだ、と思ってもらえる場所、人でありたいと思っています。たわいも無いおしゃべりや、悩みも聞きたいし、一緒に遊んだり、こども同士で遊ぶ様子も見守ったりしたいです。お父さんやお母さんたちは、なんでも一人で背負わず、頼ってもらえたらと思います。ほっと一息つける、力を抜いて安らげるような場所でありたいです。ぜひ遊びに来てくださいね。」

どんな人であっても、自分を理解してくれたり、受容してくれたりする存在は大きい。多様さを理解しているからこそ、「違うよね」ではなくて「分かるよ」と大きな声で伝えているのだろう。だから、どんな人でも来たいと感じるのかもしれない。

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おとなりさん:池田さん、福市さん、スタッフのみなさん
おとなりさんち:佐賀市鍋島4-1-36
開催日はSNSで随時公開します。
月1回土曜日 11:00-13:00 予約制
高校生以下無料、大人200円
▶︎なべしまこども食堂のアカウントはこちらhttps://www.instagram.com/link_ids/

Instagramでは写真を、noteでは文字を中心とした読みもので「こどもたちのおとなりさん」を発信していきます。
▶︎アカウントはこちら https://www.instagram.com/kodomo.otonarisan/

こどもをまんなかに、ほっとできる瞬間がそばにある社会を皆んなで緩やかにつくっていきませんか。

編集・書き手・写真 : 草田彩夏(佐賀県こども家庭課 地域おこし協力隊)

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