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【おとなりさんちの話】なかよし川良っ子@武雄市

「地域のこどもたちを地域で育てよう、見守ろう」というメッセージは、最近の子育てやまちづくりの文脈でよく聞くことが多い。しかし、両親共働きの世帯が多い今のご時世、どうしたらそんなことができるのか、と絵に描いた餅のように思う人も少なくないのではないだろうか。

佐賀県の武雄市では、昔から続く自治会の皆さんで「自分たちの地域のこどもを自分たちで見守ろう」と活動をしているこどもの居場所がある。こどもたちの側に居続けようとしている人がいることを、是非知っていただければと思います。

地域にある、自治公民館。小学校区よりもっと小さい、自治会というエリア単位の公民館だ。ここでこどもの居場所づくりをしているのは、昨年まで区長を10年以上担ってきた中村豊子さん(以下、中村さん)だ。この地域の(特に老人会)メンバーが放課後に小学校に出向き、勉強をみる活動が発端だったそう。「最初、近くの武雄小学校で学習の手伝いをしていた対象が小学校3年生だけだったんです。そこで、他の学年も見られないかなと公民館で見守りをスタートしたことが、きっかけでした。」2016年から始め、一時コロナで休止をしたものの、その活動が現在まで続いているという。

「家でやるより、こっちで宿題をしちゃった方が楽だから!」と宿題に取り組むこどもたち。

この地区は、家と家の間に田んぼがあるような場所だったところ、今では隙間がないほど新しい家が建っているのだとか。こどもたちが放課後に過ごせる場所が無くなってきており、地域で場所を開放する必要性を感じているという。「最近は花火を見るときにも、近くの建物があってみられないこともあるんだよ」とこどもたちも教えてくれた。

しばらくすると、来ているこどものお母さんたちもやってきて、こどもたちを見守る姿も。「あれ?今日は◯年生が少なかね。何かあるのかな。」「◯ちゃん、帰りはどうすると?家まで送っていこういか。」とみんなへの温かい眼差しから、その気遣いが伝わってくる。「私はここの地域で育ったわけではなくて。だからこそ、こういう地域の取り組みは、余計に大事にしたいなと思っています。自分たちのこどもを自分たちで見守らなくちゃ、と思うんです。」と話す。

「すごい!賞をとったんだね〜」とランドセルから出した賞状を見て一緒に喜ぶ
地域で実施している「こども会」のチラシも配布する

以前は地域の保護者から構成される「こどもクラブ」があったようだが、様々な意見があり、無くなってしまったそう。今では、中村さんを含めた自治会が「こども会」と名前を変えて引き継ぎ、季節ごとのイベントも開いている。こどもたちも「秋にはね、BBQをしたんだよ」と教えてくれた。このようなイベントがあると、やっぱりこどもたちは楽しみにして集まってきてくれるのだとか。「本当は、頻繁に実施したいくらいですが、まずは負担なくできることからよね」と中村さんはいう。

自治会の皆さんは普段からこどもたちを見守る意識が強く、歩いているとすれ違う大抵のこどもたちの顔を覚えているのだとか。「やっぱり、よく挨拶をしてくれる気がします。小学生だったこどもが、高校生になって挨拶をしてくれた時もあって。嬉しいですね。」と同じ自治会メンバーの久本さんが教えてくれた。

元民生委員でもある久本留美子さんは、学校に行ったときに手を振ってくれるこどもたちがいて嬉しかった、と話をしてくれた。

この日は、夕方になっても女の子が多かった。「他のこどもたちは近くで遊んでいるんじゃないかな。」自治会メンバーの柳瀬さんは、近くまで見守りをしに行く。案の定、こどもたちは近くの川で釣りをしていたり、お堂でゲームをしていたり。そんなこどもたちを見かけては元気に挨拶をしていた。

見守りをしに行く柳瀬さん

帰る時間に近づくと「今日は音読の人いるかな?」と声を掛ける。「今日はいいや」「私は音読の宿題はないんだよね」などそれぞれの本音がちらほら聞こえてくる。

帰る時間になると、自分たちで掃除を始めるこどもたち。

なかよし川良っ子では、帰る時、地域の皆さんにしっかり挨拶をする、というルールがある。少し恥ずかしい気持ちもありながら、一列に並んで、高学年を中心に「ありがとうございました!」とお礼を伝える。

自治会の皆さんにお礼を伝えるこどもたち


「地域のこどもたちを地域で育てよう、見守ろう」

自分の住んでいる地域はどうだろうか。自分ごとにしながら、できることをしている自治会の皆さんの姿勢はまさに、この言葉を体現しているように見える。

誰かがやってくれる、となった時に自然と他人事になってしまいがちな私たち。そうではなく、一人ひとりにできることを「お互いさま」の気持ちでできれば自然と「ありがとう」の輪が広がっていくのではないか。思いを持って、こどもたちの隣にいようとしている人が地域にいます。そんな眼差しに感謝しながら、その輪を一緒に広げていきませんか。

自治会の皆さん、地域のお母さんたち

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なかよし川良っ子
おとなりさん:中村さん、自治会の皆さん、地域のお母さんたち
おとなりさんち:武雄市武雄町大字富岡10005 川良自治公民館
毎月2回(第2、第4水曜日)15:00~17:00

Instagramでは写真を、noteでは文字を中心とした読みもので「こどもたちのおとなりさん」を発信していきます。
▶︎アカウントはこちら https://www.instagram.com/kodomo.otonarisan/

こどもをまんなかに、ほっとできる瞬間がそばにある社会を皆んなで緩やかにつくっていきませんか。

編集・書き手・写真 : 草田彩夏(佐賀県こども家庭課 地域おこし協力隊)



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