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草むしりは散歩のようなもの

だいじなドングリちゃんの写真を撮ったついでに、
玄関先の花壇に蔓延る謎の草を熊手で掘り起こしていた。
どこからやってきたのか、今年突然生え出して、あれよあれよと増殖。
熊手が地中に刺さっていかないほどに、根が張り巡ってしまっている。
少しずつかき崩していくと、太い太い根がぐちゃぐちゃに絡み合っており、地中から球根のようなものが、わんさか出てきてゾッとした。
全体重をかけて引っこ抜く。
体力の消耗に比べ、なかなか進まない草むしり。

そこへ、おばあさん二人が歩いてきた。
こんにちは、と互いに挨拶。
おばあさんは、うちのだいだいの木を指さし、あんなにたわわに実っているのに、なんで収穫しないの?と、聞いてきた。
あれ、酸っぱいんですよ。と、私。
見た目には、ぽんかんのようにも見えるが、実はポン酢にしかならないような、酸っぱい果実なのだ。亡き父が、若かりし頃に買ってきて植えたものなので、私はなんの木なのかもわからない。
あれまあ、もったいない。と、おばあさんたちは大笑い。みんな、なんで取らないんだって言ってるよ。
もう、観賞用みたいなものですよ。と会話がはずむ。
おばあさんたちが去っていくのと入れ違いに、おじちゃんとおばちゃんがやってきて、互いにこんにちは。と、挨拶をかわす。
またまた、だいだいの話題になる。
おばちゃんのおうちは、ネーブルのような甘い実がなったそうで、わたしはただただ羨ましがる。
金柑を育ててみたいと言ったら、鉢で部屋で育てると、皮がかたくなるみたい。と、教えてくれた。
おじちゃんが、ここなら日当たりいいから、放っておいても実るよ。と、励ましてくれる。
おばちゃんは、おじちゃんに、あなたも庭をやったら?とすすめたが、おじちゃんは、ずっと中腰で作業するのは無理、と渋い顔。
私は、おじちゃんとおばちゃんはご夫婦だと思い込んでいたのだが、おばちゃんがおじちゃんを苗字で呼んでいたので、友達なのだとわかった。
がんばれや。
がんばります!
手を振り、別れる。

草むしりしていただけなのに、自分も散歩していたかのような気分。

草むしりをするだけで、知らない人との会話が生まれる。
としをとっても、私も散歩して、草むしりしているひとと話とかして。
独り身だけど、友達と散歩して。
なんか、じゅうぶんに、あたたかい気持ちで暮らせそうだ。


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