底にある景色 2

 話を今から10年前。成人式からは5年前に戻そう。2014年の2月。中学3年生だった筆者は併願入試制度を利用して、都内にある私立の高校を受験した。当時の筆者は9科目評定で5段階評価の内申点が32。正直勉強ができる部類の生徒ではなかったと思う。この高校は学力別に松・竹・梅(仮称)のコースに分かれていた。筆者の内申点では梅コースでの受験となった。入試当日の夜、当時通っていた学習塾の先生から「君は竹コースに繰り上げ合格になった」と伝えられた。先述の通り、本命校だった公立高校の受験に失敗したため、この学園の竹コースを進学先に選んだ。結果的にこれは筆者の人生の転機になったのだ。
 元々梅コースレベルの学力しかなかったので最初は学力面でかなり苦戦した。初めての中間テストでは今まで見たこともなかったような点数を取って「これが高校の洗礼なのか…」と衝撃を受けた。中学時代とも変わらず暴行事件に巻き込まれることもあったが、周囲のサポートにも助けられて解決。自分で言うのもはばかられるが、高校3年間の筆者は飛ぶ鳥を落とす勢いだった。
 模擬試験では常に成績上位。「中学時代までの自分を変えたい」と思って立候補した学級委員にも選出。各クラスの委員によって構成される学年委員会に3年間在籍し、10クラスほどあった学年の取りまとめ役を務める。学校行事では常に代表生徒でスピーチを行う。気が付けば卒業式でも代表生徒としてスピーチを読んでいた。もっともこのスピーチは一般入試が控えている2017年の1月に指名を受けて、学校に足を運んで内容を考えたことはある意味思い出に残っている。
 大学入試制度の影響を受けて、筆者達の世代の大学受験は苦戦を強いられた。筆者とて例外ではなく、センター試験(現:共通テスト)利用で合格した大学以外は全て不合格だった時には発狂したものだ。X(旧:Twitter)やネット掲示板では安パイに分類されているが、世間的には難関校と分類される大学への合格が決まった際には心から安堵したものだ。
「今日まで私を支えてくださった皆様、ありがとうございました!」
 3年間在籍した高校の卒業式にて、筆者はこんな風に生徒代表の言葉を述べていた。

 今思い返すと高校入学から大学入学までの期間は、筆者にとって人生のピークを目指すための道のりだったのかもしれない。「進学先で選んだ大学のカラーに陰キャ気質の筆者が合うのか?」という心配は周囲からされていた。
 迎えた大学入学後最初の授業は体育の授業。高校までとは異なり、男女合同の授業というのも新鮮な光景だ。担当の先生からは「男女でペアを組んでください」と指示があった。周りを見回してみると次々と男女でペアを作っている、当時彼女いない歴=年齢だった筆者はペアを作れず、気が付けば体育館の中で1人孤立していた。あたりをキョロキョロ見回して焦った表情を浮かべる筆者の様子を見かねた先生は1人の女子学生に対して「筆者とペアを組んであげて欲しい」とお願いをしたのだ。するとその女子学生は筆者をじっと見て睨みつけた後、先生に向かって「この人とは嫌です」と言い切った。この瞬間、筆者は転落人生を歩み始めた。

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