底にある景色 4

 2018年の12月頃だっただろうか。筆者のもとに成人式の知らせがやって来た。そういえば来月にはそんなものがあるのか。この頃になると中学校までの同級生とは完全に交流を絶っていたので、全く消息がわからなかった。両親が「中学の同級生の○○くん。あそこの大学通っているんですって」と教えてくれるように、筆者は彼らに対する興味や関心を失っていたのだ。
 先述した通り中学までは全く良い思い出が無かったので、参加するつもりは全く無かった。大学2年から3年への進級が懸かっている後期の試験の勉強をしたいし、そもそも成人式の翌日にもいくつかの科目で試験が行われる。 
 これを理由に成人式に行かない旨を両親をはじめ、家族に伝えたところ。烈火のごとく反対に遭ってしまった。「一生に一度しかない機会だから」「昔の同級生に会える機会だから」「彼女を作るチャンスだぞ」とうんざりするような理由を並べられる。反論するのも面倒くさく、彼らとしては筆者が成人式に参加するのは既定路線となっているようだ。
 年末年始の期間では試験勉強を行いつつ、成人式のことを考えていた。筆者としては高校入学以前と高校入学後を境に、生活環境だけではなく人格等の構成要素も変わり、いわば”別人”のようになったと思っている。そんな中で今まで黒歴史だと考えていた中学時代に目を向けてみるのも悪いことではないんじゃないか?…いや、会場でイジられたり、何かしらトラブルを起こすことによって嫌な思いをするなら、行かないことだって選択肢に入るのではないだろうか?
 なんて考えているうちに2019年を迎え、そして成人式の日を迎えた。もはや「行かない」という選択肢が許されるはずもなかった。玄関で記念写真の撮影によって見送りを受けた筆者は、重い足取りで成人式の会場へと向かっていった。


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