奈良旅、大都会(1300年前)
12月4日 月曜日
肌が引き締まるような寒い朝、家を出る。
みんなが仕事する時に旅行する背徳感がたまらない。
と思ったが、時刻は7:40。みごとに通勤ラッシュに巻き込まれる。
今回は会社の同期2人と、計3人旅。
1人は奈良の奈良市出身の雨男のK、
1人は奈良の香芝出身の仕事休養中のYである。
2人とも社会人から上京した組である。
なぜこのメンバーかというと、奈良育ちの彼らに、案内してもらおうという魂胆である。
Yは現地集合なので、Kと東京駅で合流し、新幹線に乗り込む。
思い出話してたら、京都駅に到着。
在来線に乗り換え、奈良駅へ。
車内には高校生が多く、Kは懐かしむ様子で車窓を眺めていた。
奈良駅に到着し、Yと合流。
早速駅近の大和牛が食べられるお店へ。お昼時だったため、20分ほど待つことに。
少しすると3歳くらいの子を連れた家族が店に入ってきて、僕らの真後ろに並んだ。すると母親が列を見て
「予約するって言ってたじゃん」
と父に愚痴をこぼした。
しばらく文句を垂れた後、もういいと言って1人で店を出てしまった。
父親は慣れているのか、子供と黙って待っていた。
僕らの中でその母親は「阿修羅ママ」と命名された。
自分達が席に呼ばれた。
席に着いて、「さっきのママキレ過ぎだろ、待てばいいのに」
と笑って話していると、なんと隣の席にそのパパと子どもが座ってきた。
母親にどんな事情があったかは分かりかねるが、結婚相手は慎重に選ぼうな、と勝手に教訓を得た。
満腹になったので、歩いて春日大社を目指す。
せっかくだから道中で鹿せんべいを購入。食べられるということで、3人で味見。
感想は…
大和牛の舌が消えてなくなった。口直しではなく、口汚ししてしまい、後悔する。
紅葉にうっとりしながら、15分ほどで到着。
結構歩いたので、ならまちのカフェで休憩することに。
こんなに静かで落ち着く場所は東京にないなぁと思いながら、こぢんまりとした古民家カフェ「よつばカフェ」に到着。
平日だからか、貸切でゆっくりした時間を過ごせた。
最後にもう1箇所寄って、ホテルへ。
旅から帰ってきて思い返すと、この道が2日間の旅で1番好きな景色だった。
奈良といえば修学旅行生で混み合う東大寺、奈良公園というイメージだったが、こんなに静かで落ち着く場所もあるんだな、と奈良の違う一面に気付けた。
歩きながら友人2人が故郷を懐かしむ様子を、東京育ちの自分はちょっぴり羨ましく思った。
バスに乗って向かったのは、Y推しの金魚ミュージアム。
奈良は300年前から有名な金魚養殖地らしく、生産量は2位の愛知の10倍以上の年間6000万匹なんだそう。
一生分の金魚を見たので、ホテルへ。
チェックインして、近くの居酒屋へ。
旅行前から目をつけていた店で、駅から徒歩1分なので、席あるかなと思っていたら、結構空いてた。
K一推しの地酒「春鹿」を飲みながら、恋愛、仕事の話。
ホテルに戻って、爆睡。
・・・
翌朝8時にKが実家の車を借りてくれたので、車で明日香方面へ。
まず2人が紹介してくれた岡寺へ。
天智天皇の頃に創建されたらしく、シンプルな作りのお寺。
初日は自分が勝ったが、2日目は雨男の勝利で、少し小雨が降ってきた。今年K含めた旅行何回か行ってるけど、晴れ男の自分とは2勝2敗っとこかな。拮抗してる。
景色が良いお寺で、その分階段は多かった。
訪れてる人の多くは高齢の方で、階段の上り下りが大変そうだった。
やはり旅は若いうちに多く行った方がいいな。
次は、飛鳥寺。日本最古のお寺として有名だが、アクセスが悪く訪れる人は少ないみたい。
着いた時に誰も居なかった。
静まり返ってることで、それが厳かな雰囲気を醸し出していた。
日本最古の寺にしては小さいな、と思ったが、境内は当時の1/20らしい。
よくみる大仏とは顔付きが違う。
たまに怖い仏像があるが、手前のハスの花と優しい顔に魅せられ、しばらく眺めていた。
なんとも癒されるお顔をしてらっしゃる。
境内のすぐ裏に、蘇我入鹿の首塚があった。
明治時代の人物だと、写真などがあり実在したことに疑問を抱かずに受け入れられるが、1300年前まで遡ると、ほんとに実在したのか不思議な気持ちになる。
次は聖林寺。
ここは宮田珠己の「47都道府県正直観光案内」に書かれてて気になってた場所だ。
ここは2人も知らなかったようだ。
筆者に則ってここでも書かないことにする。天気が良い日にぜひ。
もちろん国宝の観音像も漆で出来てるとは到底思えないほど綺麗で、見惚れるほど感動した。
特に指先が非常に美しく、そこばっかり見てしまった。
昼ごはんに天理ラーメンを食べに行く。自分が無知なのか、2人の話振り的に有名らしい。
ピリ辛だったけど、外が寒かったから美味しく頂いた。
最後は、Kが行きたいと言った「とほん」という本屋さん。
最新の本もあるが、詩やエッセイが多めだった。
30分ほど迷った挙句、
須賀敦子
茨城のり子
向田邦子
のエッセイを購入。
物色中、3人ほどお客さんが来たが
「この本入ったら連絡しますね」
「これ最高に面白いんで読んでみて下さい」
などと会話してて、常連さんのようだった。
雰囲気が良い本屋だった。
雨なので袋のサービスしてもらった。
・・・
K宅に車を返す際、Kママは帰ってきた息子に会えて嬉しそうであった。
自分には生まれも育ちも東京で、故郷というものが無く、その様子を見ていて家族の結び付きと育った場所の記憶の強さを感じた。
・・・
KとYにとっては旅行というより、思い出巡りになったようだった。
2人は同じ奈良出身で、2人とも2時間以上かけて京都の大学に通い、東京の同じ会社の同じ営業所に配属された。
知り合って1年半なのに、思い出の地を共有しているのが2人には違和感なようで、知らない記憶が脳に直接流れてくるような感覚と言っていた。
同じ奈良出身として、お互い大事にして欲しい。
2人の愛している奈良、もっと知りたいから、また訪れる時はよろしく。
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