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赤い丘の空の色は

真っ青な空を切り裂くように一直線に棚引く雲がある。飛行機雲だ。
子供のころ、私はそんなものに夢中であった。

どうしてあんなに夢中になったのか。
どうしてあんなものに心惹かれたのか。
消えるまでずっと見ていた。何処までも追いかけてみたい、そんな風に思ったものだった。

赤い丘の上にはテーブルが置かれているだろう。虹の向こうにはエメラルドの都。雲の向こうなら見たこともない島が浮かんでいるかも知れない。
だけどそれらは子供時分のお伽の話。オトナになればわかるだろ?
夢物語はそのままに現実世界は辛らつ極まりないってことが、飛行機雲の向こう側なんて精々が羽田か調布だってことが。オトナになればわかるんだ。

だからって、そんな話を子供に吹聴するような下らない大人を演じる必要はない。そんな年なら取らなくていい。

――夢は枯野をかけ廻る。また、枯野を廻るゆめ心(宝井其角『枯尾花』)

あなたの夢は?

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