アルバイト探偵🕵️‍♀️第二話〜『確実な証拠』〜

翌日、真斗は松元事務所に出勤した。事務所に入ると、『真斗くん』と真斗を呼ぶ声がきこえた。呼んだのは面接の時に出迎えてくれた事務員の女性だった。

『川村帆乃香(かわむらほのか)といいます。ここで事務員をしています。真斗君が今日からここで働くことになって昨日からすごく楽しみでした。』

真斗は自分より年上の女性から楽しみにしていたと言われ、少し浮かれてしまった。

そこに松元が奥の部屋から現れ、 
『真斗君には今日来るクライアントの事件を担当してもらいたい。』と言った。

川村は、『谷矢弁護士の件ですね。』と理解していたが、真斗には何の話をしているのかさっぱり不明であった。

真斗は、補助だと思っているため、担当とはどういうことかわからなかった。
『僕は補助をすればいいってことですよね。』
と松元に疑問を尋ねると、
『いや、君が一人で担当する人だ。まあ困ったら相談にはのるからさ。』
と楽観的になおかつ当然のように松元は返してきた。

『僕は、補助って聞いていたんですけど。』
と不満を声に出すと、
『補助というのは、事件がたくさんあるからその一部を担当してもらうことさ。』
と松元はここでも当然のように言い放った。

その時、一人の男が事務所を訪ねてきた。
胸元に弁護士バッジを付けているため、真斗は自分のクライアントだとすぐに気付いた。

『谷矢先生いらっしゃいませ。』
と川村が、谷矢をソファーに案内した。

松元は、『今回の件は、そこにいる真斗君が担当してくれることになったので、その子に話をしてくれ。』と言い、奥の部屋に入っていった。

真斗は、突っ立っていても仕方ないため、谷矢の向かいのソファーに渋々腰をかけた。

『真斗君聞いてくれ、今回の事件は殺人事件だ。』
真斗は、谷矢の言葉に状況がさらに読み込めなくなった。

『僕が、殺人事件を推理するんですか。そんなの無理ですよ。』
『いや、君しかいないんだ。松元先生は、一度自分がやらないと決めたら絶対にやらないからね。』

『それじゃあ今回の件を話すから、聞いてくれ。』
谷矢は真斗のあっけにとられた様子を気に留めることなく、話を続けた。

『今回、僕に弁護の依頼をしてくれたのは山口桃香さん、28歳で自分の父である啓三を殺害した容疑がかけられている。そして、彼女は殺害を否定しているが被害者が死ぬ直前に食べたお茶漬けと、彼女がそのためにそそいだ急須の中のお茶から青酸カリが検出され、彼女のバッグからは、その青酸カリと同じ成分のものがプラスチック容器に入ってみつかった。』

真斗はこれを聞き、それだけ証拠があるのならおそらく山口桃香が犯人だろうと思った。ただ、動機がわからなかった。

すると、谷矢はこう続けた。
『被害者の机から遺書が発見された。その遺書には桃香さんに財産を譲り渡すとされており、被害者は持病もあったころからずっと遺書を机に入れていたそうだ。』

真斗は、その内容を知って早く遺書が欲しくなり桃香さんが被害者を殺害したのだろうと思った。

『確認ですが、その場には桃香さん以外に人はいなかったんですか。』と谷矢に問うと、

『いや、桃香さんのお兄さんの優作さん、そしてお姉さんの心さんの二人もいたそうだ。ただその二人の証言によれば、急須でお茶をご飯にいれたのは桃香さんで間違いがないらしく、指紋も桃香さんのものしか検出されなかった。』

真斗はますます桃香さんしか犯行は無理ではないかと思ったが、仕事なのでやらざるを得ないため、
『とりあえず、僕の方でも調べてみます。』と言って谷矢との話を終えた。


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