にゃんこアイスクリーム

夏の暑い日 カップのバニラアイスを  食べると ばぁばが可愛がっていた にゃんこをよく思い出す。

みーちゃんという名前の その黒い
にゃんこは わたしと猫族さまとの
遭遇を橋渡ししてくれた 唯一無二の 最高にお転婆なママにゃんこでした。
真っ黒な毛皮を艶々にグルーミングしてお散歩へ出かけると よそのお宅のワンちゃんとケンカをして勝って帰ってくるような 颯爽とした男勝りな にゃんこだった。きっとプライドも高かったのだろうと思う。

もとはというと、うちの両親の飼い猫だったみーちゃんは 和菓子屋さんで生まれた箱入りにゃんこだったようだが 当時、自転車通勤をしていた父が好物のおはぎを買うときにに あまりの可愛さに惚れ込んで 頼み込んで貰い受けてきたのだろうと想像する。

想像するというのは、結婚まもない母のために 父が仕事で留守にする間 寂しくないように みーちゃんを貰ってきたと聞いているからだ。

本当のところは 可愛いものにめっぽう弱い父のほうが みーちゃんを飼いたかったに違いないと わたしは勝手に推測している。

みーちゃんは 父の片手にすっぽり抱まれて 小さな体でみゃあ みゃあと大声で鳴きながら 路面のデコボコした野草の黄色い花の咲く小道を ガタゴトと自転車に揺られて 父とともに  帰ってきたのだ。

ちびすけだったが 母の留守中に丈の高い箪笥の上に登って降りられず
降ろして〜みゃあ〜と鳴いて待っていたそうだ。きっと箪笥の上に母がいると思って登ってしまったのだろう。みーちゃんのお転婆ぶりは さぞ母の心をなごませてくれたことだろうと思う。


そんなみーちゃんだったが 母が妊婦さんになったため ばぁばの家で飼われることになった。

みーちゃん専用のお庭つきで みーちゃんは好きなときに好きな穴を掘って用をたしていた。季節のお花のあたりに穴を掘ったときには みーちゃんの熱いおしっこでお花がヘナヘナになったりしたが、ばぁばは一向に怒らなかった。日向ぼっこをするのにうってつけの瓦屋根もそこらじゅうにあるおうちだったので みーちゃんは快適な
にゃんこライフを楽しんでいたことだろうと思う。


さて なぜにゃんこアイスクリームなのかというと、ばぁばのおうちへ行くとき わたしたちは よくバニラの カップアイスを買って行った。

にゃんこはミルクが好きだが 和菓子屋産まれということも手伝ってか
みーちゃんはわたしたちがよばれたアイスのカップに頭を突っ込んて 残っているアイスをへろへろと舐めるのを楽しみにしていた。しかしへろへろするとカップが前へと逃げて行ってしまう。カップが壁やふすまにぶち当たるまで 前進しながらへろへろとやっていた。その様が可愛くてよく大笑いしていた。大真面目にアイスを楽しんでいたみーちゃんにとっては迷惑な話だったろうが 匍匐前進しながらカップに頭を突っ込んでいるみーちゃんが顔を上げると 黒いはずの毛に ところどころ白いものがひっついていて またそれで笑えたりした。

そんな楽しかった話を にゃんこアイスクリームってわかる?って わんこ好きな人に話したら わんこもおなじだで〜 ペロペロ匍匐前進だで〜
と言ったので 私はすかさず
じゃあ わんこ鍋じゃんと言って 二人で家ケケケケっと大笑いをした。

そのとき、その人が最近見た面白い動画の話を教えてくれたので、またまた面白くなった。 わんこがごはんを食べていると 同居中のニワトリがやってきて わたしも食べたい〜とあれこれ隙を伺うのだが どうしても食べられない。そして ご立腹の末にご自慢の脚でごはんの器を蹴っ飛ばしたそうだ。

器はごはんもろともひっくり返り ごはんがぐしゃぐしゃになって なんとも両者の表情が面白かったのだそうだ。

わたしは それじゃせっかくのごはんが台無しじゃんと言ったところで 頭の中で ちゃぶ台とひっくり返すと台無しと器が妙に結びついて 台の無い床に置いた器だから ひっくり返って台無しだ〜と変な絡ませかたをした自分の馬鹿さ加減にくすくす笑いながら、呆れつつもなんというか腑に落ちた。

じゃあニワトリの場合はなんて言うの? トリなべ? きゃー リアルすぎじゃん んーと じゃあチキン鍋?
それもいかんだろーと わたしたちはしばし阿保な会話を楽しんだ。

わたしたちは わんこもにゃんこも 
食べないけれど チキンは食べちゃうもんね。わんこ鍋と言っても それってなーに?ですむけれど チキン鍋と言われると その美味しさや鍋の様子まで克明に想像してしまう。

嗚呼 哀しきかな食い気といふ
欲にまみれた この身体
せめて いただいた生命に感謝しつつ
うんまぁ〜いと絶賛していただこう。









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