意味が分かると怖い話
救世主
大学からの帰り、電車を降りてからずっとつけられている。
私に気づかれても構わないというように、相手は堂々と追いかけてきた。
私はさりげなく振り返りながら早足で進むが、その男との距離はだんだん縮まっている。
いやだ、気持ち悪い。
前方の道の陰から一人の男性がスッと現れて、こう言い放った。
「おい君、いい年をしておいて、こんな二十歳の子のストーカーなんてやめなさい。」
ストーカーは焦った様子で逃げて行った。
「ありがとうございます。助かりました」
「いいんだよ。この辺りの住宅地は人通りも少ないから不審者も出やすいんだよ。いきなり交番の場所を聞いてくる通り魔とか、若い女の家までついてくる警察とかね。」
「そうなんですね。本当にありがとうございました」
「うん、気をつけてね、A子ちゃん。それじゃあ。」
解説
この場を助けてくれた男性は、
なぜこの子の年齢と名前を知っているのか?
しかもにスッと現れるのも都合がよすぎるよね…
共働き
私と妻は共働きで、どちらも朝は始発に乗って出ている。
今日も一緒に家を出たのだが、仕事中に突然体調不良に襲われ、やむなく早退をした。
世間はまだまだ働いているお昼時に電車で帰路につく。
外の空気や解放感のおかげか、家につく頃にはすっかり元気になれた。
私は早退した旨と今日は夕食を作っておくということを妻にメールしておいた。
こんなことなら早退しなくても良かったかなと思いつつ、テーブルに携帯を置く。
すぐ横を見ると、今日の郵便物が散らかっている。
妻にはこういう大雑把なところがある。
そういうところも含めて好きなんだけどな。
郵便物を整理しようとしたところで、私はあることに気づき家を飛び出した。
解説
夫婦で早朝に一緒に家を出ているということは、郵便物をしまっておく時間はないはずだよね。
にも関わらず郵便物が散乱しているということは、何者かが家に侵入して郵便物を散らかしたという事。
母
「はい、お口あーんしてね」
私は食卓で朝食を食べる。
「じゃあお着がえしましょうねえ」
私は制服に袖を通し、スカートを履く。
「学校なんていいから、ママとお昼寝しましょうね~」
私は玄関に行きローファーをはく。
「お、いってらっしゃい」
「うんパパ。今日も付き添いよろしくね」
解説
ママの口調は幼児に対するようなものだけど、この子は語り口や服装から察するに中高生くらい。
お母さんは人形か何かを娘と思っているのかも…
記憶
昼下がりの安楽椅子に腰かけ、日差しを浴びながらまどろむ。
ゆったりとした陽気に包まれて、のんびりと物思いにふける。
気づけばもう2024年。年月が過ぎるのは早いよね。
私ももう80歳になってしまった。
顔のいたるところに刻まれたシワも、もうとれることはない。
こんな歳になると昔のことを度々思い出すのだけど、印象深い出来事が1つある。
あれは5歳くらいだったかな。
父親と出かけていたとき、父親が突然脳梗塞で倒れちゃって。
子どもだったからどうしていいかもわからないでいると、
偶然通りかかった男性が携帯で救急車を呼んでくれた。
そのおかげで父は助かり、私が大人になるまでは元気に生きてくれた。
懐かしいな。
あのときの男性には本当に感謝している。
最近ひ孫も産まれたし、私ももっと元気に生きないとね。
解説
2024年に80歳ということは、この人が5歳のときは、少なくとも1948年前後。
その頃には携帯電話なんか当然普及していないはず。
この男性はいったい何者だったんだろうね?
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