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【英語でなく、現地の言葉を使うことの大切さ】世界一周物語 第3話

来るんじゃなかった、フィリピン留学

フェリーは無事、セブ島に到着。
到着した港には、客引きの嵐。

空港の客引きとは少し違っていた。激しめな印象。空港はある程度規制があって、入れる人が限られているのだろう。しかし、港では、誰でも入れる。
故に、無法地帯と化していた。
フェリーのゆっくとした時間の流れが一気に、旅モードに切り替えわった。

とは言っても、空港で一度経験していた僕は少し余裕があった。
この客引きの場所はスルーして少し歩いたところでタクシーを拾うことにした。そこでタクシーを拾って、何事もなく、語学学校に到着。

到着した途端、何か興醒めをしてしまった。
綺麗な校内。
自動ドア。
手入れの行き届いてるゴミ一つない室内。
丁寧な言葉を喋るスタッフ。
たくさんの日本人。

何か現実に引き戻された感じだった。
なぜなら日本での生活の当たり前が、そこにはあったからだ。
ここはフィリピンだが、日本にいるような錯覚さえ覚えた。

ここで、1ヶ月も過ごすのか。
後悔する少年。

とは言っても、学校生活は始まって行く。

この学校は朝の7時〜8時に朝食の時間がある。
そして8時半から授業がスタートし、1時間のクラスがあって、10分の休憩があるみたいな感じ。個別の授業もあれば、大人数のクラスもある。
午前中で終わる日もあれば、午後の3時ぐらいまである日もある。
そして、授業が終われば、自由時間だった。土日は休み。

毎週月曜日に入学生が入ってきて、金曜日に卒業していく風になっていた。
経営は韓国人。なので、食事は韓国人が喜びそうなキムチや辛いものがいっぱい。日本人の口にもすごく合う。少年は辛い物が好きだったのでご飯が楽しみだった。

宿泊場所、教室、食堂、全てが一緒の敷地内にあった。

初めての授業に参加。その授業では、新入生の自己紹介から始まる。

まずは、イングリッシュネームを発表!
言わば、その学校で読んでほしいニックネームみたいなもの。
そして、なぜここに来たのか。趣味、出身地、等々。

フィリピンにいるが、日本でする自己紹介と何ら変わらない。笑

僕は、すでに勉強をしていた生徒の前で自己紹介をする。
何か転校生になった気分。

そして、他の人の自己紹介を聞く。
そこで、びっくりする少年。
いるわ、いるわ。旅人が。変な人が。面白そうな人が。

僕が想像していた学校とは少し違っていた。
僕みたいに世界一周前に英語を勉強しに来ている旅人。
オーストラリアのワーキングホリデーを前に来ている社会人。
高校を卒業してすぐにフィリピンに留学にきた18歳の女の子。

着いた時の感情とは裏腹に、ワクワクしている少年がいた。
何か楽しい学生生活になる予感。

バカのケイはタカログ語を勉強していた。


世界一周前に英語を勉強しにきたと言うスキンヘッドに髭にB系の帽子を被った同い年のケイと僕はすぐに仲良くなった。

彼は関西の教育学部に通っていて、先生になる前に色々な世界を見たいと世界を旅することにしたそう。
将来のなりたい夢や語っている事と外見のギャップが面白いケイだった。

ケイは何故か英語をそっちのけでタガログ語を勉強していた。
タガログ語がフィリピンの公用語になっている。
英語の授業中にフィリピン人の先生から、タガログ語を習い、街や売店の人に使って、楽しんでいた。

完全にバカだ。安くないお金を払って、時間を使って、英語の勉強しに留学しに来ていているのに、なぜカタログ語を勉強しているんだ?

少年は最初、完全に彼をバカにしていた。

しかし、少年のケイに対する思いはだんだんと変化していった。

何故なら、ショッピングモールで出会う店員さんや、学校の先生、とカタログ語で喋る彼を見た時、その人達の表情が笑顔になっていたからだ。

ここはフィリピンだ。


なぜ、現地の言葉を勉強して悪い?
そして、ケイがカタログ語で話すと、現地の人は英語で喋ってる時とは全く違った満面の笑顔で話す表情になっていた。フィリピン人には、現地の言葉であるカタログ語が母国語だ。

そりゃそうだよな。どれだけ下手でも、意思の疎通ができなくても、自分達の言葉を使おうとしてくれているケイを好きになるよね? そりゃ自然と笑顔になるよね?

英語でのコミュニケーションの方が、お互いにとって、便利だ。
セブ島は外国人観光客がたくさんいるのいで、その客を相手にした商売の人は大体英語を簡単には喋れる。カタログ語を喋る方が、時間もかかるし、コミュニケーションも円滑ではない。

しかし、カタログ語を喋ることで、心と心が通っている風に少年の目には映った。言葉を超えた、心と心の触れ合いがそこにはあったように少年は感じた。

ケイは英語を勉強するより遥に、大事なものを大事にしていたのかもしれない。彼は現地の人と仲良くなりたい、そんな純粋な想いから、カタログ語を勉強したのだろう。

放課後には必ず、今日クラブ行く?と誘う彼。
毎週末にはクラブに繰り出して、夜中まで遊ぶ。
そして、覚えたカタログ語を使って、フィリピンガールをナンパする。
全く、成功していなかったが。笑
そして、クラブへ行った次の日の朝食の食堂には、彼の姿はなく、眠たそうな顔をして、1時間目の途中から顔を出す彼。

勉強そっちのけで遊ぶ彼だったが、少年の目には彼が眩しく映った。
同い年であるケイを少し誇りに思った少年であった。
大事なものを大事にするケイはとてつもなくバカで、かっこいい男だった。

これから旅をする上で、大切な物をケイから少年は教わったのだった。

次章に続く。


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