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FMわっぴ~を聴いてみよう

(稚内北星学園大学の授業で、学生が書いた記事。)

北海道庁のある札幌市から約366km、日本最北端、稚内市のコミュニティFM「FMわっぴ~」。札幌を中心とした情報が伝えられる道内メディアでは、遠く離れた稚内の情報はあまり扱われないのだが、こうした環境にあって、地元の情報を扱うFMわっぴ~は、市民にとって大きな存在となっている。しかし、その一方、ラジオというメディアから若者が離れているとも言われており、そのことは、稚内の若者とわっぴ~の間にも影響しているように思われる。FMわっぴ~は、稚内の若者にとって、親しみを持てるメディアになることができるのか。そのための課題はなにか。移住して2年目の学生中村がFMわっぴ~の番組や取り組みの取材を通してその可能性をみつけていきたい。

FMわっぴ~76.1MHz|最北端の街稚内のコミュニティラジオ|稚内と宗谷管内の地域情報
http://wappy761.jp/

2017年8月22日、中村をはじめ5人の学生は、授業の一環としてFMわっぴ~を訪問、放送局長の杉谷賢俊さんにお話をうかがった。このときうかがったお話をもとに、自分なりにFMわっぴ~について考えてみたい。


県域放送を中心に聴いていた中村、実はこれまで、コミュニティFMの存在すら知らなかった。大学に入学してから「FMわっぴ~」のことを知り、コミュニティFMというラジオがあることを知った。ただ、道内他地域から移住した私にとって、FMわっぴ~とその番組内容に関心を持つことはなく、この夏の講義まで、FMわっぴ~を聴くことはなかった。というわけで、今回FMわっぴ~をたずねたこがきっかけで、わっぴ~の番組をきいてみるなど、関心を持つようになった。

FMわっぴ~は1996年7月1日に北海道で7番目、全国で34番目のコミュニティFMとして開局されている。稚内市で、比較的早くコミュニティFM設立の動きが起きたのは、情報過疎への問題意識があるからだろう。北海道の「県域放送」では、北海道の中心地札幌の情報がほとんどで、札幌から遠く離れている稚内市民は、自分たちの生活に直接関連する生活情報がほとんど得られない。こうした情報過疎への問題意識から、これを補うコミュニティFMとして、早くから稚内市にFMわっぴ~が開局されたのである。

現在FMわっぴ~では、稚内市周辺地域のニュース、天気予報、交通情報などを中心とした内容を、いわば「町の回覧板」となって放送している。

FMわっぴ~は、平日、朝昼のワイド番組を中心に番組が組まれている。朝のワイド番組「川島玄起のおはよう最北端 」は、その日のニュース、天気予報、交通状況、稚内市周辺のイベント情報を紹介している。特に、通勤通学する人に向けた情報が、中心になっているという。昼のワイド番組「わっぴ~最北チャンネル」は、バラエティ感を強めにして主婦をターゲットとした情報、お買い得情報や生活情報などを放送している。そのほかには、市政の情報の発信、防災に関する情報の発信、音楽をテーマとしたコーナーなどがある。ニュース原稿は独自に取材・録音した素材を使って紹介したり、北海道新聞や日刊宗谷の記事をもとにした原稿を用いたりしている。
杉谷さんは、率直に、「FMわっぴ~を聴いているリスナー層として、若者が多いという実感はあまりない」と話していた。やはり、年齢層が高い人たちに多く聴かれているというのが、局の実感でもあるようだ。ただその一方、FMわっぴ~は稚内市でしか放送されていないが、インターネットでも配信されるようになった結果、本州など市外からもアプリなどを通じて聴かれているようで、新たな広がりが見え始めている。
現地に取材に行った実際の現場の音を使ったニュースは、他のコミュニティFMではあまりやっていないような特徴ある取り組みだと、杉谷さんは自負する。実際の現場の音を放送することで、より地域に密着した、地域の人々の関心に応える放送を行うよう、心がけているという。

杉谷さんに取材してまず感じたのは、「FMわっぴ~」が、稚内市民にとって重要な存在になっているということ。稚内市周辺での出来事を知るために、全国ネットの放送とは異なる、地域のさまざまな情報を放送してくれるFMわっぴ~は、地域でとても大きな役割を果たしている。実際に現場に行って生の音を録音して、放送しているのも大きい。この独自の取り組みはなかなかできることではないと思う。地元新聞で得られる文字による情報よりも、さらにリアルにニュースを捉えることができる。実際番組を聞いてみると、稚内市に特化した情報が多く盛り込まれており、県域放送とは違って、稚内市民の知りたい情報が豊富に流れてくることがわかる。たとえば、今回聞いてみた日には、昼のワイド番組で、市内で開催予定だった、屋外ビアガーデンが、天候不良をおして開催されるという決定が発表されていた。これは県域放送にはとてもできない放送内容だろう。また、流れてくる音楽は、どの年代でも楽しめる選曲が多いと感じた。
実際にFMわっぴ~を聴いていて感じたことは、若者のラジオ離れが加速している背景は自分たちが住んでいる地域について関心がないからではないかということだ。地域に関心があれば、もっと若者も聴くはずだ。実際に若者が聴くようになるには、まずは地元に関心を持ってもらうことから始めなければならないと思う。地元に関心がなくてもこの記事を読んだ若者には、気軽な気持ちでFMわっぴ~を聴いてみてほしい。県域放送のように有名人などは出てこないが、地元のことを知ることで新たな発見ができたり、つながりができたり、興味の湧く出来事を知ることができたりするだろう。
若者層にむけた番組を発信するのも一案だが、これはなかなか難しいように思う。番組ができたとしても聴いてもらえるような広報活動が必要で、現状ではそこまで多くのリスナーがいるような状況にない。広報効果がありそうなのは、聴いている人たちの口コミだろうか。地元に関心がなくても、一人が番組をきっかけに興味をもった内容をSNSなどでつぶやくことがあれば、それがきっかけとなり、FMわっぴ~の番組に興味をもつ人も出てくるのではないか。こうした口コミの広がりから地元に関心を持つ若者が増えていく流れができれば、徐々に稚内の若者で、FMわっぴ~を聴く人が増えていくように思う。

中村自身も今後はFMわっぴ~を聴いてみようと思った。移住して約2年、ほとんどテレビだけの情報しか得ていなかったが、稚内市の生活情報や出来事を知ることができるFMわっぴ~は私のこれからの生活の支えになるに違いないと思う。
ラジオを聴く環境にあるならば、一度はFMわっぴ~を聴いてみてほしい。聴くことで生活に役立つ情報が得られるメディアであると実感できるはずだ(中村)。

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