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お喋り

写真に写る私は本当の私なのか

昔撮った写真を見返す時によく思う。
その写真に写る私を見ていると不思議な気持ちになる。この写真の私は、確かに昔の私を写したものに違いないのだけれど、何だか全く別の人間に思えてしまう。

「あなたは誰」

ある日のある時間に写したであろうその写真、そこに写るのは間違いなく私なのだけど、何だか違う気もする。どれも楽しそうに笑っている。
その時々の楽しかった部分を一瞬にして切り取って印画紙に封じ込めている。
封じ込めた写真を眺めながら私は過去の私と対話する。

「あなたこそ誰」
かつての私が語りかける。
「私はあなたの数年後の姿」
「ふぅん。随分と老けたわね。もっとちゃんとしてくれなきゃ困るわ」
「そう言われても…まぁ色々あったからね」
「色々…?あ、言わないでよ。今はまだ知りたくないから」
「わかってるよ」
「わかってる?本当に?」
「本当よ」
「ね、ここにある写真、全部笑ってるでしよ。」
「そうね。笑ってるわ。不思議ね。泣き顔や怒った顔が一枚もないわ」
「そりゃそうよ。だって…」
写真の私が言い出しにくそうにしている。
「だって?」
問いかけた私に、
「だって…ほら、写真だと、いつも表しか見えないもの。本心を隠すには一番よね」

今日も写真のような笑顔で過ごす。その裏側では、ネガのような色をした感情が蠢いている。