【書評】【ちびすけ】それはないですよアドラーさん(「嫌われる勇気」)



栞さんがめっちゃ真面目に書いてくれてる中、不真面目に書いていきます2回目担当のちびすけです。

嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え
(著)岸見 一郎 , 古賀 史健 


アドラーさん。最近流行のアドラーさんです。

アマゾンさんでベストセラー1位になり、書店でも最近は平積みが普通になっているこちらの本は、cakesの記事で抜粋連載されていた時からずっと気になってました。

中身は「哲人」に「青年」が対話をしながら、アルフレッド・アドラーの思想(アドラー心理学)を説明していく本となってます。

そこはかとなく対話形式というギリシア哲学風味。実際ギリシア哲学を学ばれていたという岸見さんの学問への愛とアドラーへの敬愛が伝わってくるような文体です。

アドラー心理学とは何か、といわれたならば、端的に「幸せになるにはどうしたらいいのか」、のための心理学。

本著で語られていることはひたすらに、幸せになるためにはどうしたらいいかという話を理と実践方法を提示しながら語られてます。はじめてちゃんと自己啓発本の系列に繋がる本を読んだかも。

しかしですね、読んだ後の結論「理屈はわかるけど、こんな実践むっずいわあああああ」ですよ。

いやわかる、わかるんですよ、アドラーさん(この本の中では「哲人」が語るアドラー心理学)のいうことは。

「他人と自分の課題を分離し、相手に介入をしない」

「縦の関係ではなく、横の関係を築く」

ここまではいい、ここまでは分かる。

少女ファイトでも「どうにもならない他人の気持ちはあきらめて どうにかなる自分の気持ちだけ考えませんか」って学が練言ってたもん、わかる。

だけどアドラーさんはフロイト的思考である「原因論」の考え方を否定してきたあたりでかなり雲行きが怪しくなってくるわけです。

いわゆるトラウマでなにができないだのなんだのいってんのは、

ようは言い訳で、「あなたが本当に変わりたいと思ってないだけだ」って断言されてしまうわけです。

おま、そんな本当のこというなや!!!!すみませんね!!!って涙目。ちなみに本著の中の青年も涙目。ちなみに私の中で青年は草食系サブカルツンデレ眼鏡属性で読んでた。

さらには「承認欲求はあかん」「自己肯定感を承認欲求で得ようとしちゃだめ」承認欲求強いわたしここでくじけそうになる。承認欲求を求めることと堪えることと恥じることの葛藤で毎日苦しいわたしもうここで読むの諦めようかなってなった。青年も顔真っ赤にして怒ってた。ほんと青年が読者の気持ち代弁してくれてて助かった。

ただ、他人のために生きて、他人の期待に応えていくことを繰り返す人生は、一時の承認欲求は満たされても、それははてしなく渇きを深めていく苦痛だろうな、ということも、よくわかる。

「あなたの不幸はあなたが選んだもの」であり、「全ての悩みは対人関係の悩み」だという。つまりは他者との関係をいかに築くかによって、その悩みはなくなる。

「他者の課題と自分の課題を分離して、援助はしても介入はしない」ここらへんは特に教育学に向けられている印象で、ここら辺の例え話は親子の関係性で語られている部分が多くて、ゼミでやったら「これって読んでたら納得するんだけど、この場合で成り立つだけじゃなくて?ちょっと他の例もあげてみようよ」「いや、その例えはこの限りじゃないでしょ…」「でもこの本が言っているのはさあー」って具体例挙げていってまともな結論が出る前に授業が終わるパターンですよねわかります。ぶっちゃけ縦の関係っていうのは支配関係のことですよねってことで私の中で落ち着いている。アドラーさんが権力に関して考えていたことはとても分かる。

あと救いなんだか崖に向かって背中突き飛ばしてるのかわからないけど(多分後者)、自己肯定とはできもしないのに「自分は強い」「自分はできる」と暗示をかけることであって、自己受容とは出来ない自分を受け入れて、どうやったら理想に近づいていくのかということなんだよ、と。完璧にできる人間など、どこにもいない、んだから、って。いやだかそれができたら苦労しないよ!!!!そりゃ哲人あなた青年から「あなたの話は感情を置き去りにしてる!!!!」ってキレられるよ!!!!!!!

しかし、まあ読んでて「きみのいってることはわかるよアドラー…でも難しいんだよアドラー…!!!!」ってずっと拳握って歯ぎしりしちゃうのは、実践してる姿が思い浮かびにくいから。これに尽きる。

えてして「聖人君子」のような姿をこの本を読んでて思い浮かべてしまうけど、多分それは違う。だってはっきりと本著の中では切っていい関係はあるらしいと言っているわけですよ。そして他者の評価を気にしないっていうことは「嫌われる」勇気を持つということだ、と。

聖人君子像が破れたら次に唯我独尊像ですねこの本の場合で思い浮かぶのは。まあ青年も「悪魔め!!」って叫んでたしね。かなりのこと青年はそうとう哲人に言ってるからね。でもそれもどこか違うわけなんですよね。こう、頭の中でしっくりくるモデルがいないよアドラーさん。本の中で最終的に青年が納得してるのって目の前に哲人がいたからでしょ。

頭で理屈は理解しても日常生活にトレースしにくいと思うんですがわたしだけ?


アドラーさんは要約しちゃうとすごくぼやけたり逆に珍しいとこだけが先鋭されちゃってあんまりよくないな、と思うので、哲学書だと思って最初から読んだほうがいい話なんだなと。

まったくもって、これ本気でやるならすごく怖いよ、っていう話。そりゃあ本の中で青年が常に顔真っ赤にして怒って、絶望して、苦しむのもわかるよ、という話。

でももしも本当に、幸せになりたいのなら、勇気がいるんだよ、というお話でしめくくり。

「誰かが始めなければならない。他の人が協力的でないとしても、それはあなたには関係ない。わたしの助言はこうだ。あなたが始めるべきだ。他の人が協力的であるかどうかなど考えることはなく」(p.282)

でも私としてはこういうしめくくり。みんな仏教マインドとりいれたら世の中ハレルヤなんじゃない?しがらみすてて愛に生きようぜ!(だって中で「そもそも諦めるということは元来「明らかにする」ということっていう意味なんですよって説明してて「諦念きたこれえええ」でしかないじゃないですか…仏陀の教えで自己啓発はおなかいっぱいだよ…)

『交換不能なものを受け入れること。ありのままの「このわたし」を受け入れること。そして変えられるものについては、変えていく”勇気”を持つこと。それが自己受容です。』―――『われわれはなにかの能力が足りないのではありません。ただ”勇気”が足りていない』(p.229)

いやーこの「分かる気はするけど実践むっずうううう」感覚、ほんとに仏教ぽかった!もうみんな仏教徒になればいいと思う。おやすみ!


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【ただたんにキーワードメモ】

①本の中で出てきてかつアドラーさんが批判を受ける「共同体感覚」は物議をかもすこと必至だからあえて触れないでおくとして、これを「仲間意識」として捉えたのはわかりやすかったな。考えてみれば、ひとりやふたり、「この人からの評価を気にしない」「支援できることはするけれど、あなたはあなた、わたしはわたし」「だけど、興味がないわけじゃなくて、心から愛してる」の感覚でいられる人っているよな、と。

それは私の中ではその人だけが特別だと思っていたけども、そりゃこれを基軸に考えたら世界はガラリと変わるよね、と。

②劣等感と劣等コンプレックスは違うんだってすごく力説してたのは面白かった。劣等感を感じて、もっと理想を目指していくことはいいんだと、ただそれをコンプレックスにしちゃあいけないんだよ、と。ようはあれだね、何事もこじらせるなって話だね!

③自己受容→他者信頼→他者貢献(はじめにもどる) ここ大事なとこなのにページ少ないよね???????あれ???????だれかおしえて???????

④言葉として一番気に入ったのは、勇気でも自己受容でも他者貢献でもなく「エネルゲイア(現実活動態)な人生」という用語。

スタートとゴールがあり、目標に到達しようとする人生は「キーネーシス的(動的)な人生」であって、エネルゲイアな人生は「いま、この時を」くるくるとダンスを踊るように、真剣に丁寧に生きていくことだと。

過去も未来もない、たった今この瞬間をダンスを踊るように生きるのだと。

くるくるとダンスを踊るように、はすごく素敵な言葉だなあ、って思うので忘れずに頭に残していきたい。


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