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【栞】【書評】煩悩(ストレス)解消のための「仏道」実践超入門 『煩悩リセット稽古帖』

日々襲い来る様々なストレスや迷いの中、「あぁぁっ!悟りを開きたいっっっ!!!」と一度でも叫んだことがあるあなたに読んでほしいのが今回紹介する『煩悩リセット稽古帖』である。

『煩悩リセット稽古帖』(小池龍之介著 ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)

住職であり、自身の修行の傍ら、webや著作、オテラ喫茶などで一般向けに仏道の実践を説く小池龍之介氏が書いた本書は

「ストレスの正体はなに?どこから来るの?どうやれば解消できるのか?」

という誰しもが抱える問題に、「仏道」というメソッドと本人が描いた四コマ漫画で答えてくれる。


冒頭から驚かされるのだが、仏道では何千年も前にストレスが発生する機構はすべて理論立てられているそうだ。理論に則った仏道の実践経て、「何者にも左右されず、心の動きとストレスをコントロールできる状態」を悟りが開かれた状態というらしい。外部からの刺激を受けることによって、心の中に蓄えられるエネルギーである「業(カルマ)」が発生し、時に発生する負のカルマのエネルギーが煩悩を形作り、その煩悩が心を汚染してストレス源になるのだという。

"今の日本では、すっかり忘れられてしまった本来の仏道とは、煩悩(ストレス)の仕組みを知り尽くして、それをリセットするたのレシピ集のようなものです。"(p.240)

と書かれているように、本書では仏道の中で確立されてきた様々な煩悩対策、ストレスコントロールメソッド活用法を、私たちの生活のなかでありがちな場面に則して紹介してくれる。

例えばこんな感じ


負の感情が湧きあがってきた時に使える「念」の基本的な使い方として紹介されているのがネガテイブな感情切り離しだ。不安な感情が湧き上がってきたら不安不安不安不安、、、ととなえる、怒りであれば怒り怒り怒り、、、と唱える。

"ネガティブな業を言葉のラベルで客観化いたしましたら、どんなイヤな感情も焼き尽くすことがかないます。"(p.31完全燃焼)

もう一つ、似たようなやり方の「三秒観」

"心の動きがポップアップしてきたのに気づいたら、その心が身体動作や言葉になって外に出てしまう前に、三秒間だけ待つ心の中でいち・に・さん、と数えてから行為に移すのです"(p.148)
"三秒という時間のふるいにかけられスクリーニングされたあとの言葉は、ごく自然に整理されて、棘た余計な自慢などが脱色された、優しい物言いになるはずです"(p.150三秒でできる仏道入門)

本書でいう仏道とは「何かをすれば、誰かが極楽浄土へ導いてくれる」という大乗仏教的なものではなく、自分の内面世界を覗き込み、自分を苦しめる要因に徹底的に向き合い悟りを開くことを目的とする原始的、上座部仏教的な実践のことを指している。

その実践には、生まれてしまった煩悩への対処法に加え、新たな煩悩を生まないためのメソッドも紹介されている。身近で取り組みやすいところで、五戒、十善戒をまず実践してみようと筆者は説く。

欲まみれの生活を送る人間として「そんなことできないから辛いんだよ!」といいたくなるメソッドばかりだ!!感情を抑えて、欲望を持たないようにして、、、そんなことしてたら人生つまらなくなっちゃうわ!!と普通なら思うところだが、すべてを実践できなきゃ悟れない、ということではないと筆者は言い、新しい悟り方を提示してくれる。

"「悟り」という言葉は実践を離れて、言葉のみが独り歩きをしているように思われます。〜中略〜 実際は、悟ってしまいさえすれば、頭の中であれこれ余計な事を考えて、「自分」にこだわる事がなくなりますから、すこぶるハッピーになります。〜中略〜 三%でも悟りに近づけば、人間関係も感覚能力も、三%は向上いたします。それは、三%ほど、悟りを味見した事になると申せましょう。"(p.172)

あ、3%でいいんだ、、、

QOLを上げるための「3パーセントの悟り」とは、斬新な発想のように思えるが、かつて生きる苦しみから抜け出すために出家し、修行を重ねた釈迦とやろうとしていることは同じなのかもしれない。

より良い生を楽しむために自分の心をコントロールするという基本的なことを、しっかりやろうと思わされる本であった。
札幌で座禅会開いてるお寺探してます。

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