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【not書評】【栞】最近読んだ北海道マンガ・本 vol.1

2週間に一本ずつ書評書こう!二人でかわりばんこで書けばまぁ続くよね!とか言って始めた書評ブログですが、すみませんでした。2か月も空けてしまった。ごめんなさい。
今回は北海道が舞台のマンガ・本で最近私が読んだものを紹介します。

一応農学部出身ですがお恥ずかしいことに読んだことが無いので、銀の匙は登場しません、悪しからず。まず紹介しますのは札幌が舞台のこのマンガ

波よ聞いてくれ (著:沙村広明 講談社刊) 

「無限の住人」「ハルシオンランチ」のギャグ・アクションの鬼才沙村広明がおくる、ハイスピードレィディオトークギャグ。飲み屋で管を捲いていたところ、地方局FMラジオ局やり手ディレクターに才能を見出され、(はめられバイトを首にされ)ラジオパーソナリティを目指すことになったスープカレー屋のバイト店員鼓田ミナレ(26)のお話。同い年だこの人。

地方FM曲ならたぶんどこでもよかったのだろう、物語の進行上北海道である必然性を全く感じさせない構成がすばらしい。道民の生活基盤であるコンビニチェーン「セイコマ(正式名称セイコーマート)」を「セイコー」と略して読者に指摘される(単行本では修正済)という適当さ。しかたない、縁もゆかりもない土地を二回の取材旅行で描こうってんだもんな・・・
埼玉でも山形でも大分でもよかったであろう。スープカレーじゃなくモツ焼きそばでもオムカレーでもスパカツでもよかったであろう札幌マンガ、普遍的な笑いが詰まってます。沙村広明最高!!沙村広明大好き!!!

羆嵐[kindle版] (著:吉村昭 新潮社刊) 

ユリ熊嵐が放映されているときに、「せっかく北海道に住んでるし読んでみるか」とポチッた実際のヒグマによる村落襲撃事件「三毛別羆事件」をもとにした小説である。この事件をもとにした小説はいくつかあるのだが、何度か見たことのある表紙の吉村昭作の者を選んだ。
札幌と稚内のちょうど中間くらいにある苫前の三毛別村(現三渓)で、羆(ヒグマ)が数度にわたり民家を襲い、開拓民7名が死亡、3名が重傷を負い、事件を受けて組織された討伐隊が問題の熊を射殺した、という事件。

一度北海道の冬を経験したからこそだろうか、厳冬の山村の身が凍りそうな寒さの描写が非常にリアルだ。
実際に妊婦が襲われ、獲物に執着した羆が結託した住民らの追い払いにもあきらめず、何度も民家を襲ったらしいのだが、克明にその様子が描かれており鳥肌が立つ。

男たちは、床と土間に肉と骨の残骸をみた。
かれは、羆の荒々しい呼吸音にまじって骨をかみくだく音も聞いた。彼の耳に、「腹、破らんでくれ」と、羆に懇願するような叫び声が聞こえた。それは、臨月の斎田の妻が発する声だったという。

円山動物園と釧路動物園でヒグマを見た後なら一層楽しめそうな作品だ。
1915年(大正4年)の出来事なので今年でちょうど100周年、追悼のためにも苫前の事件の現場(復元された家・羆・追悼碑がある)を訪れたいと思っている。

キムンカムイ (著:三枝義浩 講談社刊 全4巻) 

久々に再開した中学生の仲良し3人組が北海道「恩根湖」にキャンプに行くが、遭難。取材中に遭難したテレビクルー、羆に友人らを殺された大学生らと合流したところを人間と人間の食べ物に執着する羆に襲われる!!という猛獣パニックドラマ。絵柄がMMRと彼岸島を足して2で割ったみたいな感じ。

渡ってきた一本橋が誰かの手によって落とされたり、疑心暗鬼になり仲間割れしたテレビクルーが遭難死したり、力を合わせて熊を倒そうと「この植物見たことある!」って中学生がトリカブトから毒を作り出して手製の弓矢の鏃(偶然見つけた黒曜石!を加工!)に塗ったくったり、元特殊部隊の脱獄囚が突然現れて「俺が王様になる」とか言い出したり・・・

サブタイトルが”NATURE PANIC DRAMA”ってなってるのに「人間が一番怖いね」という教訓が得られる人災マンガである。

が、物語の根本にあるテーマは案外手堅く、
「襲ってきている羆が、もしかしたら3人が小さい頃一緒に餌付けしてしまった小羆(クロ)かもしれない・・・でもそんなひどいことをするクマじゃないはずだ!」
という「人間の身勝手さ」である。

結局、襲撃してきたヒグマはクロとは別の個体だったのだが、事件に巻き込まれて手負いになったクロ(と思われるヒグマ)も

と、最終巻の最後にちょろっと出てきて至極まっとうな説教を垂れる地元の猟師の長老(エカシ)に殺されてしまう(第4巻 p.223)。

自然の厳しさ、人間の怖さ、困難にあきらめずに立ち向かうこと、人とクマは相容れない存在であるということ・・・を学んだ少年たちの成長が描かれてはいるのだが、このエカシが3巻から物語に絡んできていたらもっと深みが出たのになーと思われて残念である。説教臭いエンディングになってしまっている。

とりあえず第一弾ということでこの3冊でした。次回は今大人気の「ゴールデンカムイ」と北海道を語る上では欠かせないマンガ家佐々木倫子の「どうぶつのお医者さん」「チャンネルはそのまま!」の予定です。

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