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「三毛猫にゃん太の通販ショッピングモール(にゃん太通販)」の代表 木下みづきさん

私事ですが、我が家にはネコがいます。
まだ生まれたばかりの頃、嵐の中、知人が捕まえた野良猫でした。

縁あってやってきた我が家のネコは、いまでは、すっかり家族の一員となっています。

以来、ネコのグッズだったり、ネコにまつわる話題が目にとまるようになりました。

そんな中、ネコに軸を置いたアイテムをネットで販売しながら、積極的にネコの保護活動を支援している方との出会いがありました。

「三毛猫にゃん太の通販ショッピングモール(にゃん太通販)」の代表、木下みづきさん。

どんなことがきっかけで、いまの日々があるのか、いろいろとお話を伺ってきました。


仙塩ひと・しごと図鑑

ーー この活動を始めたきっかけは、やはり好きが高じて…だったんでしょうか?


木下さん

いいえ、実はそんなにネコって得意じゃなかったんですよ(笑)


仙塩ひと・しごと図鑑

ーー え…(絶句)? そうなんですか?


木下さん

はい。小さい頃飼ってた犬に野良猫がちょっかけたり、引っ掻いたりするので苦手でした


仙塩ひと・しごと図鑑

ーー 確かにそうですけど…それが180度変わったのは、どんな転機があったんでしょうか?


木下さん

独身の頃、地元の釣具店で働いていたんです。趣味が釣りだったので、ちょうどいいかな、くらいの感覚だったんですけどね。で、働いているうちに、こうした方がいい、こういうことをやった方がいい、といろいろ勝手にやらせてもらっていたんです。

当時はまだ珍しかった中古の釣具を販売したり、エサとなるアオイソメを太さごとに箸で1本ずつ仕分けたら、大好評だったんですよ(笑)。


仙塩ひと・しごと図鑑

ーー ネコがぜんぜん関係ないですけど、アイディアを具現化する行動力は、この頃から始まっていたように思えます。


木下さん

そうかもしれませんね。とにかく「こうやってみよう」と思い立つと、すぐに取り掛かっていましたから。その頃、インターネットやホームページが世の中に少しずつ広まり始めたのを見て、自分でも勉強してお店のサイトをつくっていました。


仙塩ひと・しごと図鑑

ーー それはすごい!当時としたら画期的ですよね


木下さん

その後、釣具店の常連だった今の主人と出会って結婚することになりまして。
それから、主人の事情で新潟へ移り住むことになったんです。
新潟に引っ越した時、出会ったネコが、にゃん太でした。


仙塩ひと・しごと図鑑

ーー にゃん太通販の名前の由来は、そのネコなんですね?


木下さん

はい。さっきも言ったように、私はネコが得意じゃなかったんですけど、ネコ好きの主人に引っ張られるようにして、飼うことになりました。

ただ、新潟に住むのは元々1年だけだったので、また仙台へ引っ越すことになったので、本来はそこでお別れする予定でした。

そして、いよいよ仙台に出発する時、にゃん太とも、もうお別れだね、という段階になったのですが、思わずクルマに乗せてしまいました(笑)。


せ仙塩ひと・しごと図鑑

ーー ドラマティックですね(笑)


木下さん

ところが大変だったのはその後だったんです。

連れて来てみたものの、だんだんお腹が大きくなっていって、おかしいな、おかしいなと思っていたら...


せ仙塩ひと・しごと図鑑

ーー それは、もしや...?


仙塩ひと・しごと図鑑

はい、ほどなくして、4匹のネコが生まれました(笑)。
子供たちはそれぞれ知人たちが飼ってくれましたが、1匹だけは我が家に残して「タマ」と名づけました。それから、また仕事の関係で今度は栃木県へ引っ越しました。

そこで、母親のにゃん太、タマとの生活をブログで書き始めているうちに、読んで下さっている方々、いまのSNSでいうフォロワーたちとの交流が始まっていきました。

そんな中、ブログを通じて、嫁ぎ先で辛い思いをしている方と知り合ったのです。

彼女は手作り作品を作ってオークションで販売することによって、どうにか自分を保っていたのですが、そんな彼女をなんとか応援したいな、と...

WEBデザインなどを手がける私の主人にも助けてもらいながら、自分たちで通販サイトを運営することに決めました。

それが「三毛猫にゃん太のショッピングモール(にゃん太通販)」の始まりだったんです。


仙塩ひと・しごと図鑑

ーー 人助け、が元々のスタートだったんですね。


木下さん

最初は軽い気持ちだったのですが、いろいろな方々と交流していくうち、有名な作家さんと繋がることが出来たり、野良猫として生きる厳しさや、野良猫を生み出してしまっている我々人間の側面、それまで知らずにいたことが分かるようになり、そういうネコや犬に身銭を切って頑張っている方々の存在も知ることになりました。

もっと支援するにはどうしたらいいか、と考えたのが「にゃんにゃんBOX」というシステムです。


仙塩ひと・しごと図鑑

ーー これまでの通販とは、どう違うのでしょうか?


木下さん

たとえばプロの作家さん、その道で十分生活できるレベルの方々だけではなく、まだお金をもらうほどのレベル(技術や数量)に達していない方、自分が作ったものを手に取ってもらうことをモチベーションにしている作家さん、さらにはお客様が購入して集めたお品など、全国の方々から無償で提供された沢山のお品を文字通り箱詰めにして、お客さんに買って頂きます。

私もそこでは利益は取らず、全員が無償で行なって、売上は全額寄付しています。


せ仙塩ひと・しごと図鑑

ーー 全額寄付は思い切りましたね。


木下さん

全額寄付にすることで、みんなが一つの気持ちで団結してやれると思ったからです。

1回目、2回目の時は数量も金額も少なくて10万円台だったのですが、いまでは100万円以上を売り上げるようになり、すごい時には2時間で250セット売れることもありました。


仙塩ひと・しごと図鑑

ーー 寄せられた好意が、そこまで大きくなるとは本当に驚きです。
売上は全額寄付とおっしゃいましたが、どういう方々、団体などに贈られるのでしょうか?


木下さん

私たちの方針としては、顔の見える相手に対して優先的に支援しています。お金を送るのはいいですけど、どういう使われ方をしたか分からない場合もありますし、遠く離れた保護団体の場合、Webサイトでの運営状況と実際の活動内容が大きくかけ離れていることもあります。


仙塩ひと・しごと図鑑

ーー 実は木下さんの活動を知るきっかけになったのは「にゃん太チケット」というTNR(野良猫を捕まえて、避妊手術した後、地域ネコとして生活できるようにする。Trap・Neuter・Returnの略)のサポートだったのですが、もはや行政のように仕組みを構築しているな、と驚きました。
にゃん太通販を軸にした活動は、イベントにも発展したわけですね?


木下さん

東日本大震災直後から「にゃっ展」という名前のイベントを開催しています。

最初は、百貨店の催事に参加したんですね。さすが、有名店なので集客はよかったのですが、主催はあくまで百貨店なので、自分たちが100%コントロールできないフラストレーションと、自分たちならもっとこうできるのではないか、という思いから、自分たちで会場を探し、自分たちで開催することにしました。

いろんな人に見てもらうには東京がベストということで、東京でも随分やりましたが、近年は新型コロナウィルス感染拡大の影響もあり、オンラインでの開催になりました。


仙塩ひと・しごと図鑑

ーー 2023年は、以前のように会場を借りての開催になるんですよね?


木下さん

はい。2023年のにゃっ展は、5月19日から21日の3日間、七ヶ浜国際村で開催となります。

作品の販売だけではなく、フード関係の出店も多いので、いろいろな方に来て頂きたいです。

そのなかでも目玉なのが、女優・杉本彩さんの講演です。


せ仙塩ひと・しごと図鑑

ーー 杉本さんは、公益財団法人の代表理事として、動物保護、動物福祉の啓蒙活動に力を入れていらっしゃいますよね。


木下さん

私たち自身で啓蒙活動することも大事なのですが、やはり、杉本さんのような有名人が語りかけることで、より深く心に残ることもあると思います。
できれば、沢山の方々に聞いて頂きたいです。


仙塩ひと・しごと図鑑

ーー 通販サイトの運営だけではなく、イベントの開催、チャリティなども手がけていますから、とても忙しいと思うのですが、結構しんどいことも多いのではないでしょうか?


木下さん

つらい、ということはないですね。もちろんトラブルが発生すれば、その瞬間は「大変だ」と感じるでしょうけど、それをそのままにしたくないので、どうにかしなくちゃ、に転換してます。

もちろん、最初からうまく自信があるわけじゃないですけど、あきらめないで、出来ることはなんだろう、と工夫して乗り切ってきたんだと思います。
それに、後から振り返ると、その時に起きたことが必ず自分の糧になってると感じ、無駄なことはひとつもないと思っています。


せ仙塩ひと・しごと図鑑

ーー ネガティブな出来事もトラブルも、ポジティブなものとして捉える考え方、とても素敵だと思います。では、よかったな、と思うのは、どんなことでしょう?


木下さん

たとえば、イベントを含め、私たちの活動には沢山の方々が賛同してくれています。

作品を手掛ける作家さんもそうですし、普段は、地元の動物病院で、小さな命を救うために昼夜問わず奮闘しているスタッフさんも、自分の休みを返上して手伝ってくれていますから、本当にありがたい限りです。

そういう方々が「関わってよかった」と思ってくれたり、それがきっかけで人生が変わったり、普段の生活に活かされた、というお話を聞くと、とてもうれしいです。


仙塩ひと・しごと図鑑

ーー 木下さんの活動は社会的にもとても意義深いもので、今後もたくさんの方々が携わっていくと想像しています。おそらく、自分にも何かが出来るのではないか、手伝えるのではないか、と手をあげてくれる方々も現れると思います。
とはいえ、突然やらせてください、手伝わせてください、といって出来るのかどうか不安もあると思います。その点は如何でしょうか?


木下さん

私としては、にゃん太が残してくれた、この活動できる場所を出来るだけ長く続けていきたいと考えています。いま、集まってくれている方々も、モノ作りで支援したい、という方は作品をつくることで貢献してくれていますし、ほかにもいろいろな方法で手伝ってくれています。

まずは、出来ることから始めてもらうのがいいと思います。

あとは、今回のような杉本彩さんの講演を聞きに行ってみる、啓発のイベントに行ってみる、シェルターのお手伝いにいく、譲渡会へ行ってみてもいいと思います。

いろいろな活動を見てもらうことで、自分が出来ること、やってみたいことが鮮明になってくるので、その時に「これならやれそう」「こういうことを手伝いたい」とおっしゃってくれたら、なおありがたいと思います。


仙塩ひと・しごと図鑑

ーー 最後に木下さんの「宝物」とは何ですか?


木下さん

ネコを介してやってきた、たくさんのご縁ですね。
にゃん太、タマをはじめ、たくさんのネコたちがたくさんの縁を運んできてくれたと思っています。

あの時、にゃん太に出会っていなかったら、いまの私は無いと思いますし、他のネコたち、ネコたちと繋がっている方々、そういった全ての縁が、私の宝物です。

きっと、これからもそういう宝物がたくさん増えると信じています。


たった1匹のネコとの出会いが、ここまで広がるとは思いもよらなかったと語る木下さん。

様々な活動は、木下さん自身の生き様を色濃く映しているように感じました。

木下さんが抱く強い思いが、いろいろな人に伝播し、いろいろな人を動かしていく...

まるで幕末の志士のような行動力には驚くばかりでした。
にゃん太通販が、これからどのように進んでいくのか、目を離せそうにありません。


にゃっ展

にゃん太通販

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Written by 竹田 知広


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