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これが日常となる初日営業とうさぎ

 工学部が僕を誘うとき「仕事的には楽だよ。あ~でも精神的なところとか、苦手とかはあるかもね」と言ってたことは正しかった。確かに肉体的には負担は全くなかった。最も重いもので『フルーツ盛り』であったが、フルーツ盛は席に出される料理の中ではハイライトであり両手で丁寧に運ぶため、トレイにアイスペール(氷を入れる容器)を2台積んで運ぶよりも軽かった。営業中は目障りでない程度に歩きテーブルとホステスさんの様子を確認し、適時要求を満たしていく。跪いてのアイスの交換、灰皿の交換、食事の提供な

    • ようこそ!ミラノへ

      「ようこそ!ミラノへ」 店長は張り切って手を広げてくれた。薄い笑顔は相変わらず張り付いたままだった。店の入り口は会計を行う小さなフロントと、数百本はあるネームプレートのついたお酒が棚に鎮座している。お酒に詳しくない自分から見ても、上に行くほど高いお酒に見えた。 工学部の彼に準備しておいてほしいと言われて急いで授業の合間に準備した履歴書を差し出す。 「えーと。シオン君ね。シオン君は、飲食のバイト経験はある?」 「いえ。コンビニのレジと品出し、あとファーストフードのキッチンくらい

      • 1997年K県Y市の或る日常

         この物語は、1998年頃に僕(シオン)が体験したお話です。会社の同僚に、ホステスさんのいる超高級クラブでバイトをしていた昔話をしたところ思いのほか面白いと言ってもらえて、あの頃の自分のいた場所が光輝いて見えてきました。  なにせ30年近く前のことで、きっとこのままだと近い将来今よりももっと思い出せなくなってくるだろうと思い、この機会にnoteに残すことにしました。  僕にとっては、青春が詰まっていて鼻腔が疼く話を、思い出せる範囲で少しの誇張を混ぜて身バレしない程度に綴ってい

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