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【大事なハーフタイム】 プレミア 第34節 リバプール vs チェルシー


■得意なことを消し合う前半

リバプールはキックオフから左WGマネへのロングボールで前進を図る。
狙っているのはマネではなく、チェルシーの右SBだろうか。
そのこぼれも回収も含めたネガトラ(攻撃から守備への切り替え)とプレスによって、リバプールは相手陣地でのプレーを増やして行く。
リバプールのネガトラもプレスも、まずはボールに近い選手またはその後方に位置する選手によって、縦パスのコースをすぐに切って、それによって作られた時間を利用して横方向に逃さないような陣形を作っていき、出しどころの無くなった相手からボールを奪う。
基本的なプレス方法だし、言うのは簡単だが、世界屈指のパス能力を誇るチェルシーを相手にそれをやるには、高い走力とポジショニング判断能力、そして何よりその緻密なプレーをチーム全員がやり続けるメンタルが必要になる。
そんなハードなプレーを戦術として行けると思える監督も含めて、とんでもない集団だ。
チェルシーは「縦パスからの落とし」を使って前進するのが得意だ。それを縦パスから徹底的に潰してくるリバプールの守備は、チェルシーにとっては想定以上に嫌だっただろう。
そんな高い集中力を持って試合に望んだリバプールは相手陣内でのプレーが多くなるものの、コンパクトな4-5-1ブロックを作って守るチェルシーに対して、なかなか有効なフィニッシュが見つからない。
遅攻でラスト1/3に辿り着いた時に攻めあぐねてしまうのはリバプールの課題でもある。
ただ、そうなってしまっても、とりあえずクロスを上げてそのこぼれやネガトラからのカウンターや、強力なセットプレーなど、手段を持っているのは流石だが。

一方、得意の「縦パス落とし」が封じられ、自分陣地のプレーが多いチェルシーは、ある程度はそれを受け入れるつもりだったのか、相手陣地ではそれほど積極的に奪いに行かず、カウンターから左WGウィリアンを中心とした攻撃で相手ゴールに迫る。
かなりの割合で左サイドのウィリアンからの攻撃を試みるのは、守備時に積極的な参加をしないリバプール右WGサラーの背後を使いたいからなのか、攻撃面で違いを出してくる右SBアーノルドの上がりを牽制するためか、それとも守備の要左CBファンダイクがいないサイドから攻めるためなのか、チェルシー右IHカンテサイドをあまり上らせないことでネガトラに備えるためなのか。
少なくともチーム最強の攻撃力であるアザールをそのサイドに配置していないことと、守備面の意図から、強みを出すための策では無いとは思うが。
その守備面の意図として。チェルシーが積極的に奪いに行かないのは、リバプールが普段行う、2-5-1-2的なビルドアップ布陣で、ハーフライン付近に位置する「5」からの速攻をやらせたくなかったからではないだろうか。
ちょっと引いた位置にいる「5」にスペースを与えた瞬間、そのビルドアップ位置によって上げさせられたDFラインの背後を狙うサラーマネの高速部隊とライン間で嫌な位置をとっているCFフィルミーノを中心に、一気に襲いかかってくるのはリバプールの得意技だ。
それを封じるためにも、飛び込みすぎずに「5」の自由を消して、そこで奪えないようであれば徐々に下がってリバプールの不得意な形に持って行く、そんなことをやっていたのではないだろうか。

そんなチェルシーも遅攻でラスト1/3に辿り着いた時に攻めあぐねてしまうのはリバプールと同じで、そんな時のチェルシーの解決策は「アザール頼む」だ。
そうならないようにするためにも、チェルシーはあまり高い位置を取らない守備を選択したのかもしれない。
ただそのせっかくの引いた位置からのカウンターも、リバプールの帰陣の速さによってそこまで効果を発揮することは難しかった。

お互いに「縦パス落とし」と「ハーフ5速攻(今勝手に名前つけちゃった)」という得意技を消し合い、不得意を強いられて決定機を作るのが難しい。
そんな状況の中では、やはり相手ゴール前にいてボールを保持している時間の長く、奪い方からも発動できる「ハーフ5速攻」という武器を持ったリバプールがチャンスを多く作って行く。
そんな前半。

チェルシーCBリュディガーの怪我は残念だったが、緊張感のある良い試合だ。
怪我はいつ見ても悲しい気分になるな…


■ウィンガーとしてのサラー

後半、リバプールが動いてくる。
前半からもちょくちょくチャンスがあった形ではあるが、後半ははっきりと右WGのサラーをサイドに張らせて、サラーのスピードに乗ったドリブルを生かすことにした様子。
前半の動きを見て、そこに勝機を見出したのだろう。
普段のサラーは前半のように、主に相手SBの内側寄り(CB-SB間)にポジションを取ることが多く、いわゆるWGと言われるポジションのようにサイドに張りっぱなしになることはあまり無いのだが、後半が始まってからは意識してタッチライン際に位置取っているようだ。
リバプールのサイドレーンは基本的には両SBが担当し、IHとWGが流れでローテしながら使って行く印象があるので、右SBのアーノルドを上げずに、はっきりとWGを張らせているのはとても珍しく感じる。
周囲の味方も無駄にサラーに近寄らず、チェルシー左SBエメルソンとスペースがある状態での1対1を仕掛けられるようにしている。

リバプールが右SBを上げないようにしたのは、前半に見られたチェルシー左WGウィリアンへのカウンター予防を兼ねてなのかもしれない。
サラーが中に入った時はCFのフィルミーノが右幅を担当したりして、右SBのアーノルドがあまり上がらないような仕組みになっていた。
そしてアーノルドが上がらないなら、そのアーノルドを担当しているウィリアンは守備ブロックに参加しづらい、という感じか。

そしてそんな変更が見事にハマる形でリバプールが先制。
まさにスペースを得たサラーがスピードに乗ったドリブルからワンツーを狙い、そのこぼれ球を拾ったリバプール右IHヘンダーソンからのファーサイドへのクロスを、右ポスト前でフリーになっていた左WGマネがヘディングで決める。
直接サラーがアシストやゴールをしたわけではないが、あのスピードでサイドからゴールに迫ってくるサラーによって、DFに混乱を招いたことは間違いないだろう。

などと、書いていたら息つく暇もなく、同じようにサイドタッチライン際でボールを受けたサラーが、今度は内側真横にドリブルで侵入して行き、ペナルティエリアの外から豪快なシュートを突き刺して追加点。
GKの対応はノーチャンスだったのか?と疑問に思うところがあるが、シュート自体が素晴らしいのは間違いない、スーパーゴール。
こんなゴールはリバプールのクロップ監督も流石に想定していなかっただろう。


■少しの反撃

チェルシーは後半に向けてどんな修正をしてきたのかよくわからないまま2-0でリバプールがリード。
チェルシーはすぐさま右WGハドソンオードイに変えてCFイグアインを投入し、アザールを左WG、ウィリアンを右WGにした布陣に変更。
そのイグアインがリバプールCFフィルミーノのように下がって受けて散らす、という動きでチームの前進を助ける。
そのイグアインの活躍と布陣変更からマークがズレやすくなったチェルシーの前線、2点差で少し意識が変わったのか下がり気味かつスピードが落ちて出しどころの制限が甘くなってきたリバプール、などの影響によって、チェルシーが相手陣地でプレーする時間が増え、チャンスも増えて行く。

が、リバプールがその対応に慣れてきたら、反撃もそこまで。
前半にリュディガーの怪我で使ったのと、後半にイグアイン投入で使った交代枠の残り1つを、左IHロフタスチークに変えてバークリーを投入に使ったチェルシー。
その交代で劇的に試合展開を変えられるわけでもなく、最後に余裕のサラー交代でそのまま試合を終わらせたリバプールが勝利。


■感想

自分的には狙っていることがわかりづらい試合だった。

リバプール、前半数回見られたマネサイドへのロングボールは「相手がCBにプレスに来たら」みたいな条件だったのか?上手く陣地が取れない前提での戦術だったのかもしれない。
ということはここまで押し込むことは無い想定だったのだろうか。
後半は、「押し込めるならこうしよう」の戦術になっていたっぽいし、そういうことなのかもしれない。

チェルシーはチェルシーで、「ロングカウンターを狙ってます」でよかったのか。
なんかイマイチ奪いたい位置がわかりづらかった。
どこで奪って、どんな得点を考えていたのだろう?
後半に至っては修正点がわかる前に失点してしまった感じがする。


そして新しい可能性、ウィンガーサラー。
WGを開かせて、逆はSBが幅とって…
いや、もうシティじゃん!って言いたいところだけど、後方の形を変えないところが全然違うね。


ロバートソンのスリップについての話が熱かった。


どうでもいいけど、ロフタスチーク、はなんか言いたくなる名前。


終わり

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