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ルカクはFWではない

マンチェスターU(以下 マンU)はルカクの使い方を間違えているのでは?
というお話。


■「狭い中で前を向ける」選手かどうか

たまたま見た試合でのマンUの3トップ。

3人にはそれぞれ特徴がある。
ざっくりとした印象は図の通り。

そんな中でもルカクの
「狭い中で前向けない」に注目して欲しい。

「狭い中で前を向ける」という能力は、相手のプレッシャーが集中する中央でプレーするFWとMFにとってとても重要だと思っているスキル。
これは
①ドリブルで前を向けるか
だけと言うことではない。もちろんそれもあるが、
②前を向いた状態で受けられるか
③トラップで前を向けるか
④ダイレクトやツータッチで他の方向にプレーできるか(味方に前を向かせる)
も含まれる。
この中のどれか一つでもトップクラスでも通用するものがあれば中央でプレー可能な「狭い中で前を向ける」スキルを持った選手といっても良い。
が、もし一つも無いのであれば中央はやめて、密集地になりづらいサイドにポジションを移した方がいい。

この「狭い中で前を向ける」スキルの上記4つのどれかを実現するには、
・周囲の状況を正しく把握する視野の広さ
・味方のパスに対してタイミングよく良い場所にいけるポジショニングの良さ
・マークを外す力
・狭い中でもボールをコントロールできるテクニック
・狭い中で素早く方向転換できる俊敏性
・空中戦や接触プレーへの強さ
・囲まれていれも落ち着いて相手との駆け引きに勝てる思考力
などの力の内のいくつかは必要になってくる。



■ルカクの適正

そんな中央のFWに必須の「狭い中で前を向ける」スキル全てが、ルカクはトップレベルとしては物足りないと感じていて、最近見た試合で改めて確信した。

特に多くの勘違いがあるような気がするのが、デカイ強い=空中戦に強い&ボールが収まる、という認識。
ルカクはデカくて強いので、この部分がトップレベルだと認識されていそうだが、実際は特別空中戦に強いわけでもなく特別ボールが収まるわけでもない。

主観の印象で申し訳ないが。

ルカクは弱いとは言わないが意外と空中戦に強くない。
俊敏性や反応速度の無さなのか、落下地点の予測が下手なのか、有利な状態で競れていないことが多く、空中戦で思ったより勝てていない、というか空中戦に参加できていないことがある。
マンUにおいても、ロングボールのターゲットはポグバかフェライニになっているシーンが見られ、ルカクには意外とロングボールが出ていなかった印象。

また、縦パスなどを収める際にも囲まれた状態でキープできる能力が高いわけではなく、見えていない方向からの突っつきで簡単にボールを失ったり乱れたりして、味方の上がりを待ってパスというプレーの成功率はあまり高いように感じなかった。

ただ、相手との接触プレーそのものは強く、接触さえしていれば空中戦や縦パスにおいて自分の間合いに入らせないプレーができる。
でもそれを発揮できるのはサイド寄りの位置ばかり。
これは予想だが、サイドでの接触プレーが安定しているのは、接触によって相手を感じられることで後方を確認する必要がなくなり、かつサイドであれば死角から相手が出てくることが無いため、周囲の状況を把握しやすいのでは無いかと思う。
そんな接触プレーの強さと、さらに走力も高いものを持っているので、空中戦よりも、広いスペースに出たボールを追いかけるシーンでの収まり力はかなり高い。

これらの特徴から、ルカクはFW=つまり純粋なセンターフォワードでは無いのではないかと。
そしてWGが適正なのでは無いかと考えた。



■ルカクをサイドに置くとしたら

ルカク本人も本能的なのか戦術としてなのか、サイドに流れる傾向があるようにも見えた。
きっとサイドの方が性に合っているんだと勝手に思っている。

もちろん「FWは前を向けるスキルとかどうでも良い。ゴール前の得点力だけあれば良いんだ。」という方もいるだろう。
それも正解だとは思う。
が、その場合は残りの10人で相手ゴール前まで行ける力が必要になる。
特にマンUのようなビッグクラブは相手が色々な守備対応を考えて来るケースが多い。
スペースに走られたら怖いルカクを抑えるためにラインを低めに設定するチームもたくさんあるはず。
また、今のマンUのビルドアップはすぐに詰まるので、そこへのプレッシャーからチャンスを作ろうとする格下のチームもあるだろう。
そんな状況にも関わらず、10人で相手ゴール前までボールを持って行くことが効果的だとは思わない。

得点力が高いFWがCBの真ん中に居続ける、これも確かにビルドアップに全く貢献していないわけではない。
でもビルドアップが上手ではないチームの最前線のど真ん中が
・空中戦はできない
・縦パスは処理できない
・DFラインとの駆け引きで飛び出したり味方にスペースを作ったりするわけではない
という貢献度の低さでは、効果的な前進はかなり難しいのではないだろうか。

だがそんなルカクでもWGならビルドアップでも貢献できる。
サイドではプレー方向が180°のため、欠点の一つである視野の狭さを補うことができ、囲まれることも少なく一人の相手を抑えながらのプレーになることで、縦パス収め、空中戦、スペースに出したボールに走る、という強みを活かせる状況が増える。
さらにWGの位置であれば、ロングボールや逆サイドからのクロスに競り合うのは、基本的にサイズが大きくない傾向のあるSBが主な相手になる可能性が高く、更に勝率を高めることにもなり得る。

また、ルカクに得点力があるとして「WGなんて、そんなにゴールに遠いところに置いたら得点力を活かせないじゃないか」という声も聞こえてきそうだが、アタッキングサードまで進めた後にゴール前に行けば、そこからでも十分に得点力は活かせると思う。
むしろゴール前のゴチャゴチャに最初からいるよりかは、後から入ってきた方が、苦手な状況把握の負担が減って、むしろプレーしやすいのではないか。

更に、WGの位置ではカウンターでも脅威。
カウンターでスペースに出されるボールが、ルカクにとって苦手な視野の確保が必要な後方からのボールではなく、背後を心配する必要がなく半身で全体が見えている状態でのボールになるし、サイドであれば中央と違ってGKの飛び出しを心配する必要も減る。

どっちサイドに置くのかはチーム事情や相手によって変えて良い部分だが、オススメは左サイド。
キープするときに利き足でキープできる右サイドも捨てがたいが、それだと狭い中央に向かってプレーする機会が多くなってしまうので、体を入れれば無敵のルカクを生かすためにも、利き足側から奪いに行けない左サイドで相手を引きずりながらの前進を期待できる左サイドをオススメしたい。



■マンUでの運用

と、WGに置く良さばかり書いたが、問題は守備にありそう。
現状のタスクはわからないが、相手のビルドアップの最低限の妨害すら上手にこなせているように見えない。
WGの位置に残したままカウンターを狙いたいが、そうすると相手の攻撃を止めることが困難になってしまう。(今も大した貢献が出来ていないから変わらないと言ってしまえばそれまでだが)

そんなこんなで考えた守備方法がこれ。

よくある後方3人ビルドアップに対しては、ルカクは3人の内の一人を監視することにして、運動量豊富なFW2人と中盤3人の5人で、白い線で繋いだ相手6人を監視しボール奪取を狙う。
相手が後方2人ビルドアップに変えてきても、

ルカクが一人見て、FW中盤の5人で相手6人を見るやり方は変わらない。
もちろん全て相手と自戦力によるけど。

攻撃もルカクが真ん中やってると、中央を経由するためなのかサンチェスとリンガードが中央に寄ってきて幅をとる人がいなくなり、全体的にスペースが狭くなっちゃうことが多かったけど、ルカクをWGに張らせといていいなら、サンチェスとリンガードがやや下がることで、

こんな感じで、幅によるスペースをある程度確保した上で、ハイライトしたエリアでの数的優位が確保できるんじゃないかと思う。
(サンチェスとリンガードは逆になってもいいと思う)
数的優位が確保できる理由としては、ルカクが怖くてDFラインを上げづらいが、サンチェスとリンガードの位置にDFラインから奪いに行くと、ルカクの落としや、そのスピードのある二人の個人技やコンビネーションなどで背後を突かれてしまう恐れがあるので、ラインが図のような半端な状態にせざるを得なく、DFラインで3人余らせることになってしまうから(=ハイライトのエリアの中では攻撃9人:守備6人)。
もちろん相手が中盤を下げてサンチェスとリンガードのスペースを消す方法もあるだろうが、そうなったら後方から楽に進ませてもらえばいい。

相手陣に進んだ後も

この形を作れれば、そこからのいろんな攻撃が見えて来るはず。
例えばサンチェスが中央ならWGにボールが入った後の飛び出しなども器用にこなすだろうし、ボグバやフェライニなどがインサイドハーフなら、中央を経由することで空いたサイドにボールが入った後にゴール前に走りこむことも可能(中央が経由できずに最初からサイドだと十分なスペースがなくてクロス精度に支障が出る可能性がある)。

とまあマンUでの運用を考えてみたが、やはり自戦力と相手によって変わる部分なのでこの辺で。



■モウリーニョの考えとは?

ルカクのWG適正はあくまで筆者の予想だが、現状でもルカクのセンターFWは効果的には見えない。
当時のドログバを期待しているのかもしれないが、ドログバは「狭い中で前を向ける」を高次元で行える選手であり、ルカクとは違う。
もしかしたらドログバのように育てている最中というのであればわからなくもないが、勝ちたがりのモウリーニョがそんなことをやるのだろうか?
現状、ルカクのセンターFWはかなりのリスクがあるように見えてならない。

もちろん筆者が見た試合のルカクが良くなかっただけの可能性もあるが。

ということで、今後も好きな監督の一人であるモウリーニョがどうやってルカクを生かすのか楽しみに見ていこう。



終わり


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