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フィルムスキャン精度の向上

去年の夏あたりだったか、フィルムの現像出すときにふと思った。

僕はいつもビックカメラにお願いしていて、現像代660円、CD書き込み550円、合計1210円かかる。
このCD書き込みくらい、家で出来そうだな。
そうしたらもう1本現像するくらいのお金が浮くのに。

しかも書き込みされる写真の解像度が約200万画素(1840 * 1232、72dpi)と、インデックス確認になら十分だが、作品として扱うには到底厳しい代物だ。昨今は、CD を食える PC すら珍しくなってきた。

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いまはなき、Fujifilm Superia 400。フロンティアラボのスキャンは、非常に精度がよく、個人的にラボの補正は大好きだ。

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スキャナーで最初に候補にあがったのは、Plustek OpticFilm シリーズだ。国内外問わず人気が高く、フィルムホルダーを手動でスライドしながら一枚一枚スキャンしていくタイプになる。7200 dpi と高い解像度でスキャンすることができる。
買うに至らなかった理由が2つある。

1つ目は、そのスキャン方法にある。フィルムホルダーをスライドするタイプでは、スキャンされるコマ以外はスキャナーからはみ出した形となる。これはホコリがつきやすく(もちろん除去機能はある)、手動でスライドするのも煩わしく感じると思った。また、36枚撮りロールの場合、6回ほどフィルムの入れ替え作業が生じる。ああ、めんどうだな...。

2つ目は、120mm に対応していないことだ。最上位の OpticFilm 120 なら対応しているのだが、なかなか高価であり評判もあまり良くない。これは自分の中で決め手となった。

最終的には、フラットヘッドのスキャナを買うことに決めた。安定した性能と機能性(そもそもこれらはプロ向けのスキャン専用機である)を発揮できると考えた。そうなると、Canon / Epson 2つの選択肢が残る。

僕の好きな写真家をはじめ、フィルム愛好家の多くが Epson を使っている印象がある。また、Epson の上位機種はデュアルレンズとなり、通常のスキャン面に加え、フィルムホルダーなどを使用したときのため(フィルムスキャンの場合、フィルムはガラス面に密接することはなくある程度浮いた状態になる)に数mm上に焦点を合わせたレンズが搭載されている。

Epson の最新機種は GT-X980、新品で6万円近くする。流石に最新はなかなかに高価だが、その一つ前の機種 GT-X970 は2万円ほどでいい状態のものが買える。というのも、GT-X970 が発売されたのは、2007年、13年ほど前の機種なのだ。にも関わらず、GT-X980 はハード面ではほとんど進化していないということもあり、わざわざ3倍近くの値段を出してまで最新機種を買う必要はないと考えた。

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夏すぎには、無事 GT-X970 を手に入れていたが一つ問題が出てきた。どうにもシャープな結果を得られない。公式のソフトウェア Epson Scan でスキャンした後に、Lightroom にてシャープをかけているが、限界がある。

色々と調べてみると似た症状で悩んでいる人は多くいるようで、掲示板やブログの書き込みもでてきた。原因は、レンズの焦点面がフィルムの位置とズレているということだ。先述のとおり、GT-X970 ではデュアルレンズとなっており、フィルムホルダー用に数mm焦点をズラしたレンズが存在する。このレンズがなかなかに厄介で高性能を引き出せる代わりに、個体差もあり、焦点がフィルム面と合わないことがある。自分の個体はまさにその症状を患えていた。

解決策としては主に3つある。

1. フィルムホルダーの高さを調節する

GT-X970 のフィルムホルダーは高さを2段階調整できるようになっている。およそ1mmほどの調整になり、これが最も簡単に試せる。最新の GT-X980 ではもう数段調整できる?ようだ。ただ、自分は却って解像感がなくなってしまい効果を得られなかった。

2. フィルムホルダーを使用せずガラス面に直接のせる

これは、フィルムホルダーを使用せずガラス面に直接のせることで、デュアルレンズのうち、通常使われるレンズでスキャンしようという考えになる。ガラス面に焦点が合わせられたレンズは、そのほとんどが焦点がずれたりはしてないらしい。ここで問題になってくるのは、いかにフィルムをガラス面に固定するか。先の偉人たちによる答えは、無反射ガラスでガラス面と挟む方法だ。スキャン時の強い光を反射することなく、フィルムを平らに固定することができる。

しかし、岩崎さんの記事でも触れられているようにガラスと無反射ガラスを密着させるとニュートンリングと呼ばれる波状の模様が出てしまう。完全にくっつけることなく、少し浮かせることがポイントなようだがこれがなかなかに難しい。

安井さんもそのことを Youtube に投稿しており、この問題に悩んでいる人は多い。自分もこの問題を危惧し、別の方法を試すことした。

3. フィルムホルダーとガラスでフィルムを平らに固定する

いくつかの方法を試すなかで気づいたことがある。一つは、自分の個体において、フィルムホルダー用のレンズはそこまで焦点がずれていないこと。もう一つは、フィルムホルダーのフィルム固定が甘いということ。

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フィルムの固定が甘いことでフィルムが反ったり、歪んだりしていることに気づいたのだ。シャープな結果が得られなかったのは、レンズの焦点がずれていたからではなく、フィルムの固定が甘いことが原因だと断定した。

つまり、フィルムをホルダーに真っ直ぐ平らに固定できれば、よりシャープな結果が得られずはずだ。僕が考えたのは、無反射ガラスをガラス面との押さえつけに使うのではなく、フィルムホルダーの固定に使えないか。ということだ。

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無反射ガラスをフィルムホルダーにある溝の大きさにカットし、付属のカバーではなく、このガラスで押さえつける作戦だ。

こんな感じに作ってみた。

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無反射ガラスで押さえ込むことによりフィルムを平らに固定することができている。ガラスの面積もギリギリまで広げているため、重さで反りも押さえつけられる。

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肝心の結果がどうなったか。

比較画像を用意してみた。
FILM016 は、従来のやり方。
TEST001 は、今回取り組んだ新しいスキャン方法だ。

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一見するとあまり変わらないように見える。
まずは、中央の解像からみていこう。

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明らかに右(TEST001:新しい方法)の方が、焦点があっており解像しているように見える。縦に伸びる縞模様がはっきりしており、下部のブロックも凹凸感がよく見えている。
次に周辺を見てみる。

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左上のトリミングしてみた。
周辺になるとよりその成果が現れている。遠目からでもはっきりと解像していることがわかる。また、影の色味も極端な青みが引いており、色補正の精度にも影響していそうだ。

実際の結果を2枚とも載せておく。写真をクリック(もしくはタップ)することで拡大することができる。どちらの写真もスキャン後の補正はしていない。

FILM016:従来の方法

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TEST001:新しい方法

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