並木栞里

映画と本と旅行が好き。将来の夢は海の見える高台に白い大きな家を建ててそこでのんびり暮ら…

並木栞里

映画と本と旅行が好き。将来の夢は海の見える高台に白い大きな家を建ててそこでのんびり暮らすこと。最近は森の中や川のそばに住むのも良いなと思っている。

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  • 常盤台通信

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最近の記事

遠い国でフライドポテトを買うということ

予約していた航空券がキャンセルになったのは、出発の一週間前のことだった。 キャンセルではなく変更にできないか、と食い下がる私に、カスタマーセンターの男性は「こういった状況ですから」と申し訳なさそうな声を出した。変更できないことはないが、その変更した便も欠航になる可能性が高いのだという。 予期していなかったわけではなかったが、そこまでか、というのが率直な感想だった。 中国で新型の感染症が発生。 各国が水際対策に乗り出し始め、海外渡航を自主的にキャンセルする人が相次ぎ、感染症を

    • ファッションオタクとの邂逅/ディオール展とその周辺の感想

      東現美のディオール展に行ってきた。 5/28までの会期で、現時点で前売りチケットは完売。当日券を求めて早朝からたくさんの人が並ぶほど大人気の展示である。 かくいう私も前売りチケット争奪戦に敗れ、巡業先に旅行がてら行くかあ、などとのん気に考えていたのだが、調べてみるとなんと今のところ巡業予定はないというではないか。もうこの先見られる機会はないかもしれませんよ!と言われると俄然見たくなってくるのが人間である。 前売りのキャンセルもたまーに出ているとのことで、サイトを覗きにいく

      • いつか数ヶ月単位で住んでみたい街/香川旅行記

        日本に生まれた者なら一度は検討する「香川うどんくいだおれツアー」に行ってきた。小豆島には二回ほど行ったことがあるが、本島への上陸は今回が初めてである。 航空券によれば羽田から高松空港までは一時間半ほど。早朝ということもあってか左右三席ずつの機内には空席もちらほら。予想に反してモニター付きの席だったので、『チケット・トゥ・パラダイス』を再生したがどうせ全部観られないしな、と思って途中で辞めた。 高松空港到着後、レンタカーを借りて早速一店舗目の「純手打うどん よしや」へ。 出発

        • 村上春樹の集大成/国際文学館訪問記

          つい先日、早稲田大学国際文学館(村上春樹ライブラリー)に行ってきた。 コロナの影響か自由に入れるのはカフェや一部の展示がある地下1階だけで、それ以外のフロアは事前の予約が必要だ。早稲田訪問の前日、予習がてらひらいたホームページでそのことを知り、まさか...…と思いつつ予約サイトを見ると案の定4つある区分のうちすべての時間帯で満席になってしまっていた。 訪問の一番の目的は国際文学館ではなくその隣の演劇博物館で行われていた企画展「村上春樹 映画の旅」だったので、まあ次の機会でも

        遠い国でフライドポテトを買うということ

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          村上春樹のエッセーについて語るときに私の語ること

          私は村上春樹の小説をほとんど読んだことがないにもかかわらずやたら村上春樹に詳しいのだが、それは彼のエッセーが大好きで地道に買い集めてはせっせと読み込んでいるからである。 エッセー、インタビュー、スピーチ、お悩み相談……どんなアプローチのものでも、彼の書いた小説以外の文章にはほぼ目を通したことがあると思う。 村上春樹はかつてそのエッセーで、自分の本業はあくまで小説家であるからエッセー等の小説以外の作品は自分の正統な作品であるとみなしていない、というふうなことを言っていた(かな

          村上春樹のエッセーについて語るときに私の語ること

          排除の上に成り立つ家族という共同代/『キッズ・オールライト』感想

          レズビアンカップルであることや母親を二人持つことそれ自体に焦点を当てた物語でないのは2010年製作の映画としてはわりと先進的だと思うんだけど、どうだろうか。映画が、彼らの珍しい家族構成について長々と説明したり言い訳じみたことを言ったりしないのは、好感が持てる。(そのおかげで「母親が二人いるの?いいね、俺はそういうのクールだと思うよ」と言ったポール/マーク・ラファロの軽薄さが際立って、それも良い) 私がこの映画で好きだなと思ったのは、劇中の出来事のすべてを完結させないこと。ジ

          排除の上に成り立つ家族という共同代/『キッズ・オールライト』感想

          グレーゾーンが美化される/『ロスト・イン・トランスレーション』感想

          (※別作品『はじまりのうた』の内容について一部言及しています) 訪日外国人たちの悲哀を同情しつつみていたが、病院の車椅子で遊ぶシーンで「ひょえ~」となってしまった。見知らぬ土地で話し/聞き慣れた言語を喋る者同士が彼らの背景に関わらず仲良くなったり惹かれ合ったりするのはよくあることだし自分も経験があるからそれ自体はわかる、そのうえ羽目を外してしまう気持ちもよくわかる、しかし、日本で、しかも病院で、そんなことするのやめてくれ~~~~。 そして決定的に「ひょえ~」となったのが、

          グレーゾーンが美化される/『ロスト・イン・トランスレーション』感想

          生も死も抗議も踊りも、すべてはテンポ120のうちに/『BPM ビート・パー・ミニット』感想

          原題が『120 BATTEMENTS PAR MINUTE』なので、おそらく映画の印象的な場面で使われている曲はテンポ120なのだと思う(違うかな?) そこだけ際立って、というわけではないが、やはりラストシーンは印象的だった。 恋人が死んですぐにほかの男とセックスする、仲間が死んだ感傷もそこそこに過激な抗議活動に身を投じる、文字にすると非情さが際立ち、実際に映像で見てもその切り替えの早さに驚いてしまう行為だけれど、その行為に付随する葛藤をわざわざ描かなくても、しかしそうしなけ

          生も死も抗議も踊りも、すべてはテンポ120のうちに/『BPM ビート・パー・ミニット』感想

          ホラー映画嫌いによる『ミッドサマー』感想 ※ネタバレあり

          怖いのは基本的には嫌いなんだけど、『放送禁止』みたいな”気付いたとき怖い”系の作品ってすごく惹かれる。ので、『ミッドサマー』を観に行ってきた。 劇場でホラー映画を観たのなんて『二十世紀少年』ぶりかもしれない(あれはホラー映画ではありません)。解説なんかは公式のホームページにすらあがっているくらいなので、観ておもったことだけ書いてみます。 結論からいうと、けっこう面白かった。個人的には好きでした。 人と観たので最初なんとなく落ち着かなかったんだけど、重低音の音楽とともにタイト

          ホラー映画嫌いによる『ミッドサマー』感想 ※ネタバレあり

          ゆで卵を作ろうとして

          ある日の晩、タルタルソースのために、ゆで卵をつくることになった。クックパッドで作り方を調べると、「沸騰したお湯で15分ゆでる」と書いてある。 キッチンタイマーで15分測り、氷水につけながら殻を剥いていると、半分剥いたくらいでぐしゃりと潰れてしまった。半熟卵になっていた。 仕方なくもう一つ卵を取り出して、おんなじ要領で作ってみたが、またしても半分剥いた時点で水のなかで散り散りになった。さすがに「ああ......」と悲痛な声が出た。 「読んだレシピが悪かったのでは?」と思われ

          ゆで卵を作ろうとして

          10年代が終わる。

           今日、他人のブログを読んでいたら、「テン年代を象徴する」という文言がでてきて、そのときはじめて「ああ、もうすぐ2020年になるのか」と気がついた。  2010年といえば、私が高校に入学した翌年だ。そんな私にとって2010年代は、いわゆる"青春時代"を過ごした年でもある。私にとって青臭い思い出といえばそれはすべて中学時代のことなので、本当は10年代にとくに思い入れはないんだけど、他人からみたらきっと思い入れのある年のはずなんだろうな。なんだか申し訳ない気持ちになってくる。

          10年代が終わる。

          「下級国民性」と見下しの物語/映画『JOKER』

          ※大学院の授業で提出したレポートをそのまま掲載しています。  日本を含む66か国で公開された映画『ジョーカー(2019)』は、公開から約一か月の時点でR指定映画の興行収入の記録を三年ぶりに塗り替えた(1)。 映画公開にあたって米国では、一部劇場での手荷物検査、コスチューム装着の禁止、警察官の増員など、過剰ともとれる対策がとられた。これは2012年にアメリカ、コロラド州で起きた「オーロラ銃乱射事件」を受けてのものである。プレミア上映が行われていた映画館が襲撃され、12人が死亡

          「下級国民性」と見下しの物語/映画『JOKER』