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エルニーニョ 【詩】

僕らは
エルニーニョの真似をして
いろんな海を荒らしてきた

羽目をはずし
いたずらをくりかえし
ついに
日本近海まで来た

(白鯨がこの近くにいる)

海を狂わせる
見えない悪魔

(雲が燃えている)

私はエルニーニョである
海の赤子である

(と、いいながら、エイハブの髭を引っ張る)

そのむかし
世界中で捕鯨が隆盛を極めていた頃
海はドクロの旗であふれ
鯨油が夜の海を燃やしていた

(海賊王を目指す有象無象)

おれは海の赤子
あの真っ赤な水域でも
真っ白なからだを曝して泳ぐ

(60年もすれば立派な鯨になるだろう)

俺たちは
摩訶不思議な幻想を
壮大なる叙事詩を
夜もすがら語り合ったものだ

発酵するワインのように
我々の海は燃えている
掠奪された漁船が夜の海をただよい
白鯨の亡霊が現れては消える
海賊たちの酒盛りは終わらない

(無防備な赤子たちは
 静かな入り江で大洋の夢を見ている)

月の鯨がよみがえる


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