汐田大輝

変幻自在な文芸家。語り得ぬ世界に届く言葉を求めて、詩(自由詩)や短詩(俳句や川柳等)を…

汐田大輝

変幻自在な文芸家。語り得ぬ世界に届く言葉を求めて、詩(自由詩)や短詩(俳句や川柳等)を投稿します。電子版詩集『方位のない街』を公開。→ https://romancer.voyager.co.jp/?p=324683&post_type=nredit2

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  • エンターテイナー・ストリート

    • 5,003本

    甘野充プロデュースの共同運営マガジン「エンターテイナー・ストリート」です。  共同運営マガジンは、みんなで作るマガジンです。  小説、詩、エッセイ、絵、音楽、動画など、想像力と創造力あふれるアートやエンターテイメント作品をnoteで公開している人たちが集まって、作品を披露する場となります。  参加すると、自分の記事を共同運営マガジンに追加することができるようになります。  たくさんの人に自分の作品を読んでもらえるチャンスです。  参加費は無料です。  参加希望の方はトップ記事へコメントお願いします。 ルールは以下です。 ・投稿は自分の記事だけにしてください。 ・投稿は当日投稿の記事のみにしてください。  (過去記事は投稿しないでください) ・タイトル、タイトル画像、説明文は変更しないでください。 ※ 創作と関係のない記事は削除しますのでご了承のほどお願いします。 甘野充

  • 短詩(俳句、川柳など)

    俳句や川柳など、短詩形の作品を収録します。

  • 自由な形式で書かれた詩を収めています。幻想的な詩、物語的な詩、ナンセンスな詩など。

  • 叙事詩『月の鯨』

    神話上の白き妖獣「月の鯨」を追い求めてよるべなき海を行く船。その行き着く先は? メルヴィルの『白鯨』に素材を得たフィクションです。

  • 散文

    小説やエッセイなど、詩のジャンルに入らない作品を収めています。

最近の記事

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電子版詩集『方位のない街』を公開しました!

デジタル出版ツール Romancer(ロマンサー)を用いて詩集『方位のない街』を作成し、無償公開しましたので紹介します。事実上の私の第一詩集(^^;)となります。電子書籍ではありますが、紙の本と同じような感覚で読むことができますので、ぜひご覧ください。 以下に、この書籍の「まえがき」を転載します。 まえがき 素性不明のデジタル文芸家、汐田大輝の第一詩集です。 この詩集は、作者がこの2年間にネット(note)に発表した作品のなかから、場所や空間をモチーフにした詩篇を集め

    • 孤独な散歩者の午後 【写真詩】

      • 花の下 【詩】

        火曜日 満開だった 自動車整備工場の裏 市役所も知らない 名所に ことし最後の 花が咲き 壊れかけた橋があった (願わくは…) 絵の中の舟が 近づいていた 砂底を櫂が這っている ミドリガメが流れている (僧侶が立っていた橋  陽炎のように薄い  煩悩を 燃やしている) 夢に見た花が ミラーにさわる (願わくは 花の下にて) 自転車が右に曲がる 川に映った花がミラーに映る 川底を転がっていく車輪が カーブミラーに映る 壊れかけた橋をわたる (願わくは…)

        • みだらな鳥 【川柳15句】

          腹這いで歌えイスラエル国歌 寒そうなブロッコリーに下駄はかす ゆうべからクレオパトラの鼻がない ヒロユキの指が落ちていたベンチ 滋賀県のどこもかしこもケモノミチ 留萌市のカーブミラーが哭いている 向日葵が喰わされている菜葉飯 純金の部屋で魯迅に囲まれる ヘーゲルがみだらな鳥になる正午 口下手な弁証法が美しい 満月に哭かされているエルサレム ハンマーで叩かれている真珠湾 天上の磨りガラスから酢の香り 沈みゆく舟に指紋が浮いている 骨壷のモノマネドリが

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        記事

          測量 【詩】

          まみやりんは 電柱に張りついたまま すれ違っていく電車を 眺めていたものだった それは ある初夏のこと 奇声をあげて走っている連結器の束が 急カーブで触れ合っていた 土曜日の午後 先っぽが蛇のカタチの 曲がった杖を持ち 枕木がもつれ 不思議にふわふわする地面 路線図の半分が 赤っぽく光り 通りすがりの車輌に 合図を送っている 高低が狂って 黒い荷物がよろけている 地図をめくったら分岐する羽音 その初夏の日の朝 曲がった杖で地面を叩き まみやりんは 測量を再開する

          測量 【詩】

          円環 【詩/現代詩】

          少しずつ 始まりに 近づいている (君もその一部なのだから) 朝になると 数知れない鳥が 空を真っ白にする 一つとして覚えていない名前たちの くり返されるさえづり  日がさす     日へ病む あの鳥たちはどこから来たのだろう いつも気分がよいフリをして (君もその一部だが) 中心は深い靄 雲が不安気に身を寄せて 「今朝 神通川に 洗濯物を干しに行ったら ◯の姿をした神に出会ったわ でもあれはほんとうに 神だったのかしら ただの◯にしか見えなかった」 分け入

          円環 【詩/現代詩】

          世界 【詩/ショート神話】

          1. この世界がまだ クリームスープだった頃 神々の夢は かたちを持たなかった オノマトペの豪雨は果てしもなく 顔のない妖怪みたいだった 2. この世界がまだ やわらかなスパゲティだった頃 バター漬けにされた 頭や指 眼や鼻や唇 喉元に心臓 毛むくじゃらの胴体や 脚の爪の先までもが あぶらの臭いをさせて 原初の海に呑まれていった 3. この世界がまだ 山盛りのアスパラガスだった頃 ミコトノリが 寄り集まって さばえなすざわめいた 岩礁にはりついた ハマボウフラ

          世界 【詩/ショート神話】

          ケー子先生 【詩/現代詩】

          僕らの州都は 地面から 3メートルは低かった 晴れの日でもうす暗く 気温は かがんだまま推移した (あの夏の先生は変だった) いつからか モグラというあだ名がついた僕は ダウンタウンで 気まぐれによじれていた モグラのお腹は ずっしりと重く (光よ) 先生は 気まぐれに 僕を踏みつけた 息子は 眼を瞑ったまま 地面を見上げていた (1988年夏 あの頃のランチは  毎日がハンバーグ  テーブルに頬杖をつき  なまめかしく灯台を見ていた) 《光あれよ》 チーズは

          ケー子先生 【詩/現代詩】

          水瓶座 【川柳15句】

          爪先から滲み出すマラカスの蜜 刑務所をさまよっている水瓶座 ウミウシの未来を語る主要五紙 狐狸たちの三々九度に投企する 歌舞伎座の絢爛に似るあわび貝 春風に舐められているムール貝 第三の眼を移植した明石焼 指揮官の左右に侍るウナギメシ 妖精が市民プールに紛れ込む ヨーヨーに改造されたハイヒール 神々が乱高下するオリンポス 三畳紀ジュラ紀白亜紀トランプ忌 諮られて月影になるさくら餅 氷河期の背中が尾根を越えていく 斜めから転がしてみた朔太郎

          水瓶座 【川柳15句】

          ゆでたまご 【幻想詩】

          春うららかな一日 街じゅうの頭の中が ビー玉のように鳴っている おかしなすり鉢の中に入れて かき混ぜているみたいな音 春が煮え立つような一日 街じゅうの頭の中が あぶらでいっぱいになる ゆれている舟は うえへしたへと波打って 太陽の膨らんだところから とぷん とぷんと あの子のスカートに忍び込んでいく 油虫が一匹 それからはもうずっと 奇妙な音が聞こえている ベッドにころがった君のお腹の中で ハモニカが息をしている とても切なげに 上下に揺れながら あたたかなものが滲みだ

          ゆでたまご 【幻想詩】

          京都 【詩/現代詩】

          ブリキのアパートをくぐり抜け 藪医者の表札をやり過ごせば お屋敷の並ぶ界隈 お寺も神社もないけれど (京都がある) 初めて乗った自転車で 碁盤の目をめぐり 突き当たりは小学校の校庭 学校に行かない子どもたちが遊ぶ (ここにも京都がある) 花壇に夏蜜柑の種を蒔き 30センチくらい育ったところで 校舎が傾きはじめた 扇風機の羽根が毛虫みたいに鳴く (ここにも京都があった) 十字の街路に佇んでいると ソースせんべいが剥がれ落ちる壁 お寺も神社も伝承も燃えてしまい 工場か

          京都 【詩/現代詩】

          マンドリン 【川柳15句】

          水色のソナタ聴こえるマクワウリ みずうみに首のびていく暖かし 風船みたい豆腐屋の頭蓋骨 春の風邪水飴になっていく耳 偽博士の蜜あふれ出すマンドリン 自転車の蜂蜜漬けを売る露店 逆さまの戦車になっていくチューバ 傷病兵が転がっている春の土 春が来て明日が来ない兎跳び テンパって蝶になりたい視力表 眼帯をはみ出している糸みみず 悪徳の限りを尽くせ春の風 透明な殺意を秘めて星朧 藤原氏秘蔵のクスリ春深む 春の雨街の半分消えていた

          マンドリン 【川柳15句】

          日本の深層 【詩/現代詩】

          (月光仮面は  まがいものであった  黄金バットとともに  子どもたちをだまくらかし  昭和の街を暗転させた) そんな昔話を聞いているうちに 黄色みがかった令和の都市が 裏ぶれた昭和の界隈に変わり 奈良時代にまでさかのぼる 帰化人たちがたどり着いた土地は まだ見ぬ故郷に似ていた あのバイクは月からやって来る まるで我々の先祖のように ラフカディオ・ハーンが初めて見た日本 まだその名前を持たなかったが 月光仮面の出現は予測されていた かれらは仮面をかぶって境内で踊り 日本の

          日本の深層 【詩/現代詩】

          視力 【詩/現代詩】

          僕の視力は 標準視力なので だいたい 1.5はあります (ほんとをいえば  平均よりはだいぶ高い) …はい もっと離れて …はい もっと近づいて …デタラメをいうのはやめなさい 夕方の視力は ちょっとしたお化けになるので 目薬を差してみる (この頃、眼が霞んで仕方ない。  そんな歳なんでしょうか) (どうなんでしょう、  本の読みすぎではないですか) (僕はボルヘスに憧れているのです) 〈やがて  この世の外が見えるようになるでしょう  そうなれば、詩人としては

          視力 【詩/現代詩】

          春の一日 【幻想詩】

          晩春の路面電車は 半分透きとおっていて もうほとんど レールを踏み外して とろり とろりと 畦道の側に寄っていく 草にうもれた 屋根のない駅舎で 菜の花の煙草を吸う ボヘミアンたちの ポチッと蜜柑色の火種 午後一時頃には 給水塔がひしゃげて 電線にぶら下がっている 路面電車は 蛙になって潰れている 僕らがみな 厚いレンズをのぞいていると そこをとおりかかるのが スナフキン 三角の籠をさげていて 菜の花を摘みに来たという (そうだね  ここは蜃気楼の都だ  どこまでが嘘で

          春の一日 【幻想詩】

          夜から来るキカイ 【詩/現代詩】

          いつの頃からか 毎夜のように 訪れるようになった あの方が カシャカシャと音を立てて 月のない夜になると 長い砂浜を這って 砂まみれになって 真っ暗な方から 海の方向から 見えない波音が 少しずつ輪郭をあらわし 月のように冷たく だんだん数が増えて コールタールのように 黒い水のように わたしの眠る方へ 眠りかけの小屋の方へ カシャカシャと音を立てて 壊れかけた機械の音 それは毎夜のように カマキリに似たかたちの 6本脚の影 コールタールのにおい わたしの眠る部屋に 静かに忍

          夜から来るキカイ 【詩/現代詩】