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『ジョジョの奇妙な冒険』のモッツァレッラチーズとトマトのサラダ

荒木飛呂彦『ジョジョの奇妙な冒険』33巻(1993年刊行)
イタリア料理を食べに行こう その② 30㌻

写実的な表現ではありますが、『美味しんぼ』のソレよりも漫画的表現性の強い描き方で、影の部分を太いペンタッチや線の数で表現するなど、全体的に物質の柔らかさが出ていて、「荒木飛呂彦先生の絵」というものを強調しています。おそらく荒木氏は、万物を自分のタッチに寄せて描けるのでしょう。これは大友克洋先生の絵でもなければ、藤子・F・不二雄先生ほどデフォルメされた絵でもなく、唯一無二の荒木調であります。

これも子供のころに読みましたが、非常に腹がスきました。

「モッツァレッラチーズ」と言われましても、私にとって当時はまだ謎の言葉でしかなく、「チーズ」とついていなければただ単に発生のしにくい単語でしかありませんでした。今ではもう、その文字の並びを目にしただけで舌なめずりしてしまうほどであります。

上の掲示した絵を見て、「トマト」はわかるのです。スクリーントーンが貼られてどことなく「赤」を感じますし、切断面もしっかり描かれていて、これだったら毎日食べていたものです。そのトマトに挟まって並んでいるのが「(そえもの)」に記載されている「焼いたパン」だと、思っていました。サンドウィッチからの連想と思いますが、「サラダ」だと言っているんですけどね。
そして、三角形に切ったチーズなら見たことあったので、下の白い三角形固形物が「モッツァレッラチーズ」なのだ、と暫定しておりました。

逆でした。

大人になって「モッツァレッラチーズ」を経験し、なんだったら「モッツァレッラチーズとトマトのサラダ」と銘打ったサラダをいただいたこともあるかもしれませんが、そうしますと、掲示した絵の凄みが数十倍ふくれあがって感じます。「モッツァレッラチーズ」は間違いなく「モッツァレッラチーズ」であって、その食感…歯ざわり舌ざわりまでをも思い起こさせますし、「焼いたパン」も「焼いたパン」として間違いようがなく、表面のサクサク感と香りを感じられるのです。
「トニオの特製ドレッシング」の材料表記を見て、掛けられているドレッシングの味まで想像できるようになりました。

いろいろな経験を経て大人になるのだと思いますが、子供のころに答え合わせを後回しにしてきた「モノ」「コト」について、大人として新たな視点を身につけてもう一度それらを見てみると往々にして新しい発見があり、それは大人になることの一つの、大きな楽しみなのだと思います。

ちなみにこの絵は今から30年前のものです。この「イタリア料理を食べに行こう」の概要は、イタリア料理人のトニオが作る料理を食べると体中の悪いものが出ていき、良いものに替わる、というもので、これを劇的な描写で表現されています。
30年前に「デトックス」というのは、やはり早いですよね。

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