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「決める」ということ(桜井章一著『決断なんて1秒あればいい』 ソフトバンク文庫 より)

いろいろ考えすぎたり、なんだかんだのしがらみが、どうでもよくなったりした時、
戻ってくる本の1冊である。

本書の冒頭は、「決める」とはどういうことかについて、桜井章一さんが小学生の頃、学校から家まで文字通りまっすぐ帰った話からはじまる。

学校から家まで本当に直線で帰るとは、塀を乗り越えたり、家の屋根に上がって、向こうの家の庭に降りたり。そんなことを繰り返して、「まっすぐ帰る」ことに成功したらしい。

このエピソードは、自分で決めたことを実行するというのは、基本的に困難が伴うものだ、ということの象徴として扱われる。

「逆に困難や危険を伴わないことは、別に決めても決めなくても、どうでもいいことだと思っていい。」

と筆者は言う。この見方からすると、世の中は「どうでもいい決まり」であふれているのかもしれない。

そして捨て身になることで、「決める」ことができる

「自分のことを少しでも考えに入れていたら、最良の判断などできやしない」「人間捨て身にさえなれば、最良の決断ができる。」ということらしい。

「自分で決め、実行し、きちんと後始末」をつけるというのも印象的な言葉だ。似た言葉である「準備、実行、後始末」の大事さは、桜井章一さんから学んだ(「準備、実行、後始末」をしている人物として、桜井さんはイチロー選手を挙げている)。1)

また、「「しがみつかない」生き方をすれば、最良の決断ができる」と。

現代社会では、何らかの組織にしがみついている人が多い。

対比として出されるのは昔の職人さん。「何事も自分で決め、」「起きたことの責任は自分で取る」。会社などの組織に属しながらも、「誰にも真似のできない「職人的」な技術を身につけておくこと」を筆者はすすめる。それが「自分が何かを「決める」時の強力な武器になる」と。

「しがみつかない」生き方を意識すれば、一つの組織を定年などで退職後に何をすればよいのかわからない、ということはないのかもしれない。筆者の言葉をかりれば、「軸が自分の中に感じられてくる」から。

桜井章一さんは、身体感覚をとても大事にされる。その感覚を表した文章として、「しがみつくのではなく、会社に触っているくらいの感覚」という表現が出てくる。

つかむのではなく、「触れる」という感覚の大事さも、桜井章一さんから学んだ。2)

Youtube動画を見るとわかるが、桜井さんは実際、麻雀の牌を持つときも、つかまずに触れるようにしておられる。

今回は、桜井章一著『決断なんて1秒あればいい』 ソフトバンク文庫  より、「決める」ということの意味と、そこからつながったいくつかの大切にしたい言葉をご紹介した。
読後には、すがすがしい気分が残る。
大切な感覚に気づかせてくれた桜井章一さんに感謝したい。


参考文献

1)  桜井章一『運に選ばれる人、選ばれない人』(講談社+α文庫、2007年)

2)  桜井章一『体を整える ツキを呼ぶカラダづかい』(講談社、2012年)


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