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冬のオホーツクへ、オホーツクの冬へ(三北旅行1日目 R6/03/02)

北海道の魔力

 北海道を起点とした旅行から帰ってきた。帰ってきた上で宣言する。私は北海道にこの記事を書いている今でも行きたい。行きたくて仕方がない。私に何の制約もなければ、今私は北海道に居る。北海道、北海道、北海道! 恋にも似た感情を北海道に向けている。魔力だ。魅力よりも強いものを北海道は放ち続けている。
 私はこれまで、夏と晩冬(ほぼ春)に北海道へ赴いたことがある。どの旅行も風光明媚で北海道でしか体験できないことを体験してきたつもりだ。しかし、北海道に行けば行くほど、ある感情が湧き上がる。
「冬の北海道に行きたい……!!」
 私は冬の北海道に行ったことが無かった。それだけが心残りだった。北海道は冬に最も美しい姿を見せる。どうしても行きたかった。しかし冬と大学は相性が悪く、年末年始から1月の終わりにかけては期末試験ラッシュがあるので簡単に遠出できない。2月を予定していたが、軍資金を集めるためにアルバイトをしておきたかったので2月もまるごと関東にいることを選んだ。
 そして、3月2日。他地方では冬が終わり春になりかけているこの日を、北海道遠征の出発日に決定した。北海道へ行くのは3月上旬だ。まだまだ冬、なんなら一番寒い時期かもしれない。
 サクサクと飛行機や宿やバスや特急や船や予定変更に伴う予約キャンセルを済ませ(本当に大変だった、ハートランドフェリーと私との間で送金トラブルが発生した時は本当にキツかった)、3月2日を迎えた。

いい日旅立ち・北へ

 その日は午前中にアルバイトがあった。スーパーの品出しバイトは体力を使う分体感時間が短い。パパパッと済ませて、いったん家に帰る。確か家で昼飯を食べた。外食の時はいつも写真を撮るが、この時の写真は無いため家で食べたのだと思う。
 飛行機が16:45に出るので2時間前くらいには空港着いてたいよな〜〜〜とか思いながら、14時半くらいまでネットサーフィンをしていた。おもむろに充電器類をカバンにまとめ入れ、別室でダラダラしていた妹と少し喋った。ちゃんと留守番をしておくように、ちゃんと家事をしておくように、北海道のお土産は期待しないように、といった事を話してから家を出た。
 関東では、3月上旬は既に春に規定されるらしい。防風外套(ウインドブレーカーは長いのでこう呼ぶ)を着ていると汗ばむ陽気だ。キャリーケースを転がしながら最寄り駅まで歩く。20分ほど。
 最寄り、穴守稲荷駅から羽田空港へは一瞬で到着する。近い方の羽田3タミには5分ほど、遠い方の2タミにも7分程度で到着する。私が普段遣いするのは、精々隣の天空橋(京急が人身事故などで濫りに快特の行先を変更したときに乗るモノレールの乗り換え駅)くらいなので、羽田空港両駅は本当に縁が無い。

穴守稲荷駅前に鎮座するコンちゃん
この日は桜柄のお召し物

 穴守に着いたのと同時くらいに電車が来た。穴守稲荷駅は入口が羽田空港方面にしか存在せず、品川や横浜に出るにはわざわざ跨線橋を渡る必要があるのが不便だ。その代わり羽田空港方面は改札を通ればすぐの所にあるので便利。乗っとけば勝手に羽田に着くのでまた便利。 家を出てから30分ほどで羽田空港に到着する。
 改札を出て、第2ターミナルを目指す。私は羽田空港で2タミしか使ったことがない。北海道に行くためのAIR DO(長いので以降ADO)と故郷・九州に行くためのソラシドエア(長いので以降SNA)は基本的に2タミから出るし、ANAも2タミから出る。ANAは親がタダで大阪に連れて行ってくれる時に使うので、私が自発的に使うことはない。(まあADOとSNAはANAと共同運航してるので基本的に2タミから出る)

16:45 女満別

 駅に着くと、柱に液晶が埋め込まれている。それを見ると一番下の方に女満別の文字が見える。これに乗る。旅行に行くという実感がグンと湧く。ここらへんで「函館行きの飛行機が到着地大雪で欠航」とか聞こえてきてビビっていた。
 早々にチェックインを済ませ、キャリーケースをANAに預ける。鉄板の入った安全靴を脱ぎ、リュックサックや携帯電話と一緒に機械へ流し入れる。この時点でまだ3時前半くらいだった。

 搭乗券に500番台の搭乗口が記載されていて、ハアどれほど歩くべきか、と思ったが、別階に設置されているバスラウンジに割り振られていた数字だったらしい。ホウエン地方やシンオウ地方の道路が100番台や200番台なのと同じだ。
 搭乗口は滑走路から見れば2階にあり、バスラウンジは1階になる。バスに乗るためのラウンジだから当たり前だ。飛行機に乗る人間は、バスラウンジから一旦バスに乗り、沖止めしている飛行機にタラップから乗るらしい(というか乗る。そういう飛行機に一度乗ったことがある)。

何も喋らない

 バスラウンジへ行くエスカレーターの手前に、八丈島へ行く飛行機に乗るためのサテライトバスの乗り場を案内するペッパーくんがあった。電源はついているが、何も喋らないし、ピクリとも動かない。身振り手振りを交えて「バス乗り場はこちらです」とか言えば良いものを、マジで何も喋らない。

ゴミ箱も存在するので居住性はかなりいい

 小腹が空いたので、自販機でおにぎりとサンドイッチを買った。どちらも外界で買うものよりも30円くらい安い(おにぎりは130円だった)。羽田が近いなら、羽田でおにぎりを買うべきだ。なんか知らんけど岡山県総社市の小学校で出てたカレーのレトルト自販機もあるし。
 1時間くらい待つと、段々と人が増えだす。女満別行き以外にも鹿児島や帯広に行く飛行機が沖止めされているらしく、搭乗手続きがされるたびに大きな人の移動があった。女満別行きは中々案内されず、少しジリジリとした気分で待っていた。16時20分になるかどうかのタイミングで搭乗手続きの改札が開き、私はほとんど一番乗りでバスへ向かった。

空港でバスの尻を撮る異常成人男性

 飛行機へ向かうバスは勿論空港内から出ないため、ナンバープレートの設置義務がない。そのため通常のナンバープレートは前後ともに掲示されていない。あとバスの後方にドアが付いているのでそこから乗り込むことができる。車内は後方までほとんど真っ平らになっている。持ち込む人がいるかどうかはわからないが、キャリーケースを運び込む人への配慮だろうか?
 10分ほどバスに乗って飛行機の眼の前に到着する。思っていたよりも小振りな飛行機だった。バスもほぼ満員で、搭乗したときもほぼ満員だったので、もう少し大きな飛行機を用意してもいいと思った。

ちっちゃいね

 ぞろぞろとバスを降り、タラップでもって機内に乗り込む。かなり人が多い。なんとか収まりきった。私の座席は通路側にした。窓側と真ん中の席を誰かに取らせないようにするためだ。通路側に人が座っていると、それだけで予約の時に優先順位が下がっていく。それを企んでいた。
 真ん中の席に誰か居た。まあ予約するかどうかは向こうの自由なのでこちらは何も言えないが、少し残念だった。まあほぼ満員だし仕方ない。
 間もなくして飛行機が動き出す。急加速したと思えば、ブワッと身体が浮く。慣れた感覚だ。すぐ眼下に空港が見える。海が見える。ビル群が見える。段々とビルが小さくなる。東京を離れる。
 雲を抜けて、何も遮るものがなくなる。東京から北海道へ行く便なので、もちろん針路は北に取られる。私が取ったのは左側、つまり西側の席だったので、西陽が瞼を貫いて目に突き刺さる。暇つぶしのために機内モードでも動くマインスイーパなどをして時間を潰したが、どうしようもなく眩しいので目をつぶって寝ることにした。隣の人に「窓のカーテンを閉めてもらえませんか」とか言えれば良かったが、私が寝る前に既に眠りに落ちていた。早い。

ずっとこの調子

 目をつぶったは良いものの、雲を抜けてから続く眩しさや、後ろの方で乳児がギャーギャーと泣き喚く音で、20分くらいは眠れなかった。あと眩しすぎて頭痛もし始めた。生憎頭痛薬は荷物庫のリュックサックの中だ。我慢しながら目をつぶり続ける。
 少し眠れたのか、目の覚める感覚だけがする。まだ後ろの方で乳児がギャーギャーと泣いている。丁度高い音だし猫の鳴き声だと思いこむことにした。西陽の暑さと相まって、機内の居住性はかなり低い。早く女満別に着かないものかと思う。
 西陽がだんだんと落ち着いてくる。いつの間にか北海道上空に入り、旭川や帯広を通過する。あんなに大きな北海道が、上空からならほとんど一瞬で通過できるように感じる。

女満別空港、MMB

 女満別空港に着く頃には真っ暗になっていた。出入り口から伸びるチューブを通って建物内に入る。
 到着ロビーに設置されている荷物レーンは1列でかなり小規模だ。そこに大量の荷物待ち客が押し寄せる。一つ、また一つ荷物が回収されていく。私の荷物はまだ流れてこない。段々とレーンに載る荷物が減ってくる。まだ来ない。レーン前に待機する人が段々と少なくなる。結局私の荷物が流れてきたのは、ほとんど最後だった。20分くらい待ったと思う。一瞬、「ロストバゲージ」が脳裏をよぎった。荷物が何らかの理由で適切に輸送されない、これからの旅行が全部駄目になるレベルのインシデントだ。でもまあ流れてきて良かった。たぶんものすごく早い時間帯に荷物を預けたので、飛行機の奥の方にしまわれていたのだろう。

冬のオホーツクへ

海と大地の恵み

 女満別空港は、オホーツクの二大都市である網走と北見のちょうど中間くらいに位置する空港だ。開港当時存在した女満別町に由来する。女満別町は平成の大合併でとなりの東藻琴村と合併し大空町となったので現存しない。大空町の由来は「でかい空港があるから」らしい。間違ってはいない。合併よりも開港が先行するとこのようなことが起きる。
 先程の荷物が全然流れてこない件でかなり時間が押していたので、急いで空港の外に出る。併設されているセブンイレブンには、付けるだけで普通のスニーカーがスパイク付きの靴になる道具が売っていたりしたが、ここは貧乏旅行と割り切って買わないでおいた。1800円くらいした。
 女満別を出たのち、最初の目的地は網走だ。翌日網走監獄を見に行くためだ。到着ロビーに付けていた大きめのバスに飛び乗る。運転手らしい、バスに荷物を詰め込んでいる人に「このバスは網走駅に行きますか?」と聞いたところ、「行く」との回答をもらったので、安心してバスに乗り込む。私が乗り込んで、間もなくしてバスは発車した。

すごい雪

 オホーツクはまだ冬だった。歩道を埋め尽くすほどの雪が積もる中を、バスは力強く走る。基本的に外は真っ暗だが、そこそこ人が集まっている女満別市街を経由するので電波の心配はなかった。ここらへんで頭痛薬を服用した。水がなかったので、唾液を溜めて飲み下した。

Prison

 網走バスに限らず、北海道のバス停はまあ適当である。適当にしたくて適当にしているわけではない。「地名が足りない」のである。北海道は基本的に、現地に元から住んでいたアイヌの名付けた地名や開拓の際に入植した日本人の名付けた地名が多くを占めるが、その範囲が極端に広かったり、計画的に開発されてたために東◯線北✕号みたいな地名になっていることが多い。上に見せている「昭和第2」はおそらく開拓地名だし、「湖南防風林」は近所に網走湖の南にある防風林しかなかったからそう名付けたし、極めつけの「上林宅前」は近くに上林さんの家があったことに由来する。恐ろしいことに〇〇宅前は網走界隈にしか無いわけではなく、道内各地に存在する。3連続くらいで〇〇宅前に停まるバス路線も存在する。
 地名の足りていない地帯を走っていくうちに、段々と道路沿いに建物が目立つようになる。網走川沿いの大曲を通過し、網走の中心部にバスは突入する。

 網走に到着した!イヤ寒い!!スマホの天気アプリを見ると零下6℃らしい。ギャグ?
 なにはともあれ、網走に到着した。初めての道東、初めてのオホーツク。昨年北海道に来た時の最東端が旭川動物園だったことを考えると、結構東に来たと思う。

北のヴィクトリア

 網走駅③のりばでは私を含めた7人くらいの人が降りた。私以外の人は全員ツレがいたようで、喋りながら網走駅の方向へ歩いて行った。私は網走の空気を感じるために少し立ち止まって、これからの旅程を確認した。予定では920円だったのに1050円も運賃を取られてしまった。乗るバスが違ったのだろうか? まあ、130円分くらいならこの後の旅行で十分回収できる。

みたことないハンバーグ屋

 バス停のすぐそばには、見たことの無いハンバーグ屋があった。ヴィクトリアステーション。内地(道外)にありますか? あったらごめんなさい、でも多分ない。ヴィクトリアステーションで店舗検索を掛けたら上磯とか函館昭和とか室蘭中島とか出てきたので、北海道限定のチェーン店だと思う。未知の北海道のハンバーグ屋に、テンションの高いまま入ることにする。
 それにしても足元が踏み固められた根雪で、ひどく滑る。空港でスパイク買っておけばよかった……

ダブルですやんか

 ダブルでハンバーグを頼めるなら全人類ダブルを頼むと思う。勿論私もそうした。そうするのがハンバーグに対する礼儀だからである。今回は手ごねハンバーグ2つ分のセットを注文した。
 ヴィクトリアステーションに初めてきてテンションが高くなっている。食欲は危険な速度に突入する。

カレー食べ放題ってマジ???

 カレー食べ放題ってマジ???
 カレーセットを頼めば、何杯でもカレーを食べることができる。飽きるまで食べることができる。ハンバーグとカレーが嫌いな人なんて居ませんからね、かなり最高の夕食ですよ。結局ハンバーグが来る前に2杯、来てハンバーグを食べている最中に1杯、ハンバーグの皿が下げられた後にもう1杯頂いた。飽食の限りを尽くしてもたったの1600円。太っ腹すぎる。

さむそう

 店の外にはビッグボーイのアイツがいた。ヴィクトリアステーションはビッグボーイの系列らしい。ビッグボーイなら大森駅にある。一回だけ行ったことがある。面識がある。でもヴィクトリアステーションにはコイツの面影は殆どなかった。

北海道連鎖旅行 オホーツクに来ぬ

 満腹になったところで、網走駅方面に向かう。予約しているホテルは駅を越えたところにある。網走駅周辺は東西に流れる網走川に沿うように市街地が作られている。メイン通りの道道23号網走停車場線も石北本線も東西に走っている。先ほどのヴィクトリアステーションがあったのも道道23号沿いだ。

かなり良い

 ヴィクトリアステーションと網走駅は本当に目と鼻の先にある。駅から店の看板が見えるほどだ。駅にはすぐ着く。
 駅の看板は縦書きの筆文字だ。網走監獄の看板をオマージュしたものらしい。

オホーツクに消ゆ

 ゲームソフト『北海道連鎖殺人・オホーツクに消ゆ』のパネルが設置されていた。網走は当作品の舞台らしい。何か見覚えがあると思ったら、この間の任天堂ダイレクトでリメイク版が出るとか言っていたのを思い出した。オホーツク、特に冬は独特の閉塞感を覚える。近傍に監獄が存在することからよくミステリー作品の舞台になったりもする。大々的に宣伝をしていたのは良い印象を覚えた。

モヨロ人

 網走は、アイヌ文化の興隆以前に栄えたオホーツク文化の遺跡があることでも有名だ。網走海岸近く、モヨロ貝塚は、日本の縄文文化に似通ったオホーツク文化の遺跡として国指定史跡にも認定されている。今回の旅行では寄らないのでここで紹介しておく。

明けるな、網走の夜

北海ホテル

 網走駅を横切って少し歩くと、「北海ホテル」が見えてくる。約2ヶ月前から予約していたホテルだ。網走駅に近く、素泊まりなら4620円と安い。早速チェックインをする。予約しておいた名前を記入し、本人確認を行う。
 「チェックアウトは朝8時となっております、お風呂は1階にございます」
 8時???早くない???基本的に私は快活クラブで寝泊まりするので、一般的なチェックアウト時刻はよくわからないが、多分朝10時とかそこらへんだろう。
 部屋の鍵をもらい、指定された部屋に行く。8畳ほどの和室。小さな机と小さな冷蔵庫、小さなテレビが備え付けられている。荷解きをしてテレビを付ける。まだ放送が終了する前の世界ふしぎ発見が放映されている。インカ帝国の痕跡を探す旅をしている。旅の最中に旅の番組を見るのはなかなか変な感じがする。旅をしているのに旅行欲を掻き立てられる。30分ほどくつろいだ後、風呂に入る。
 光明石温泉。「光明石」という鉱石を使って様々な効能が出るらしいが、正直眉唾ものである。お風呂は温かかったので言うことはない。

西を見る

 風呂を出て、廊下から窓の外を見る。街灯の光が雪で照り返して以外にも明るい。右側には網走川が、左側には網走川に並行するように伸びる網走停車場線が走っている。その間にも様々な建物が建っており、たしか東横インもこの並びにあった。
 夜の網走を見物した後は、一人で煙草を2本吸い、眠ることにした。枕元にコンセントが来るように配置する。これ以上長くなると2日目は読まれなくなるだろうから、ここで1日目の旅行記を終える。

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