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「いい企画」とは何か 全力で車輪を再発明するnote

すんなりいかない「企画」だから、一部にしか通用しない具体的な情報に意味がある

この記事では、企画を承認する立場から、企画の承認可否を判断するにあたって、どんな情報を参照しているかをお話しします。

「企画」、あるいは日常業務での使い方でいうと「提案」という言い方をしていることもあるかもしれません。これについて、フィードバックをしたりレビューをする機会が多いのですが、よく同じことをフィードバックしている気がするので、記事にします。企画の仕方についての知見は世の中に有用なものが溢れていると思うのですが、それでも毎回同じことを言っているということは、そのフィードバック内容だけ抜き出した情報セットに意味があるのかなと思い、車輪を再発明していきます。

企画をつくる人や、あるいは、企画をレビューや承認する側なんだけどぶっちゃけいつもフィーリングで決めてるとか、承認基準を言語化できないとか、「いい企画」ってなんなんだろうとかもやもやを抱えている人にとっても意味がある情報かもしれません。承認なしで企画が実行できる、企画が毎回一発で通る、承認基準を言語化できる、って人には不要な情報です。

(フィーリングで決めるのが悪いことではないですが、言語化できないと企画側の精度が上がりづらいし、承認権限を委譲することもできません。といっても最後はフィーリングで決めるしかないみたいな領域が残ったりもするんですが)

もちろん、場合によって、どんなフィードバックがありうるか≒情報として何が不足しがちかも変わると思います。この記事が前提としている状況には恐らく偏りがあるので、一例としてご覧いただければ。

というか、偏りなく常に妥当性が高いことを言おうとすると、抽象度が高い情報になるので、その結果私のフィードバックが毎回同じになる≒不足する情報が似通うってことにもなるのかなと思っています。なので、一部にしか通用しないことを知った上で、具体的なことをいうことに意味があるかなと思ってこの記事を書いています。

企画ってなあに

まず定義の確認から。

【企画】とは
 計画を立てること。また、その計画。くわだて。もくろみ。企図。「講演会を企画する」
作戦要務令(1939)一「作戦経過の時期等に適応する如く之を企画し」

『精選版 日本国語大辞典』、https://kotobank.jp/word/%E4%BC%81%E7%94%BB-472453、2022/5/17閲覧

作戦要務令から例文引くなんて渋いですね。興味ある人はこの本(『各国陸軍の教範を読む』)面白いです。企画関係ないですがマネジメントやチームリーディングには生きる内容です。

いきなり脱線しました。企画の話です。計画を立てることや計画ということですね。業務では、例えば「新規ユーザー獲得のための施策を考える」も企画ですし、「今期の方針を実現するための行動計画をつくる」も企画ですし、「ブログのコンテンツを考える」も企画ですし、「今度の飲み会の店を決める」も企画です。

さて、そんな企画ですが、みなさん多かれ少なかれやられてるんじゃないかなと思います。いろんなことを考えて企画つくりますよね。相手の立場、問題意識、課題、理想、制約条件、影響範囲、期待効果などなど。

これは提案書の話ですが、企画をするときにおさえとくべき要素としては大体カバーしてると思います。

多分ね、多くの方にとって「そんなの知ってるよ!」だと思うんですよね。そうなんですけど、私は毎回同じフィードバックをしているわけで、だとすれば上記の情報では不十分なはずですね。

どんなフィードバックをしているか

まず企画や企画書の表現にあわせて、以下のどれかに類する質問をします。

  • 「その課題(この場合は実際には「〜〜がない」などの表現=問題であることが多い)を解決したらどんないいことがありますか?」

  • 「この計画によって実現したいことはなんですか?」

  • 「この計画を実行した後、どういう状態が達成できているのが理想ですか?」

  • 「(忖度した答えを排除して企画者の意思を重視したい場合)あなたはどうしてこの企画をやりたいのですか? それによって得たいものは何ですか?」

つまり、ゴールとしてどういう状態を想定しているのかを、できる限り解像度高く把握します。

回答が得られれば、以下を聞きます。

  • 「この計画が実行されると、そのゴールは達成されますか? また、どうして達成されると考えられますか?」

言わずもがななようなんですが、こう問いかけるとゴールと計画の不整合が発見されたり、互いの前提の違いが判明したりします。これは自分が企画をするときも、計画ができたら一度点検してみるといいです。意外と穴が見つかります。

(余談ですが、前提違いは多くの場合情報不足によって起きます。ゆえに、企画を承認する立場としては、前提の違いは企画を考えてもらう前の時点で潰しておくべきだと思います。つまり情報共有です。その企画にどの範囲の情報が必要なのかを企画ができる前に判断するということになるので、言うほど簡単ではないのですが、常に努力をすべきですし、情報不足による前提違いが判明したら企画者の不備ではなく承認者の情報共有不足であったと認識した方がいいです)

この質問の回答も、妥当性が高いと判断できるものであれば、以下を考えます。

  • ビジョン、方針、業績、目標など、自分が責任を持っている成果に対して、意味があるか

  • 上記成果に対して、どのくらい/どのようなインパクトがあるか

  • インパクトに対して、コストはどのくらいかかるか、それは許容できるか

回答が得られなければ、企画のレビューや承認可否を判断することは不可能です。一度持ち帰って練り直してもらいます。なお、初回提案、初回レビューではここで練り直しになることの方が多いです。

なぜその情報が不足するのか

もちろん、質問しなくても情報が十分与えられるなら、質問は不要なのですが、なかなかそうはなりません。
提案書のアジェンダでいうと、引き出したい情報は「与件(≒課題または問題意識)」「現状とあるべき姿のギャップ」という部分にあたります。これ、言葉でいうと簡単なんですが、なかなかどうして奥が深い。

課題とは何かとか色々説明は世の中にあるので割愛するとして、ここでネックになることが圧倒的に多いのは「あるべき姿」をどれだけちゃんと描けているかです。どのくらいの解像度が必要なのかがケースバイケースなので、テキストでの説明が難しいのが、一発でこれをクリアできる企画が少ない理由かなと。これね、場合によって違いすぎて正解を示すことができないので、結局早く見せる、未完成でいいからレビューをもらう、みたいな方法で、期待されている解像度を探索していく必要があります。到達地点から逆算して行動を決めることができないので、反応を見るためにまずアクションをして、その結果から到達すべき地点を見つけていくということです。

これは知識習得だけではどうにもならなくて、実践によって精度が上がる類のものなので、とりあえずやってみましょう。ただ、とりあえずやってみるときに、どういう状態を目指すかが分かっているのと分かっていないのでは効率に明確に差がでます。なので、承認者がどんな情報をもとにどうやって判断をしているかを知ることは有用なことです。

まとめ

企画の承認をするときには以下を考えているということです。

  • ゴールとしてどういう状態を想定しているか

  • その計画がゴール達成に繋がる妥当性があるか

  • その計画が志向するゴールが達成されれば、ビジョン、方針、業績、目標達成などに向けて意味がある成果が得られるか

  • その計画のコスパやコストは許容できる範囲か

私は、これら全てがイエスであれば、承認します。また、これら全てがイエスであるものが「いい企画」、これら全ての判断に必要十分な解像度・粒度で情報が提示されている企画書やプレゼンが「いい企画書・プレゼン」であると思います。

これらの情報がないと、例えばコンテンツの企画でそのコンテンツがどれだけ面白そうと個人的に思うものであっても、そのコンテンツ企画がいいものかそうでないかの判断ができません。コンテンツ企画が悪いと言っているのではないのです。文字通り、わからないのです。だって判断基準を作れないから。

(なお、私の場合、影響範囲やコストが小さい企画であったり、なんだかんだいってやることに意味がある企画だったりすると、上記全てがイエスでなくても承認することがあります。もっとも厳格な骨組みとしては上記なんですが、実際の判断基準はこれだけではなく、企画の背景や内容からどの基準を適用するかを変えて、企画承認ハードルを緩和したりしています。これも「とりあえずやってみる」だけでは練度が上がりづらい要因ですねすみません)

そんな感じです。単に「課題」とか「ゴール」とか「あるべき姿」とか耳障りのいいよくある言葉で理解していると、解像度が不足するという罠に陥ります。企画をつくるときは、「企画書に必要なアジェンダを満たしているからOK」ではなく、「承認者が判断できるだけの情報を示しているか」という視点で見直してみるといいかと思います。

知らんけど(訳:個人の見解であり学術的根拠はありません)。

宣伝

申し遅れました。書いている人間の自己紹介と宣伝を最後にさせていただきます。

わたくし白井恵里と申します。株式会社メンバーズ(東証プライム)執行役員 兼 メンバーズデータアドベンチャーカンパニー(以下DA) カンパニー社長をしています。DAは企業のデータ活用を支援する事業をやっています。事業立ち上げ時から社長を務めています。

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