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鼻(び)の炎(ほむら)


春は檜、夏はぶたくさ、秋は蓬、冬は杉――。
四季折々の草木花のうつろいを一心に感受する、実に風流な粘膜かな。
朕の花粉症、鼻炎の話である。

花粉という、身体に害を及ぼし得ないボタニカルでロハスなちっちゃなつぶに、
甚だしい勘違いで鼻水なる無駄な汁を垂らしまくる、
アホ丸出しなナチュラルボーンの恋愛(アレルギー)体質の持ち主。
それが、朕。

なんの役割もなく、なんの役にも立たない、
いわば徒然なる汁を精製するエネルギー、
これをば今までの人生分かき集めて有効活用できたならば、
なんかタワマン一棟くらいは余裕でおっ建っているのではないか。
まさに、鼻セレブである。

日々のティッシュの消費量たるや、
第二次性徴期を迎えたニキビ面球児のそれを遥かに凌駕するだらう。
これをば今までの人生分かき集めて有効活用できたならば、
おっ建ったタワマンにザギンのチャンネーを余裕で囲えるのではないか。
そんな、甘美なる妄想に、身を焦がしている。

そんなん焦がしてる暇があったら、パンの一つでも焼け。労働せよ。


こんなに朕がアホなのは、全て鼻炎のせいである。

一説によると、花粉症は集中力を半減させると謂われている。
つまり年中鼻炎の朕は、常に集中力50%OFF。
永遠(とわ)に閉店セールをしている場末のブティックかって話。

そのため、昔から物覚えが悪く落ち着きがない。
その頭脳と素行が評価されて、高校は晴れて二年で卒業することになったのだった。
それもこれも、全て鼻炎のせいである。

楽しかったあの頃に戻れないのは、煌々と月の照るホスピタルの上で、
観覧車みたいに巨大な風車をグルグルと回してアレルゲンを散布するルリヲがいるから。
待ち人が遂に現れないのも、それもやっぱり鼻炎のせいで。


ということは、ですよ?
今の朕は、実力の半分しかパフォーマンスを発揮できてないって寸法ですよ?
もし朕に鼻炎が備わっていなかったら、鼻炎時の2倍の集中力が常に発揮されるって寸法ですよ?
鬼滅の刃でいうところの、全集中常中?

そしたらば、朕ってば、どんだけインテリゲンチャだったんだらう!

今の朕のIQが、確か60とかだからあ、
ノン鼻炎Ver.は、えっと、つまり、え!!

I Q 1 2 0
じゃあないっすか……!

MENSAとか、MISIAのターバンの中とか、サマンサタバサとか、全然入れちゃうレベルじゃあないっすか……!
これでノーベル賞は朕んモンだぜ〜〜!!


と、
甘美なる妄想に、身を焦がしていたところ、
社運を賭けた重要なアポイントをすっぽかしていた。
はにゃ?
これもひとえに、鼻炎のせいである。

本日を以て、朕は鼻炎のことを、
鼻(び)の炎(ほむら)
と呼ぶことに決めた。


朕はこの世の全てを憎む。
憎んでも憎んでもまだ余るこの世の全てを、
鼻(び)の炎(ほむら)で燃やし尽くしてみせよう。
力を貸してくれーー。
鼻の炎よ、風に乗って、森を抜けて、
この世のすべてのものどもに盛れ。
紅蓮の鼻よ咲き誇れ。

みーんな鼻炎になっちゃえー!


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