『寝ても覚めても』柴崎友香(河出文庫)
“普通”のベールに巧妙に巧妙に巧妙に隠された狂気
泉谷朝子は普通である。大阪の地味な大学を卒業して、地味な会社に勤めている。職場の人間関係に波風を立てるようなことはないし、とりたてて意欲的というわけでもないが日々たんたんと仕事をこなす。休日には女友だちと街へ出かけ、デパートでは憧れのハイブランドをやや気後れしながら覗き、収入に見合った範囲の、自分に良く似合う服にお給料をつぎこむことを楽しみにしている。男友だちのバンドのライブを観に行ったり、マイナーな劇団の手伝いをしてみた