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根源は神話?

最高裁判所の大ホールにあるブロンズ像は、ギリシャ神話に出てくる法の女神テミスに由来するといわれています。古代ギリシャでは、神話が長いあいだ信じられ、人びとの考え方の枠組みになっていました。

最高裁判所大ホールにあるブロンズ像「正義」
右手には正邪を断ずる剣を掲げ,左手には衡平を表す秤(はかり)を持っています。

おそらく「法律」の歴史をさかのぼると、神話に辿り着くのでしょう。

日本初のノーベル賞に輝いた湯川秀樹は、物理学の系譜を辿ると神話にまでさかのぼると説きます。

【目に見えないもの】(湯川秀樹 講談社学術文庫)
理論物理学の系譜を逆に辿っていけば、おそらくは「神話」にまでさかのぼり得るかも知れない。なぜかといえば、今日の常識からすれば科学と対蹠的な存在と考えられる神話こそは、目に見えぬ神々の力の顕現として、自然現象相互の関連を解明せんとする最初の試みであったからである。

物理学も法律学も「混沌とした世界に関連を見いだそうとする試み」から始まったとすれば、根源は同じと言えるかもしれません。

「根源」について思考を巡らせるのは、人間の根源的な欲求なのでしょうか。「根源なんて考える意味があるのか?」と思いつつ、つい考えてしまいます。
「考え始めると、気になって仕方ない」ということ自体、何かしらの意味があるのだと思います。

法律の根源は「憲法」
憲法の根源は「13条」です。

【憲法13条前段】すべて国民は、個人として尊重される。

憲法には個人の「平等」も定められています。

そもそも、なぜ「個人」として尊重されるのか?なぜ「平等」なのか?
法学の教科書に答えは書かれていません。

みんな原子や分子から出来ており、物質的には同じだから・・そんな説明では到底腑に落ちないし、物質的に考えるなら、人間も石ころも同じになってしまいます。

「個人の尊重」や「平等」の根源を突き詰めると、やはり、「人知を超えた存在から授かった」という答えしかないのではないか。

憲法11条に、ヒントとなる表現があります。

【憲法11条】
この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる

この条項には、誰が(何が)国民に人権を与えるのか、つまり人権を与える「主体」が書かれていません。

人権というのは、いったい誰から(何から)与へられるのか?
「神」「八百万の神々」「天」「道」「自然」「宇宙」「おてんとさま」・・
どんな名前を与えるかは個人の自由ですが、人権を与える主体として、何かしら超越的な存在を仮置きせざるをえません。

仮置きする超越的存在は、物語形式の方が馴染みやすい。根源を考えていくと、やはり神話から始めたくなります。
(了)


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