八咫烏

Photo Diary.
熊野で撮った写真。

熊野那智大社
熊野古道、大門坂
那智の滝
川のほとりから
温泉の川。温かかった。


伊勢は時間の都合上、通り過ぎてしまった。少し離れた所から、すみませんと心の中でお断りして後にした。伊勢には人がたくさんいた。


最後に泊まったペンションは川のほとりにある綺麗な木造りの宿だった。お金が天から降ってきた暁には、こういう部屋を作ってもらって住みたい。
宿主はたいへんな歴史好きで、色々と話を聞いた。

「東北の人は物静か」らしい。確かにこの辺りで一週間過ごして、この地域の人は対話の時の距離感が普段より近いのかなと感じた。
東北の自然と熊野の自然と、それぞれの色があると感じた。



今日は嫌なことがあった。
自分は身内の会社でアルバイト以上社員未満みたいな立ち位置なのだが、今日は仕事の関係で、母と、市の役員と共に、3人でとある企業に話をしに行くということになっていた。この役員には大変世話になっているが、仕事に対する情熱がありすぎるあまり、語気がたまに乱れてしまうところがある。


相手方の会社に着くと社長らしき人が出迎えた。この人が問題児。
隣には気弱そうな側近のおじさんが佇んでいる。社長が今回の話の内容を全く把握していないことや、役員の名刺を見てペラペラだねなどとズケズケ話す様子を見て、この側近は自らこういう雰囲気を醸し出すことを選んだのかもしれないと思った。

社長は入るや否や、仙台市の政策をあれこれ取り上げて愚策だのと文句を言い続ける。この文言を挟んだ方が言いたいことを沢山言えるということを無意識的に習得しているのか、役員に対し「別に君を悪く言っているわけではないからね」などと挟みながら絶えず悪口を放ち続けている。


普段から市からの頼み事には抗えない立場なのだろう。市の政策に文句があるのは分かるが、経済面を考慮しない的外れの発言に、とうとう役員が痺れを切らしてしまった。
「じゃあお金出してくれますか。」

あぁ、そうか。
瞬間的に、直後に訪れる嵐を察知した。

社長、大噴火。

いち市民の意見に対して金を出せというのか、とか、世の中を舐めるな、とか、市長に言いつけるからな、とか、役員だからって偉そうにすんなよ?とか、そんな言葉で怒鳴り散らかす。



暴力と怒号ってさ、禁断の剣みたいなもんだと思う。使っちゃえばそりゃ勝てるだろ、みたいなチート武器。その代償はあまりに大きく、血の味を知った獣みたいに、健常な判断などいらない、と分かってしまう。「いち市民としての意見」とか言ってるけど、どうせ仙台市には言ってないんだべ?
馬鹿は怒り方すら間違える。さらには市長とかいう名前まで持ち出して虎の威を借りようとしているのが実にみっともない。


自分も世を知らぬ人間。世を知るということが浴びせられる唾と怒号を、下げた頭で受け続けることであるならば一生、ガキのままでも全然良いな。空の青さを見つめ、他人を想えるならば、物静かなガキでいい。いつでもひょいと飛んでいけるような自由な存在でいたい。



社長はたしか大畑といった。昨日の夢で高校時代の二つ上の先輩である田畑さんという人が出てきて、内容は忘れたがなにやら色々とアドバイスをくれた。この後にくる出来事を予知していたのだろうか。


いつもお参りする神社に寄って帰ってきた。最近神社に行くとカラスが突然鳴き始めたりする。今日はカラスがすごく近くまで来て、しばらくこちらを見ていた。毛並みの美しい、黒いカラスだった。

熊野で出会ったペンションの主人は、日本神話に登場する八咫烏の話を聞かせてくれた。地上に降り立った神々を導いた三本足のカラス。
導きを与えてくれませぬか。


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