しとしと
雨が降っている。
むせかえるよな蒸しついた埃の匂い。
鋭い車輪にえぐられた水たまりが土に混じって泥になる。
宙に漂う雨粒の群れ、夜の黒に溶けてガラス細工の飴玉に変わる。
店から流れる仕舞いの放送が、割れるガラスの涼やかな音に紛れて消えてゆく。
行き交う人の顔は傘の裏に隠れて盗人のようだ。
水の滴る寂しげな看板は、パチリと光をひっこめて静かに眠る。
冷えた体がブルブルと震えて暖が欲しいと切に願いを訴えた。
思えば随分と長いこと、打ち捨てられた子犬を真似したように、ずぶ濡れのままつっ立っていたものだ。
彼は小さな炎の放つ、慎ましやかな温みを両頬に宿して、そんなことを考えた。
指先の感覚はどこかに隠れて代わりに居座るジンジンと脈打つ痺れ、耳は雨音だけにその場所を明け渡し、乾ききった口の中、掌に伝う雨粒を、なんの気なしに口に含んだ。
まずい。
ーーあとがき
声部に………
最近は台風がちょくちょくきて外は雨模様、しかし部屋の中は蒸し暑いサウナ、外に出て遊びまわりたいと思う日々である。
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